ファンマーケティングの実践は「顧客体験」に全力を注ぐべき

多くの業界がレッドオーシャンと化し、少子高齢化で市場が縮小する国内において、ファンマーケティングを実践しようとする企業が増えています。

しかし、ファンマーケティングの実施といっても、SNSでプレゼントキャンペーンを実施して、一時的なファンを増やすことをファンマーケティングとしている企業も多いのではないでしょうか。ファンを増やす方法は、以下の2つがあると筆者は考えます

① 優れた商品を開発すること
② 優れた商品の売り方を提供すること

①の方法が理論的にはファンを最も増やす方法となりますが、実際には競合より優れた商品を開発したとしても、多くの企業では1~2割程度しか競合差別要素を生むことができず、その1~2割を顧客が体感するのはなかなか難しいことであり、ファンを増やす方法としては実践しにくいデメリットがあります。

しかし、②の商品の売り方はどうでしょうか?売り方が優れていれば、「また購入したい」とも思われやすいですし、商品力よりも競合と差を出しやすいというメリットがあります。

本日は、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、ファンマーケティングについて独自の解説をするので、ぜひ最後までご覧ください。

最もカンタンなファンマーケティングを体感・実践した3つの事例

では、筆者が過去に企業やECサイトのファンになった3つの事例を紹介します。この事例は、どの企業、どのECサイトでもカンタンに実践できるものなのでぜひ参考にしてみてください。

事例① 楽天市場のとあるスニーカーショップ

過去に筆者は、ナイキの人気スニーカーのエアジョーダンⅣを楽天市場のとあるショップで購入しました。そのショップで購入するのは2度目です。1度目はエアジョーダンIを購入しました。

届いたエアジョーダンⅣの箱を開けると手書きの手紙で以下のようなメッセージが入っていました。

手紙の内容「前回購入された、エアジョーダンIはいかがでしたか?いつもご購入ありがとうございます。」

たったこれだけの手紙ですが、私のことを覚えてくれていたのがうれしかったですし、前回購入した商品を気にかけてくれたこともうれしく感じました。その結果、このショップで繰り返しスニーカーを購入するようになりました。つまり、楽天市場の数あるスニーカーショップの中で、この会社のファンになったのです。

事例② Amazonに出品しているガジェット販売ネットショップ

筆者はYouTubeライブを実施するために、PCに装着するワイヤレスマイクを探しており、特に理由もなく、安かったという理由でAmazonで購入しました。

届いた商品を開封すると、私の誤解だったのですが部品が欠落しているように思いました。そこで、商品に同梱されていたお問い合わせ用のQRコードにアクセスすると、Facebookメッセンジャーに画面が切り替わりました

Facebookメッセンジャーでチャットする形で商品部品が欠落していることを伝えると、対応した中国人スタッフの方は翻訳機能を使って日本語でコミュニケーションを取ってくれて、結果的に私の勘違いだったことが分かりました。しかし、その中国人スタッフの方はその場の判断で

中国人スタッフ「よかったら、その部品もサービスで送付しましょうか?」

と言ってくれたのです。

私は快諾し、すると数日で本来オプションであるはずの部品が無料で届いたのです。この3か月後、ハンドマイクを購入する際は、迷うことなくこの会社からAmazonで再注文しました。

つまり、前回のやりとりが「感動した顧客体験」となったため、次回購入時も「ぜひこのお店で購入したい」という気持ちにつながったのです。

事例③ YouTubeのコメント欄によるコミュニケーション

3つ目の事例は、筆者のYouTubeチャンネルでの事例です。登録者数がたった1,100人のアカウントですが、コメントをくれるユーザーには、必ず返信することでコミュニケーションを行うようにしておりました。

このようなことを続けていると、毎回コメントをくれるファンが形成されていき、多くのコメントがつくようになりました

そして、YouTubeでライブを実施したのですが、通常は登録者1,100人程度のYouTuberのライブ配信では、プロモーション無しだと10名程度しか集まりませんが、カンタンな告知だけで30名を超えるユーザーが集まり、チャットでも多くのコメントをいただけるようになりました。

そして、YouTubeライブ配信で19,800円もする高価なデジタル教材を3本も販売することができました。YouTubeのコメント欄を使って日ごろからユーザーとコミュニケーションを取って、関係値を高めることでファンマーケティングを実践することができたのです。


以上が、筆者が実際に体験した事例です。

この3つの事例に共通するのは「顧客体験」です。エアジョーダンはどこで買っても品質に変わりはありませんし、また、2つ目の事例の商品も同様です。しかし、顧客体験だけは競合他社と圧倒的な差をつけることができるのです。

モノもサービスもあらゆる会社から提供されている現在では「突出した商品やサービス」を考えるのは非常に困難です。そのためファンマーケティングをすぐに実践するなら、顧客体験の改善から着手すべきでしょう。

さらにこの3つの事例はSNSやレビューと連動させるだけで、どんな企業でも実践できる最高のファンマーケティングとなるはずです。

それでは、このようなファンマーケティングを実践するための5つのステップを解説します。

優れた「顧客体験」を生む!ファンマーケティングを実践する5つのステップ

それでは、誰でもファンマーケティングを実践できるようになるための5つのステップを解説します。

ステップ① 顧客とコミュニケーションを取れる場を設計する

優れた顧客体験を生むためにコミュニケーションの場を設計する必要があります。特に店頭商売ではないECサイトやWebサービスの場合は、積極的にコミュニケーションを取る場を設計する必要があります。以下をご覧ください。

◆ECサイトやWebサービスで顧客接点を設計する

顧客とコミュニケーションが生まれる可能性のある接点 顧客接点を設ける方法
ECサイト(あるいはホームページ) チャットボットを置く
購入後の自動返信メールや商品発送メール 問い合わせ先を明記する
商品の同梱物 SNSや問い合わせ先のQRコードを同梱する
SNSや商品レビュー、ブログ記事 レビュー欄やコメント欄

このように、顧客と積極的にコミュニケーションをとる場を設計します。もちろんこれらの多くは、すでに実施している方がほとんどかもしれませんが、クレームの窓口という考え方ではなく「顧客接点を生むための場の構築」と考えれば、設置方法や対応が変わってくるはずです。

最初のコミュニケーションは、ユーザーの商品に対する不明点や疑問、あるいは事業者側へのクレームかもしれませんが、そこを起点としてコミュニケーションをとっていきましょう。

ステップ② 過去のユーザーからの問い合わせ履歴を振り返る

優れた顧客体験を生むためのヒントは、過去のユーザーからの問い合わせ履歴にあるはずです。まずは、どのような問い合わせが多いのか?そしてどのような対応が不満だったのか、あるいは満足だったのかを表にしてまとめてみましょう

過去の問い合わせ履歴を振り返ることで、顧客体験を阻害している要因がつかめるはずです。

◆顧客体験を阻害している例

・返信が遅い
・質問に回答(明言)できないことが多い
・対応のたらい回し

もし、このような顧客体験を阻害する傾向が把握できたのなら、どのように解決すべきかが分かるはずです。次に紹介するステップ③「顧客と接するスタッフに権限を持たせる」ことで、ある程度解決できるはずです。

ステップ③ 顧客と接するスタッフに権限を持たせる

せっかく顧客とコミュニケーションが取れても、以下のような対応をしてしまっては優れた顧客体験を生むことはできません。

スタッフ「上司に確認しますので、少々お待ちください」
スタッフ「確認しますので、折り返しご連絡いたします」
スタッフ「ちょっと私には分かりかねます」

もちろん無理なこともありますが、可能な限り現場のスタッフに権限を持たせて、主体的な対応をできる体制を作りましょう。

例えば、現場スタッフに10%までの値引きクーポンを発行できる権限を持たせるなど、現場に寄せられる過去の問い合わせを見ると、どのような権限を現場に持たせれば顧客体験が増えるのかといったヒントが見えてくるはずです。

また、権限があることで対応のスピード感が増します。それだけでも優れた顧客体験と言えるはずです。

ステップ④ SNSやレビュー欄による口コミが広がりやすくなる設計をする

ステップ①から③までを実行すれば、確実に顧客体験は良くなりますが、それだけでは「ファンマーケティング」とは言えません。優れた顧客体験をシェアしてもらえるように「レビュー入力」を依頼してみましょう。

例えば、顧客対応の直後にレビュー依頼メールを送付することで、顧客はレビューを入力しやすくなります。ただし、これだけではレビューは集まりませんので、顧客対応した時に「この後、レビュー依頼のメールを送付させていただきますので、お時間あればご入力ください」と一言添えると、入力してくれる可能性はグンと高まります

ただし、レビュー依頼をする場合は、ECサイト等の商品ページのレビューの一覧画面に以下のような文言がないと「ステルスマーケティング」となってしまうので、必ず目立つところに設置しましょう。

◆PR文章の設置(必須です)

このレビューは、弊社からお客様にレビューを依頼することによって書かれました。しかし、内容はお客様の率直なご意見として、そのまま掲載しております。

このようなレビューが集まることで、商品を探している方が「この会社の対応は良さそうだ!」と思うようになってくれるからです。

また、SNSアカウントを紹介して「私も運用しておりますので、あとでメールでアカウントを送付しますので、フォローしてくれるとうれしいです」といったことも、今後のユーザーとのコミュニケーションポイントが増えるので積極的に行いましょう。

ステップ⑤ メルマガやSNS投稿などの情報発信を行う

①~④までのステップを実行すれば、それらが優れた顧客体験となり、リピート購入は確実に増えるはずです。しかし、人間というのは数か月もしてしまえば、そのような顧客体験もなかなか思い出さなくなってしまいます。

そのため、顧客体験を思い出してもらうためにも「メルマガ」やSNSによる情報発信を続けましょう。そうすることで、当初はメルマガやSNS投稿に興味がなかったとしても、定期的に送られてくることで、次の商品の購入のタイミングや、人に商品をおススメしたいタイミングで思い出してくれる可能性が高まります。

そのため、できるだけメルマガを登録してもらったり、SNSやLINEに登録してもらう設計をするべきなのです。

プレゼントキャンペーンなどでSNSのフォロワー数だけを増やしても意味がない

ファンマーケティングと称してSNSキャンペーンを実施して、フォロー&リツイートした方限定に、デジタルギフトを送付するキャンペーン手法があります。これを実践すれば確実にフォロワー数を増やすことができます。

しかし、プレゼント目的のアカウントにフォローされても、フォロー数が増えるだけでエンゲージメントが悪くなり、SNSアカウントの露出力が減る事もあり得ます

このような施策だけでフォロワー数を増やすのではなく、ユーザーとのコミュニケーションを増やして、その顧客体験によってファンを増やす方がカンタンであり、確実だと筆者は考えます。

SNS投稿や世界観の醸成によるファンマーケティングは可能だが、誰でもできる施策ではない

世の中のフォロワー数の多いインフルエンサーは、バズを生み出したり、大きな影響力を持っていますので、SNSの公式アカウントでもそのようなインフルエンサーを参考にしている方は多いでしょう。

しかし、バズを生み出したりSNS投稿の世界観だけで多くのフォロワーを増やすのは誰でもカンタンにできるわけではなく、SNSのセンスやその方のキャラクターに依存することが多分にあり、まねしにくいのが現状です。

それよりも、ビジネス上で接点を持つユーザーに対して優れた顧客体験を提供する方が、実践的で、誰でもできるファンマーケティングとなります。

まとめ

ファンマーケティングを実践するなら、まずは自社で購入するユーザーや、問い合わせのある顧客から始めてみましょう。そして優れた顧客体験を実施できたら、レビュー依頼をしたりメルマガやSNSで継続的にコミュニケーションが取れる場が持てるようにコミュニケーション設計を行いましょう。

このやり方は、一気に広がるものではないですが、確実にファンを増やすファンマーケティングとなるはずです。

なお、株式会社インターファクトリーでは、EC支援サービス「ebisu growth」にてEC事業の継続的な成長を支援しております。

本記事で解説したファンマーケティングをはじめ、ECの売上を高めるための実践的なマーケティングをお考えの方は、ぜひ本サービスご検討ください。詳しくは下記公式ページをご覧ください。

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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表。 株式会社インターファクトリーのWebマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」では、ECサイトの初心者向けに特に集客方法について解説。