ECサイトに「延長保証サービス」を導入すべき5つの理由

ECサイトで高額商品を販売する際、購入前の不安をどう解消するかは大きな課題です。特に、故障リスクを伴う家電などのカテゴリでは、スペックやレビューだけでは不安が残り、購入をためらう顧客が少なくありません。そこで注目されているのが、ECサイトに「延長保証」を導入する取り組みです。

延長保証は、単なるアフターサービスではなく、ECの売上向上に直結するマーケティング施策として効果を発揮します。具体的には、以下の5つの理由から導入価値が高い施策と言えます

理由① 購入をためらうハードルを取り除き、CVRを押し上げる
理由② 商品販売以外の利益を生み出す追加収益になる
理由③ 競合が提供していない領域で差別化できる
理由④ 購入後の顧客接点が増え、LTV向上につながる
理由⑤ 故障データから商品改善ができ、品質向上に寄与する

さらに近年では、ECサイトに延長保証を簡単に実装できるサービスも登場しており、専門知識がなくても導入しやすい環境が整っています。これまで大手ECに限られていた仕組みが、中小規模のECでも手軽に利用できるようになった点も大きな変化です。

この記事では、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、延長保証の基本構造から導入のメリット、向いているジャンルなど、ECにおける延長保証について体系的に整理し、ECサイトで売上を伸ばす施策として延長保証をどのように活用できるのかを詳しく解説します。

国内7社の延長保証サービス比較

まずは、実際に提供されている延長保証サービスをまとめ、延長保証という仕組みの実像を把握できるよう一覧で整理しました。

家電量販店やメーカー、ブランドの延長保証を見ると、保証期間・料金・対象範囲の考え方に一定のパターンがあり、各社はその基本形をベースにしながら独自の差別化ポイントを持たせていることが分かります。以下の表をご覧ください。

◆主要な延長保証サービスの一覧表

事業者・サービス名 主な対象カテゴリ 保証期間の目安(メーカー保証期間含む) 加入料の目安 特徴
ヤマダデンキ「家電保」 テレビ・冷蔵庫・洗濯機・エアコン・PC など「有料長期保証」対象の家電全般 メーカー保証を含めて3年/5年(価格帯・商品カテゴリにより異なる) ※家庭用で使用される場合
①タブレットパソコン及びレノボ社製パソコン
・商品代金11,000円以上55,000円未満:加入料2,750円、保証期間3年
・商品代金55,000円以上:加入料 商品代金の5%、保証期間3年
②上記除く保証対象商品
・商品代金11,000円以上33,000円未満:加入料1,100円、保証期間3年
・商品代金33,000円以上:加入料 商品代金の5%、保証期間5年
購入金額を上限として修理費用を保証。修理費用が上限を超える場合は、超過分をユーザーが負担するか代替品の提供で保証終了。
ビックカメラ「ビック長期保証」 PC・PC周辺機器・テレビ・エアコン・冷蔵庫など主要家電 メーカー保証を含めて3年/5年/10年(価格帯・商品カテゴリにより異なる) ・対象商品:商品代金9,800円以上
・加入料:商品代金の5%分のビックポイント
メーカー保証終了後もメーカー保証に準じた修理を何回でも受付。修理金額が商品代金の80%を上回る場合、新品代替品の提供で保証終了。
ヨドバシカメラ「延長保証(ゴールドポイントワランティ)」 PC、デジカメ、ゲーム機本体、国産腕時計など メーカー保証を含めて5年 ・対象商品:商品代金10,000円以上
・加入料:商品代金の5%分のゴールドポイント
自然故障に伴う修理代金を1回限り保証(洗濯機・エアコン・14型以上TV・冷蔵庫は期間中何度でも全額保証)。保証限度額は経過年数に応じて100%から50%まで段階的に減額される。
Joshin「まごころ長期修理保証」 エアコン・冷蔵庫・テレビ・洗濯機・エアコンなど主要家電 メーカー保証を含めて5年/10年(価格帯・商品カテゴリにより異なる) ・対象商品:商品代金10,000円以上
・加入料:10年間保証、商品代金の8%
・加入料:5年保証、商品代金の5%
初めての修理の場合、購入金額を上限に100%保証で、経年による減額はなし(※PCを除く)。保証適用額が通算して購入金額内であれば何度でも修理可能。
Panasonic「自転車延長保証 フタメグリ」 パナソニックの自転車・電動アシスト自転車・特定小型原動機付自転車 製品保証を含めて3年/5年(部位により異なる) ・加入料:6,600円 自然故障を対象とし、消耗品は対象外。保証修理の回数制限はなく、ユーザーの自己負担もなし。
イシバシ楽器「新あんしん延長保証」 エレキギター・ベース・アコースティックギター・ウクレレなど メーカー保証を含めて5年 ・対象商品:商品代金30,000円以上かつ新品
・加入料:商品代金の3%
正常使用で発生した自然故障が対象。定期点検・簡易メンテナンスの無料サービスも付帯。累計修理金額が対象製品本体の購入価格(税込)に到達するまでを保証限度額とし、回数無制限で修理可能。
ジラール・ぺルゴ「5年間保証への延長」 ジラール・ペルゴの腕時計(正規代理店で購入した製品) メーカー保証を含めて5年 購入後365日以内にオンライン登録し、内容精査の上、保証延長が適用
※公式サイトに追加料金の記載なし
正規代理店購入品を対象に、保証カードのQRコードから登録すると保証を5年に延長。高級時計ブランドが「品質への自信」とアフターサービス体制を示すためのブランド主導型延長保証の代表例。

参考:有料長期保証・家電総合保証サービス「家電保」(ヤマダウェブコム)長期保証(ビックSUPERサービス)延長保証「ゴールドポイントワランティ」(ヨドバシ.com)まごころ長期修理保証(Joshin webショップ)自転車延長保証「フタメグリ」(Panasonic)新ISHIBASHI MUSIC あんしん延長保証(イシバシ楽器)5年間保証への延長(Girard-Perregaux)

一覧を見ると、延長保証は業界ごとに多少の違いはあるものの、「高額で長期間使う製品に対して、故障リスクをカバーする」ことを目的とした非常にシンプルな仕組みであることが分かります。

保証期間は合計5年を一つの目安とするケースが多く、家電量販店では商品価格の数%を加入料として設定するのが典型的です。一方で、Panasonicの自転車延長保証のように定額型を採用するモデル、ジラール・ペルゴのように登録から審査を行うブランド主導型など、ジャンルに応じて設計が変わっています

また、修理保証の上限額や、年数による減額ルールの有無、定期点検の付帯サービスなど、各社が差別化を図るポイントも見えてきます。例えば、イシバシ楽器は点検サービスを保証に組み込み、楽器を長く良い状態で使える体験を前面に出していますし、ヨドバシカメラは大型家電を対象に「修理回数無制限」を打ち出して信頼性を担保しています。

このように、延長保証にはいくつかの共通ルールがありつつも、企業によって見せ方や価値の作り方は大きく異なります。だからこそ、延長保証を単なる付帯オプションではなく、「購入不安を取り除くためのCX施策」として捉えることで、より自社に合った形での導入が可能になります。

延長保証の基本的な仕組み

ここでは、延長保証の一般的な仕組みについて解説します。下図は、メーカー保証終了後に延長保証がどのように機能するのかを示したタイムラインです。

◆延長保証の全体像

延長保証の全体像

出典(図):筆者作成

図のとおり、製品保証は「メーカー保証」と「延長保証」の2段階で構成されています。まず、購入直後にスタートするメーカー保証では、自然故障など製品起因のトラブルが1年間(または製品に応じた期間)無償で修理することができます。

しかし、この保証期間が終了すると、修理費用はすべてユーザー負担となり、家電などの高額商品ほど故障リスクが心理的な負担として残りやすくなりますそのリスクを補完するのが「延長保証期間」です。

メーカー保証終了後の一定期間は、延長保証の契約内容に応じて、メーカー・販売店・もしくは延長保証サービス事業者が手配する提携工場のいずれかが修理を担当します。

延長保証サービスは「修理の窓口」と「費用負担の枠組み」を提供するもので、修理自体は既存の修理ネットワークを利用するのが一般的です

多くの場合、修理費は無償、または少額の負担のみで済み、修理受付・検品・手配・交換対応までを一括で行う点が特徴です。

また、延長保証では「修理上限額=購入金額」を設定するケースが多く、期間中は上限額に達するまで複数回の修理が可能なサービスもあります。ユーザーにとっては、メーカー保証の延長線で安心感を得られ、ECサイトにとっても購入後の問い合わせ・修理対応を外部化できるメリットがあります。

延長保証は「保険」とは異なるサービス

延長保証サービスは、裏側では延長保証サービス会社が保険会社と提携し、保険スキームを利用しています。そのため、「掛け捨て保険のようなもの」と捉えられる場合もあります。しかし、延長保証そのものは保険とは別物であり、ユーザーが受け取る価値もまったく異なります

延長保証の本質は、故障した際に

・申し込み窓口が一本化される
・修理や交換の手配が代行される
・修理費用が軽減される

というアフターサービスのパッケージであり、金銭補償を目的とする損害保険とは大きく異なります。

◆延長保証と保険の大きな違い

対象:延長保証は製品の自然故障が中心だが、保険は偶発事故・破損なども対象となる
目的:延長保証は「修理サービス」だが、保険は「金銭補償」
仕組み:延長保証はサービス契約だが、保険は保険業法に基づく保険契約
販売される文脈:延長保証は商品購入時のオプションだが、保険は単独で販売される金融商品

このように、延長保証はあくまで製品を長く安心して使うためのサポートであり、壊れたら金銭が支払われる「保険」ではありません。そのため、延長保証は購入不安の解消施策として機能しやすく、購買率や顧客満足度に直接影響するサービスなのです。

ECサイトに延長保証を導入すべき5つの理由

延長保証は、ECサイトにおいてはさまざまな利点のある、極めて実務的なマーケティング施策です。ここでは、ECサイトが延長保証を導入することで得られる具体的なメリットを紹介します。

理由① 購入をためらうハードルを取り除き、CVRを押し上げる

家電や家具、自転車などの高額かつ利用頻度の高い商材においては、ユーザーは「壊れたらどうしよう」「修理費はいくらかかるのか」といった不安を抱えながら商品ページを見ています。

このような商材を扱うECにおいては、延長保証を提示することで「心理的なハードル」が取り除かれ、購入後のトラブル対応まで見通せるようになります

結果として、延長保証が購入の後押しとなり、CVRの向上につながります。ECでは実物を触れない分、保証が強力な安心材料として働きます。

理由② 商品販売以外の利益を生み出す追加収益になる

延長保証は、販売価格とは別に「保証料」が設定されるため、EC運営者にとっては純粋な追加収益になります。

延長保証サービスによって収益分配率は異なりますが、販売数が多いほど一定のストック型の売上に近い形で積み上がります。商品の原価に依存しない利益を作れるのはEC運営において大きなメリットとなります。

理由③ 競合が提供していない領域で差別化できる

多くのECサイトは、商品ラインナップや価格で競合と接近しやすいのですが、そのような場合、延長保証の有無は分かりやすい比較軸として機能します。

特に家具、家電、ガジェット、時計など、長期利用が前提の商材では購入理由に直結します。競合が保証を提供していないジャンルであれば、差別化効果はさらに高まります。

理由④ 購入後の顧客接点が増え、LTV向上につながる

延長保証に加入した顧客は、故障時やメンテナンス時にECサイトや延長保証サービスの窓口に問い合わせる機会が増えます。ユーザーが「このショップはちゃんと面倒を見てくれる」と感じれば、リピート購入や関連商品のアップセルにもつながり、LTVを押し上げる要素になります。

理由⑤ 故障データから商品改善ができ、品質向上に寄与する

延長保証サービスでは、サービスの利用(故障修理の依頼)を通じて下記のようなデータが蓄積されます。

◆延長保証サービスの利用によって蓄積されるデータ

・どんな故障が多いのか
・どの部品で不具合が起きているのか
・使用環境や故障発生タイミングの傾向

このような情報は、メーカーやEC事業者にとって商品改善の材料になります。故障原因が特定できれば、改善点が明確になり、再発防止や品質向上につながります

つまり、延長保証はユーザーに購入後の安心を提供するだけでなく、商品企画・品質管理・サポート体制の改善にまでつながる貴重な資産でもあるのです。

延長保証が特に効果を発揮する商品ジャンル

延長保証が特に効果を発揮するのは、価格が高く、一定期間継続して使用することを前提とした商品です。代表的なジャンルとしては以下のようなものが挙げられます。

◆延長保証を導入すべき商品ジャンルの例

ジャンル 代表例 相性が良い理由
家電 テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、電子レンジ 故障リスクが明確で、修理費用が高額になりやすい。延長保証による安心効果が大きい。
楽器 ギター、ベース、電子ピアノ 精密部品が多く、湿度・温度・保管環境の影響を受けやすい。メンテナンス前提のため保証ニーズが強い。
家具 ソファ、ベッド、チェア、デスク 長期利用に伴う構造部材の破損や可動部の不具合など、経年のトラブルが起きやすい。
高級時計・ジュエリー 腕時計、指輪、ネックレス 高価格帯で資産性・長期利用性が高く、延長保証が安心材料として直接的に機能する。
アウトドア用品・スポーツ用品 自転車、ランニングマシン、キャンプギア 利用環境が過酷で衝撃・湿気・温度変化の影響を受けやすく、トラブル発生率が相対的に高い。

いずれのジャンルにも共通するのは、「価格」と「利用期間」がユーザーの購買判断に大きく影響するという点です。これらの商品は、延長保証を付帯することで購入後の安心感が増し、「壊れたら困るから今回はやめておこう」という機会損失を避けることができます。

ECで延長保証を導入するなら、専用サービスの活用が最も効率的!

延長保証を自社で運用する場合、意外なほど負担が大きくなります。

修理受付、メーカー・修理工場との調整、費用負担の判断、交換手配など、アフターサポートには細かいオペレーションが多く、ECの販売とは別の専門性が求められます。そこで役立つのが、延長保証をサービスとして外部委託できるソリューションです。

延長保証サービスを導入すると、修理受付や問い合わせ対応といったアフターサポートを外部化でき、EC事業者は本来の販売業務に集中できます。

メーカーごとに異なる修理フローを調べたり、顧客とのやり取りを個別に対応したりする必要がなくなるため、運用負荷は大幅に軽減されます。また、保証料の徴収や申請管理といった事務作業もサービス側が担うため、内部リソースの削減につながります。

近年では「proteger(プロテジャー)」のように、ECサイトに延長保証を簡単に組み込めるサービスも登場しています。保証料の設定や修理受付の代行など、延長保証に必要な仕組みをパッケージ化して提供しており、EC事業者は複雑なオペレーションを自前で構築せずに導入できます。

◆protegerが導入されたECサイト

protegerを導入したECサイト

参考:総合ネット通販 タンタンショップ ※一部筆者加工

APIやASPカートとの連携システムを準備しているため、大掛かりな作業も必要なく組み込みが早い点も特長の一つです。こうしたサービスの存在によって、延長保証がより取り入れやすくなってきています。

参考:proteger(プロテジャー)

このような外部サービスの活用は、延長保証は販売と顧客体験を強化するための追加施策として扱えるようになります。特にEC運営においては、本来注力すべき領域とそうでない領域を切り分けられる点が、延長保証サービス導入の一番のメリットと言えます

ECサイトへの延長保証サービスの導入は、連携可能なプラットフォームであることが前提

延長保証をECサイトに導入する際に最も重要なポイントは、延長保証の仕組みに対応できるECプラットフォームであることです。ここを満たしていない場合、保証料の計算や申請連携が成立せず、外部サービスを組み込むことができません。

延長保証サービスを導入するには、商品ページへの保証オプション表示、カート内での保証料計算、注文データの連動、保証申請時のAPI連携など、裏側で必要となる仕組みがいくつも存在します。そのため、ECと外部サービスを正しく連携するためのプラットフォーム要件が欠かせないのです

例えばインターファクトリーが提供する「EBISUMART(エビスマート)」は、API連携や外部サービスとの拡張を前提とした構造を持っており、延長保証サービスのような新しい機能を組み込みやすいのが特徴です。先に紹介した「proteger」とも公式に連携可能になっております。

このような、外部連携に強いプラットフォームを選ぶことで、延長保証の導入は格段にスムーズになります。

参考:EBISUMART(エビスマート)

延長保証を導入する際は、どのサービスを使うかを決める前に、自社のECプラットフォームが保証連携に対応しているかどうかを必ず確認しておくようにしましょう。

まとめ

延長保証は、ユーザーの不安を和らげ、購入を後押しするだけでなく、EC事業者にとっては追加収益の確保や顧客との関係づくりにも役立つ実務的なマーケティング施策です。特に、高額商材を扱うECほど効果が大きく、延長保証を提示できるかどうかで購入率が変わるケースも珍しくありません。

近年は、延長保証を簡単に組み込める外部サービスも増えてきたことで、アフターサポートの負担を自前で抱える必要がなくなりました。一方で、どのサービスを選ぶべきか、どのタイミングで導入すべきか、EC体験全体のどこに位置づけるべきか、といった判断は簡単ではありません

もし、マーケティング施策の一つとして延長保証の導入を本格的に検討しているのであれば、インターファクトリーのEC支援サービス「EBISU GROWTH」の活用をおすすめします。EBISU GROWTHは、ECに特化したサポートサービスを提供しており、経験豊富なコンサルタントが事業者ごとの課題に合わせて戦略的に伴走します。

◆EC支援サービス「EBISU GROWTH」の提供サービス

✓戦略立案
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✓運用代行・制作代行

事業の成長フェーズに合わせて最適な導入方法を選びたい場合、専門家の知見を取り入れることで、より確実に成果へつなげられます。まずは下記の公式ページをご覧いただき、お気軽に問い合わせください。

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セミナー情報

ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表。 株式会社インターファクトリーのWebマーケティングシニアアドバイザーとして、EBISUMARTやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」では、ECサイトの初心者向けに特に集客方法について解説。