「多言語対応のECサイト」を作るための5つのステップを解説

自社のECサイト多言語対応にして、売上を伸ばそうと考えてはいないでしょうか?多言語対応のECサイトを作るには以下のステップで行います。

◆ECサイトを多言語対応するための5つのステップ

① 多言語対応の目的
② 翻訳方法はプロの翻訳家を使うか?
③ 言語切り替えボタンの設置
④ ターゲットの国の決済を用意する
⑤ 海外の配送はEMS

また、多言語対応だけではなく、SEOやローカライゼーション、各国のプライバシーやデータ保護に関する規制などにも対応する必要があります。

この記事では、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、多言語対応サイトについて詳しく解説します。

多言語対応のECサイトが必要な理由は「越境EC市場規模」の増加!

まずは、以下の図をご覧ください。

◆2024年 日本・米国・中国3ヵ国間の越境EC市場規模(単位:億円)[図表 7-7] 

2024年 日本・米国・中国3ヵ国間の越境 EC 市場規模(単位:億円)

出典(画像):経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査報告書」(2025年8月発表)

この図は、経済産業省が2025年8月に発表した、電子商取引に関する市場調査報告者に掲載されている、2024年の越境ECの市場規模(日本、米国、中国の3か国を表したものですが、日本のBtoC-ECからの購入額は以下のようになっております。

◆日本のBtoC-ECからの購入額

中国が日本より購入した額:2兆6,372億円(対昨年より8.5%増)
アメリカが日本より購入した額:1兆5,978億円(対昨年より8.0%増)

中国とアメリカの「日本のBtoC-ECからの購入額」は1兆円を超え、前年比でも着実に増加しています。つまり、日本語のみのECサイトは、この巨大な需要を取りこぼしている状態といえます。

では、自社のECサイトを多言語するにはどのような方法があるのでしょうか。次に自社ECサイトを多言語化するための3つの方法を解説します。

自社のECサイトを多言語対応するための3つの方法

自社のECサイトを多言語対応するための方法は以下の3つです。

◆ECサイトを多言語対応するための3つの方法

① カスタマイズ開発により対応する
② 翻訳SaaSツールを導入する
③ Shopifyなど多言語対応可能なプラットフォームを導入する

3つの方法を比較表にしてみました。

◆ECサイトを多言語対応する方法の比較表

カスタマイズ開発 翻訳SaaSツール 多言語対応可能な
プラットフォーム
初期費用 数百万円~ 10~30万円程度 数万円~
月額費用 発生しない 数万円~ 数千円~(無料プランもある)
開発期間 数か月間 1行のタグを挿入するだけ 最短1か月程度
メリット フルスクラッチやパッケージ等のカスタマイズ可能なECプラットフォームの場合、自社の要望どおりのカスタマイズが可能 費用を抑えて、すぐに本格的な多言語化対応が可能 無料のプラグインを利用することができれば、費用がかからず利用できる
デメリット 費用や工数がかかるが、方法②と得られる効果はあまり変わらない 独自の「UI改善や機能追加」には対応していない 独自のUI改善や機能追加には対応していないことと、担当が自分でプラグインを導入できるITリテラシーが必要

3つの方法を紹介しましたが、費用面を考慮すると「方法②」か「方法③」を選択することになるでしょう。年商が1億円以上の中・大規模のECサイトを運営している企業の多くは、パッケージやカスタマイズできるクラウドECを導入しており、その場合は方法②を利用すべきです。

年商1億円未満のECサイト事業者の場合は、自社のECサイトでShopifyなどの多言語対応のプラグインを利用することで費用を抑えることができますし、プラグイン対応ができない場合も、自社ECサイトで方法②を利用することができます。つまり、どのようなケースであっても多言語対応のSaaSツールを導入する方法が前提となるのです。

では次に、自社ECサイトを多言語対応するための具体的な方法を解説します。

多言語サイトの仕組みは「言語切り替えボタン」を作り、それぞれの言語のページを作る

ECに関わらず、多言語サイトの仕組みは実にカンタンです。以下のように言語切り替えボタンを設置して、ユーザーに言語を切り替えてもらい、それに対応するページを見せる方式となります。

◆東京メトロの公式サイト

東京メトロのWEBサイトでの多言語対応の様子

出典(画像):東京メトロ

切り替えた際、URLのディレクトリが以下のように変わります。

◆日本語ページのディレクトリ

東京メトロ日本語ページ

https://www.tokyometro.jp/index.html

◆英語ページのディレクトリ

東京メトロ英語ページ

https://www.tokyometro.jp/lang_en/index.html

◆韓国語ページのディレクトリ

東京メトロ韓国語ページ

https://www.tokyometro.jp/lang_kr/index.html

◆中国語(簡体字)ページのディレクトリ

東京メトロ中国語(簡体字)ページ

https://www.tokyometro.jp/lang_cn/index.html

このように、多言語対応するときは、その言語用のディレクトリを作る方法が一般的です。

この方法のメリットは、例えば、英語に切り替えたユーザーがサイトを使っている際に、途中で日本語に戻ることがなく、UXが良くなります。デメリットは、ページがそれだけ増えるので、ページ保守運用が面倒になることです。

多言語対応サイトの5つのステップ

それでは、実際にサイトを多言語化する流れを5つのステップに分けて解説します。

ステップ① 多言語対応の目的(対応言語等)

まず、自社のECサイトを多言語する目的を決める必要があります。例えば、以下のような目的が考えられます。

◆多言語対応する目的の例

① リアル店舗に訪れた中国人のリピート購入向け
② 英語対応することで、英語圏からの売上を増やす
③ 外国語の問い合わせが増えてきた

もし、例①や例②のように対応したいターゲットが明確でしたら、その言語のみに対応するだけで事足りるので、無理に対応言語を広げる必要もありません。対応言語が減ると、管理するページ数も少なくなり、決済や配送の工数も少なく済みます

また、ターゲットが決まっている場合は、その国の人が注文しやすいように翻訳の精度を高める必要があるため、プロの翻訳家による丁寧な翻訳でページを作る必要があります。

例③のように「とりあえず多言語対応したい」といった場合は、GoogleやDeepLのAI翻訳を使って、効率よく多言語対応のページを作っていきましょう。このように、目的次第で対応言語や、翻訳家に依頼するべきかが変わってくるのです。

ステップ② 翻訳方法はプロの翻訳家か?AI翻訳か?ハイブリッドか?

すでに解説しましたが、自社ECサイトをどのように翻訳対応するかを考える必要があります。翻訳方法は大きく「プロ翻訳」「AI翻訳(機械翻訳)」「ハイブリッド」の3択に分けられます。

翻訳方法1. プロ翻訳

この方法は、対応ページごとにプロの翻訳家(もしくは社内のターゲット言語に通じた社員)に翻訳を依頼することで、言い回しや専門用語まで適切な翻訳を実施することで、自社の興味関心を高めます。

しかし、この方法は商品数が多いECサイトでは、多くのページでの翻訳が都度必要となり、費用と時間がかかるため、多言語化対応を実施したばかりの時は、主要なページや商品ページを優先的に対応する必要があります

翻訳方法2. AI翻訳

DeepLやGoogle翻訳、ChatGPTなどのAIツールを活用する方法で、低コストかつ高速で対応できます。

以前までは品質が不安定な面もありましたが、近年はAI翻訳の精度が飛躍的に向上しており、汎用的な商品説明や案内文であれば実用レベルの品質を実現しています

翻訳方法3. ハイブリッド翻訳

ハイブリッド翻訳は、AI翻訳でまず全体を翻訳し、重要なページのみネイティブチェックを入れる方式で、費用対効果に優れ、多くの中規模ECサイトで活用されています。

なお、特定の言語からの注文が多い場合は、その言語のみプロ翻訳に切り替えることで、売上アップと問い合わせ工数削減につながります。

いずれの方法をとるかは、多言語ECサイトの目的によりますが、もし、特定の言語からの注文が多い場合は、個別に対応することで売上を伸ばしたり、あるいは商品に対する問い合わせ工数を減らすことができます

ステップ③ 言語切り替えボタンの設置

言語切り替えボタンをグローバルナビゲーションやハンバーガーメニューの目立つ場所に設置します。下記は、関西国際空港のグローバルナビゲーションでの言語切り替えボタンです。

◆設置例

羽田空港のグローバルナビゲーションの多言語対応

出典(画像):羽田空港旅客ターミナル

ターゲットユーザーに気が付きにくい場所に設置すると、多言語化対応の意味がありませんので、言語切り替えをしたいユーザー向けに目立つように設置しましょう

ステップ④ ターゲット国の決済方法を導入する

日本国内向けのECサイトであれば、クレジットカード決済を導入すれば、ほとんどのユーザーに対応することができますが、例えば、中国の場合は以下のような決済を導入しないと商品の購入がされません

◆中国向けのオンライン決済

・支付宝(Alipay)
・微信支付(WeChatPay)
・銀聯カード(デビットカード)

参考:JETRO「中国における越境ECの概要と留意点:中国向け輸出

このように、ターゲット国で利用されている決済方法を導入する必要があります。まずは、自社のECプラットフォームが対応している海外向けの決済方法の中から検討しましょう。

ステップ⑤ 海外への配送はEMS(国際スピード郵便)

海外への配送の基本はEMS(国際スピード郵便)で行います。EMSは、追跡機能もあるため、発送側としては安心して利用できます。ただし、配送先の国によっては、税関でのチェックや現地の配達事情により到着までの時間が異なる場合があります。

参考:日本郵便「EMS(国際スピード郵便)

もし他の配送オプションを検討する場合は、FedExやDHLといった国際宅配便もありますので、ビジネス用途や大切な荷物の場合、スピードや信頼性を考慮して、最適な配送方法を選びましょう。

多言語対応ECサイトの3つの注意点

それでは、多言語対応をする場合の3つの注意点を解説します。

注意点① 適切なキーワードをSEO対策ワードとすること

もし、日本語のECサイトで「●●神社 おみやげ」というSEOキーワードを設定している場合、翻訳ページを作る際には、適切な言葉で外国語のSEOキーワードを意識します。

◆正しい英語のSEOキーワード

“●● Shrine souvenirs”または”Souvenirs from ●● Shrine”

もし、これを以下のような間違った英語でSEOを意識すると、「誰も検索しないキーワード」でSEO対策することになるからです。

◆間違った英語のSEOキーワード

“●● Shrine gifts”
「gifts」は「おみやげ」としてはあまり使われないことが多く、特に神社での「おみやげ」の意味を十分に表せません。

“Buy things ●● Shrine”
直訳的で不自然な表現です。また、検索される際に意図が伝わりにくい可能性があります。

“●● Shrine items”
「items」だと具体性が欠け、検索意図に合わない可能性があります。

翻訳家やその言語を得意とする人、あるいはChatGPTなどで確認して、SEO対策する外国語が不自然ではないか確認しましょう。

注意点② ローカライゼーション(現地文化への配慮)

多言語対応サイトを作成する際には、単に翻訳するだけでなく、現地の文化や習慣に配慮するローカライゼーションが重要です。例えば、日本の祝日や季節のイベントを紹介する場合、現地の行事や習慣に合わせた内容に調整することで、海外ユーザーが理解しやすくなります

以下に、具体例を挙げます。

◆「お盆」はどう表現する?

日本では馴染みのある「お盆」は、海外のユーザーには理解しづらい場合がありますので、英語版ページでは「お盆」を「Japanese Festival of the Dead」と説明します。

また、使用する画像や色の選択も文化ごとに異なる意味を持つため、現地文化に適したものを採用すると良いでしょう。

注意点③ プライバシーやデータ保護に関する規制(例:GDPR)を遵守

各国には、データ保護やプライバシーに関する規制があり、それらを遵守することが求められます。特に、EU地域を対象とする場合は、GDPR(一般データ保護規則)に対応し、ユーザーの同意を得てからデータを収集する仕組みや、プライバシーポリシーを整備する必要があります。これにより、ユーザーの信頼を得ると同時に、法的リスクも回避できます。

以下に、プライバシーやデータ保護に準拠したポップアップ文言の例を用意したので、参考にしてください。

◆個人情報の取扱いに関する同意

「当サイトをご利用いただく際、お客様の個人情報を収集する場合があります。収集したデータは、法令に基づき厳重に管理し、許可なく第三者へ提供することはありません。詳細についてはこちらをご覧ください。」

◆データ収集と利用に関する説明

「当社は、提供いただいた情報をもとにサービスの向上およびマーケティングに利用する場合があります。お客様のデータは適切に管理し、許可のない第三者には提供いたしません。お客様がデータの削除や訂正を希望される場合は、こちらまでご連絡ください。」

◆EU地域向けのGDPRに関する文言

「当社は、EU地域のお客様のプライバシーを保護するため、GDPR(一般データ保護規則)に基づいたデータ保護対策を実施しています。データ収集の目的、保存期間、およびお客様の権利については、当社のプライバシーポリシーをご確認ください。ご質問やリクエストがある場合は、お気軽にご連絡ください。」

場合によっては、他国の法律により罰せられる可能性もあるため、多言語対応を行う際は、必ず関連する法規を確認しましょう。

AI翻訳ツールの活用と弱点

現在、DeepL Pro、ChatGPT、Google Cloud TranslationなどのAI翻訳ツールの精度が飛躍的に向上し、越境ECへの参入障壁は大きく下がっています。

◆主なAI翻訳ツールの比較表

ツール 特徴 越境ECでの優位性 向いている用途
DeepL Pro 高精度なNMT(神経回路網翻訳)。「です・ます」の切り替え、用語集機能。 日本語特有のニュアンスを汲み取りやすく、誤訳が少ない。 商品スペック、規約、カスタマーサポート
ChatGPT
(LLM系)
文脈理解、ゼロショット翻訳。指示(プロンプト)による出力制御。 SEOキーワードを自然に組み込んだり、現地の文化に合わせた意訳(ローカライズ)が可能。 キャッチコピー、SNS、ブログ記事、ブランドストーリー
Cloud Translation (Google) 130以上の言語対応。圧倒的な処理速度とインフラの安定性。 マイナー言語への対応力が高い。既存のECシステム(Shopify等)との連携実績が最多。 大量のレビュー翻訳、動的な検索結果、多国籍展開

ただし、AI翻訳には以下のような弱点があります。

◆AI翻訳の弱点

・ブランドのニュアンスや文化的背景のある表現は不自然になりやすい
・商品名や固有名詞の扱いがミスしやすい
・SEO最適化されたキーワードを意識した翻訳は苦手

そのため、AI翻訳でまず全体を翻訳し、重要ページはネイティブチェックを入れる「ハイブリッド方式」が現実的な方法といえます。これにより、コストを抑えながら品質を担保できます。

参考:DeepL「最新版 言語AIレポート:ビジネスコミュニケーションの課題と解決策としての言語AI」(2025年2月12日)

まとめ

この記事を読んだことで、多言語ECサイトの具体的な対応方法が理解できたと思います。まずは、AI翻訳でも構いませんので、多言語対応を実施して海外からのアクセス数を増やしてみることから始めましょう。

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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表。 株式会社インターファクトリーのWebマーケティングシニアアドバイザーとして、EBISUMARTやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」では、ECサイトの初心者向けに特に集客方法について解説。