ネットショップで商品数を増やしても売上増にはならない理由

ECの運営において、なかなか売上が増えずに思案しているときに

「ひょっとして商品数を増やせば、売上が増えるのではないか?」

と考えたことはありませんか?
しかし、売上はそう簡単には増えません。

商品数を増やすことで、SEOが改善されたり、ユーザーの選択肢が増えたりすることが期待されますが、そもそもSEOやクロスセルは、個別の施策を実施している場合が多いので、商品数を増やせば改善されるとは限りません

本日は、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、商品数を増やしても売上増につながらない理由について解説するとともに、ネットショップを立ち上げたばかりの場合に必要な考え方を解説します。

「商品数を増やせば売上が増える」と言われている3つの理由

まず、商品数を増やすだけでは、売上は増えません。しかし、「商品数を増やせば売上が増える」と言われ続けている理由は3つあります。

理由①ユーザーにとって選択肢が増えるから

例えば、Tシャツを販売するネットショップが売上に悩んでいるとしましょう。Tシャツのバリエーションが白色しか用意されていなかったときに、売上を伸ばすために黒色や青色などバリエーションを増やしたり、あるいはTシャツ以外にパンツも用意することで売上は上がるのでしょうか?

結論から言えば、そもそも売上が少ないときに商品数を増やしても売上は増えません。なぜなら、「売れていないネットショップ」の原因は商品数によるものではないからです。筆者の過去の経験から、売れていないネットショップには以下のような課題があります。

◆売れていないネットショップが抱える5つの課題

課題① ネットショップへの集客が十分ではない
課題② 何を売っているネットショップか分かりづらい
課題③ このネットショップで商品を購入する理由がない
課題④ 競合が多い
課題⑤ クレジットカード番号を入力するのが不安になる簡素すぎるデザイン

これらの課題に当てはまる場合は、商品数を増やすことで売上増につなげることは難しいでしょう。売上を増やすには、まずネットショップの課題を把握して対策することが大切です。

理由②SEOが強くなるから

商品数を増やすということは、ネットショップのページ数が増えることにつながります。そのことから、SEOが強化されると考えている方も多いかもしれませんが、現在ではページ数を増やすことがSEOの強化につながるとは思えません

2022年8月に、Googleは「ヘルプフル コンテンツ アップデート(※)」を導入しました。

※参考:2022 年 8 月の Google の有用なコンテンツの更新についてクリエイターが知っておくべきこと(Google検索セントラルブログ)

このアップデートの趣旨は、「ユーザーの期待に応えていないコンテンツ、あるいはそのようなコンテンツが多いサイトのSEO順位を下げる」というものです。日本では、ヘルプフル コンテンツ アップデートのローンチは12月に実施されました。

海外の傾向ですが、以下のようなサイトが大幅に流入数を下げたとされています。

◆海外(英語圏)で検索結果に変動があったとされるジャンル

・歌詞
・計算機能
・着信音
・辞書、文法サイト
・取扱説明書

つまり、今後のSEOはページ数よりも、コンテンツの質が重視されます。この方針はもちろん、ECサイトにも該当します。もし、SEOによってアクセス数を増やすのでしたら、ブログを開設したり、あるいは商品ページをユーザーの役に立つ内容で作るべきです。

ただし、商品ページはそもそもSEO対策のためにあるわけではなく、CVR向上のためにあるので、商品ページをSEOのために作り込みすぎると、売れるネットショップを作るという目的から離れてしまうのです。

理由③クロスセルやアップセルが期待できるから

商品数が増えれば、類似商品の購入やセット販売による売上増が見込めると考えているかもしれませんが、それが期待できるのは、すでに「商品が売れているネットショップ」の場合です。

主力商品が売れていないのに、クロスセルやアップセルを狙うのは難しいでしょう。クロスセルやアップセルは、「売上をさらに増やす」手段であり、「初回購入」を成功させて、新規会員を増やす施策ではありません

そのため、現在あまり売れていないネットショップでは、クロスセルやアップセルの前に実施すべき施策があるため、効果が期待できません。

売れていないネットショップがやるべきことは、ターゲットユーザーのことをトコトン考え抜くこと

まず、ネットショップで売上を出すためには、ターゲットユーザーのことを徹底的に考えてみましょう

ターゲットの検索キーワードを考える

例えば、あなたのネットショップで「魚のTシャツ」を販売する場合、ターゲットユーザーはどのような方でしょうか?筆者なら以下のように考えます。

・海や魚が好き
・海や魚の仕事に従事している

このようなユーザーになったつもりで、インターネットで検索してみましょう。例えば、以下のように検索することが推察できます。

◆「魚 プリントTシャツ」でGoogle検索した結果

魚プリントTシャツ検索結果

そうすると、SEO上位には楽天市場やGMOグループが提供するハンドメイドショップやネットショップ、Amazon、メルカリのページが表示されています。いずれも大手のショッピングモールです。

つまり、この検索キーワードでSEO上位を獲得することはほぼ不可能です。しかし、諦める必要はありません。魚という抽象的なキーワードではなく、種類を絞ってみましょう。例えば、「ナンヨウツバメウオ」としましょう。

◆「ナンヨウツバメウオ プリントTシャツ」でGoogle検索した結果

ナンヨウツバメウオプリントTシャツ検索結果

先ほどと比較すると、検索結果に大手のショッピングモールが表示されていないことが分かります。つまりこのキーワードで商品ページを作成し、適切に情報を掲載することで、SEOで上位表示され、ユーザーに届く可能性が増えるのです。もちろん「魚」と「ナンヨウツバメウオ」ではアクセス数が異なりますが、それでも、商品を探しているユーザーに届く可能性が増えてくるのです。

ターゲットの行動を考える

例えば、魚好きの場合、釣りをしたり、ダイビングやシュノーケリングをしたりするユーザーがターゲットとして考えられます。そのようなユーザーは、魚だけでなく、海のスポットについても調べたり、仲間内で情報交換していることが考えられます。

そこで、SNSを始めるときに、Tシャツを紹介するアカウントを作るよりは、魚好きがフォローしたくなるアカウントの方が効果が期待できます。例えば、以下のようなアカウントです。

・釣り好きのユーザーのために、東京の釣りスポットを紹介する
・シュノーケリング好きのユーザーのために、潜るポイントを紹介する

このようなアカウントを運営しながら、ときどき自社商品の「魚のTシャツ」を紹介することで、ターゲットを囲い込むことができるようになるのです。

また、以下の総務省の調査によると、釣りに行った日数は50代以降が多くなっているため、ターゲットユーザーの年代に合わせて、TikTokやInstagramよりもFacebookを運用するなど、SNS選びも重要なポイントと言えます。

参考:「水泳」,「つり」を行った人の状況 ~海の日を迎えるに当たって~(総務省統計局) 

ターゲットがネットショップに訪れた時に「何を売っている店」か一目で分かるようにする

もし、ターゲットがSEO対策やSNS施策によって、ネットショップに訪れるようになったときに、以下のようなコンセプトのお店では、商品が売れる可能性は低くなります。

「海が大好き!みんなの海を守ろう!」
「海を通じて、みんなで幸せになるショップ!」

このネットショップにTシャツを買いにきたターゲットには「何を売っている店なのか」がすぐには伝わらず、「海を守る活動をしているのかな?」と勘違いされて注文に至らない可能性も考えられるからです。

そのため、以下のように、一目で分かるようなメッセージを打ち出す必要があります。

「海のTシャツ専門店」
「魚のTシャツ専門ネットショップ」

ターゲットユーザーがネットショップだと理解しにくいようなデザインやメッセージは極力避けて、シンプルに専門店であることをアピールしましょう。

ターゲットに初回購入をさせる意識を強く持つ

ネットショップで重要なことの一つに「初回購入」があります。一度購入したECサイトでは、再び買い物をする可能性が高いと考えられるからです。つまり、一度でも購入してもらうことで、リピート施策にもつなげることができるのです。

そのため、「初回購入を必ず成功させる」という強い意識を持つことが重要です。対策としては以下のようなものがあります。

・目玉商品の開発
・新規会員向け特典の配布

このような初回購入を促す施策を実施することで、ネットショップの売上を増やすことができるのです。

まとめ

ネットショップで商品数を増やすだけでは、売上を増やすことにつながりません。まず、売上を増やすためには、ターゲットユーザーを定義して、自身がターゲットユーザーになったつもりでネットショップを検索してみたり、現在のネットショップの課題を探してみてください

そうすることで、「自社のネットショップに何が足りないのか」「どうすれば購入したいと思えるのか」が見えてくるはずです。

その一つ一つに対して対策を練っていくことで、ターゲットユーザーに自社ネットショップで購入してもらうための施策が増えていきます。

EC構築システムの「ebisumart(エビスマート)」を提供しているインターファクトリーでは、EC支援サービス「ebisu growth」にて、EC事業の成功を支援しています。ネットショップについてコンサルを受けたい方は、ぜひ以下から資料をダウンロードしてご検討ください。

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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表。 株式会社インターファクトリーのWebマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」では、ECサイトの初心者向けに特に集客方法について解説。