レコメンドエンジンは、ユーザーの過去の行動、興味、好みなどを分析して、ユーザーに対して商品やサービスを提案(おすすめ)するシステムのことです。
レコメンドエンジンは、ECサイト、YouTube、Netflix、X、Instagramなど、あらゆるオンラインサービスで広く利用されており、スマートフォンを使う人ならレコメンドエンジンからのレコメンドを受けたことがあるでしょう。
レコメンドエンジンには大きく分けて3種類あり、導入するECサイトやサービスの運営歴などによって利用すべきレコメンドエンジンが異なります。
この記事では、forUSERS株式会社でマーケティングを実施している筆者が、レコメンドエンジンについて解説します。また、この記事ではレコメンドエンジンのおすすめ5選や実際の導入事例も紹介しているので、記事を最後までご覧ください。
レコメンドエンジンは主に3種類
まずは、レコメンドエンジンの種類について解説します。
◆レコメンドエンジンの3つの種類
② コンテンツベースレコメンド
③ 協調フィルタリング
他にも、ハイブリット型などが存在しますが、レコメンドエンジンではこの3種類が基本となります。それぞれの「手法」「メリット」「デメリット」を以下の表にまとめました。
◆レコメンドエンジンの種類別比較表
① ルールベース レコメンド |
② コンテンツベース レコメンド |
③ 協調フィルタリング | |
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手法 | ○○の行動をした人にはAバナーを見せるなど、事前に企業側でルールを決めて運用する | 革ジャンを買った人に同じ革を使っている手袋をレコメンドするなど、同じ属性のアイテムをレコメンドする | 商品Bを購入した人は商品Cを購入する可能性が高いといった大量のユーザー行動データを分析することで、ユーザーに新しい発見(商品)を提供する |
メリット | ユーザーやアイテム数が少なかったり、データが少なかったりする場合でも、担当者にノウハウがあればすぐに成果を出せる可能性がある | ユーザーは自分の趣味嗜好に合う商品をレコメンドされる可能性が高くなる | ユーザーにとって新しい発見を提案できる。日用品とオーディオ商品など、まったく関連性のないアイテム同士からでもレコメンドを出すことが可能 |
デメリット | マーケティングノウハウや業界経験がないと、売上を伸ばすようなルールを作るのは困難 | ユーザーは同じ商品ばかりをレコメンドされるため、新しい発見がなくなり、サービスへの興味が薄れる可能性がある | ユーザーのデータが蓄積されないとパフォーマンスを発揮できない。情報がない新商品に協調フィルタリングは使えないため、別のレコメンド施策が必要 |
それでは、一つずつ解説します。
①「ルールベースレコメンド」は立ち上げたばかりのサービスやアイテム数が少ない場合に有効
ルールベースレコメンドは、簡単に言えば「担当者が自分でルールを設定する」レコメンドエンジンです。例えば、以下のようなユーザーアクションに対して、レコメンドするルールを設けます。
◆ルールベースの設定例
・会員あるいは非会員に対して特定の商品をレコメンドする
・新規ユーザーに対して特定の商品をレコメンドする
・特定のページに複数回訪れた人に特定の商品をレコメンドする
・商品カテゴリAを見た人に同じカテゴリの商品をレコメンドする
・会員のユーザー属性が男性であった場合、特定の商品カテゴリをレコメンドする
これらの設定は一例であり、複数のルールを組み合わせてより複雑なルールを組むことも可能です。ただし、ルールを複雑にするとユーザー母数も減るため効果が出にくくなりますので、特にユーザー数が少ないECサイトではシンプルなルール設計にすべきです。
また、ルールベースは以下のようなECサイトやサービスにおすすめです。
◆ルールベースがおすすめなECサイトやサービス
・ユーザー数が少ない
・アイテム数(商品数、コンテンツ数)が少ない
なぜなら、他の「コンテンツベース」や「協調フィルタリング」は、ある程度のデータがないとパフォーマンスが発揮できないため、データが少ないうちはルールベースが最も良い方法となるからです。
しかし、ルールベースのデメリットは「マーケティングノウハウ」や「業界に精通」していないと、効果を発揮するルールを作れない点です。そのため、導入にあたっては、レコメンドエンジンのベンダーの意見や他社事例を参考にしてルールを設計するようにしましょう。
そして、サービスを立ち上げてユーザー数が増えたころに、コンテンツベースや協調フィルタリングを検討してみます。特に、ECサイト業務は仕入れから顧客対応まで多岐にわたるので、ECサイトの成長の過程で、データ重視のレコメンドエンジンを使うべきです。
②「コンテンツベース」を導入して確実に売上を伸ばす!
コンテンツベースは、商品に属性を付けます。例えば、「自宅で洗濯ができる黒のビジネスジャケット」であれば以下のような属性が考えられます。
◆自宅で洗濯できる黒のビジネスジャケットを属性に分ける
属性B:黒
属性C:ビジネスパーソン向け
そしてこのビジネスジャケットを購入した人に、同じ属性である「洗濯機で丸洗いできる黒いネクタイ」をレコメンドするなど、購入したアイテムや、過去に参照したアイテム情報に基づきレコメンドする仕組みが「コンテンツベース」です。
筆者の経験ですが、アイテム数が多いECサイトやサービスであれば、コンテンツベースを導入することで、売上を5~10%程度高めることができるはずです。このコンテンツベースは導入前に比べて売上を伸ばすことができますが、以下のようなデメリットがあります。
◆コンテンツベースのデメリット
・長く利用するユーザーのロイヤリティが下がる(同じようなアイテムばかりレコメンドされてサイトへの興味が薄れる)
このように、コンテンツベースを導入した当初は効果を出すことができたECサイトやサービスも、徐々に効果の上限が出てくるようになります。
その打開策として、より多くの新規ユーザーを流入させる仕掛けを行うか、あるいは次に紹介する協調フィルタリングを実施するかという選択になるでしょう。
③「協調フィルタリング」はユーザー数とアイテム数が多いサイトやサービスで効果を発揮する
協調フィルタリングは以下の2種類に分けられます。
◆協調フィルタリングの2つの種類
・③-2 ユーザーベース
そして、協調フィルタリングは以下のような仕組みです。
◆協調フィルタリングの仕組みの例
・A商品を買った人はB商品も購入する可能性が高いので、A商品を買った人にB商品をレコメンドする(③-1 アイテムベース)
・ユーザーCのような属性の人はD商品を購入する可能性が高いので、ユーザーCと同じ(もしくは近い)属性の人にはD商品をレコメンドする(③-2 ユーザーベース)
いずれも、大量のユーザーデータ(購入商品データやユーザー属性データ)を分析することで、ユーザーに最適な商品をレコメンドする仕組みです。
特に③-1 アイテムベースであれば、例えば、日用品の購入履歴から、関連のないオーディオ製品をレコメンドするなど、ユーザーに「新しい発見」を提供できるのが魅力であり、このような発見が上手くいけばユーザーを飽きさせない要素となるのです。
筆者もYouTubeを視聴しているときに経験があるのですが、いつも同じような動画ばかりだと感じていたところに、日ごろの視聴履歴と全く関係のない動画が出てきたことにより、新しいジャンルを発見し、さらにYouTubeを視聴するキッカケとなったことがあります。おそらくこれは、YouTube側が使っている協調フィルタリングによるものと筆者は推測します。
③-2 ユーザーベースの方は、突き詰めると②コンテンツベースレコメンドと同じような結果になることが多く、またユーザー数が多くなると処理負荷が高くなることから、結果として協調フィルタリングではアイテムベースが利用されることが多い印象です。
いずれにせよ、協調フィルタリングでは大量のユーザーデータが必要であり、また、情報のない新製品においての利用が苦手というデメリットもあるので、新製品に対しては、協調フィルタリングではなく、コンテンツベースやルールベースを利用することになります。
あなたのサイトにふさわしいレコメンドエンジンをYES/NOチャートで選ぼう
レコメンドエンジンの3つの種類からどれを選ぶべきかを考える際は、筆者が独自に作成した以下のYES/NOチャートを利用してみてください。
◆レコメンドエンジンのYES/NOチャート

出典(図):筆者作成
もちろん、筆者の作成したYES/NOチャートは全ての業界やレコメンドエンジンに当てはまるわけではありませんが、レコメンドエンジンを始めるべきかどうか検討する際は役に立つはずです。
業界でも有名なレコメンドエンジン5選
以下は、クラウドコマースプラットフォーム「EBISUMART」を提供するインターファクトリーのビジネスパートナーが提供するレコメンドエンジンです。いずれも業界大手なので、安心して資料請求等をしてみてください。
◆おすすめのレコメンドエンジン5選
② レコガゾウ
③ NaviPlusレコメンド
④ EC RECOMMENDER
⑤ さぶみっと!レコメンド
レコメンドエンジンをこれから導入する場合は、レコメンドエンジンの実績だけでなく担当者の知見も非常に重要なので、2~3社のベンダーに問い合わせて、相性が良い会社を選んでみてください。
レコメンドエンジンの導入事例
それでは、実際に自社ECサイトにレコメンドエンジンを導入して成果を上げた企業事例を紹介します。
紳士服専門店「洋服の青山」の事例
【課題】
自社ECサイトにおいて、従来はカテゴリーベースのレコメンド機能を利用していましたが、ユーザーに対して画一的な商品提案しかできず、クリック率の低さが課題となっていました。多様化する顧客ニーズに十分対応できていない状況が続いていたため、商品提案のパーソナライズが必要とされていました。
【施策】
この課題を解決するため、ECサイトのリニューアルと同時に、ユーザーの行動履歴をもとに個別最適な商品を自動で提案するレコメンドエンジンを導入。閲覧履歴や過去の購買データを活用することで、一人ひとりの関心に即した商品表示が可能な仕組みへと切り替えました。
【成果】
導入後は、ユーザーごとに表示される商品の関連性が高まり、クリック率の改善につながりました。その結果、月平均の注文件数は7〜8%程度向上し、レコメンド機能がユーザー体験の向上と売上の底上げに寄与する成果を得られました。
参考:洋服の青山とTHE SUIT COMPANYが推進する「パーソナライズ化」をメインとしたWEB戦略とは?(ECのミカタ)
ワイン専門店「エノテカ」の事例
【課題】
自社のECサイトでは、2,000種類以上のワインを取り扱っており、ユーザーが自身の好みに合った商品を見つけることが難しいという課題がありました。また、既存のレコメンドエンジンでは、ユーザーの多様な嗜好に対応しきれず、サイト内の回遊性やコンバージョン率の向上に限界がありました。
【施策】
これらの課題を解決するため、AIを活用した新たなレコメンドエンジンを導入しました。このエンジンは、ユーザーの行動履歴や嗜好を分析し、個々のユーザーに最適な商品をリアルタイムで提案する機能を備えています。また、メールマーケティングにおいても、ユーザーの興味や関心に基づいた商品を提案するパーソナライズドなレコメンドメールを配信することで、顧客とのエンゲージメントを強化しました。
【成果】
新たなレコメンドエンジンの導入により、サイト内の回遊性が向上し、ユーザーが自身の好みに合った商品を見つけやすくなりました。その結果、従来のレコメンドエンジンと比較して、コンバージョン数が270%、レコメンド経由の売上が300%向上するという成果を達成しました。さらに、パーソナライズドなレコメンドメールの配信により、ユーザーの再訪率や購入意欲の向上にも寄与しました。
参考:「アイジェント・レコメンダー」をワインECサイト「エノテカ・オンライン」に導入し、レコメンドによるコンバージョン数が270%、レコメンド経由の売上が300%向上(PR TIMES)
まとめ
レコメンドエンジンを導入とともに、売上を伸ばすためのECプラットフォームを検討してみてはいかがでしょうか。
インターファクトリーが提供するクラウドECプラットフォーム「EBISUMART」は、レコメンドエンジンによる効果を最大化するための柔軟なシステム連携が可能であり、また、ECサイトで売上を増やすためのデータ分析基盤を用意することもできます。
レコメンドエンジンとともに、成果を最大化するECプラットフォームに興味がある場合は、下記のEBISUMART公式サイトよりお気軽にお問い合わせください。