小売店のための7つの「オムニチャネルマーケティング」

小売店の方は特に「オムニチャネルマーケティング」の実践について検討しているのではないでしょうか?

オムニチャネルマーケティングを実践すれば、ユーザーの利便性が向上するとともに、ECサイトや実店舗の利用率が高まり、事業全体としての売上を伸ばすことができます。そのためには、オムニチャネルを使って、自社でどのようなマーケティング施策が実施できるのか検討が必要となるでしょう。

本日は、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、オムニチャネルマーケティングについて解説します。

ユニクロから学ぶ!オムニチャネルマーケティングが売上を伸ばす理由とは?

まず、オムニチャネルマーケティングがなぜ店舗・ECの売上に寄与するのか、アパレル大手のユニクロの事例を見てみましょう。

◆ユニクロの事例① 店舗受け取り

ユニクロでは、ECサイトで購入した商品を店舗で受け取れるサービスを行っております。受け取りの際には店舗で試着ができ、サイズが合わなかった場合の交換も可能(※)なため、ユーザーはより気軽にECサイトで買い物ができます。

また、受け取りに来店した際に、その他の商品もあわせて購入する「ついで買い」も期待できます。

※在庫がある場合

参考:ユニクロ店舗受取りについて│ユニクロお客様窓口

◆ユニクロの事例② ユニクロIQ

ユニクロIQはAIを活用したチャットボットです。お買い物アシスタントとして、商品の検索や在庫の確認からサイズやコーディネートなどの提案まで、ユーザーの購入を助けるツールとして活用されています。さらに、購入後の配送状況の確認や、返品・交換方法の案内まで、スマートフォンからいつでもどこでもストレスのない買い物体験を提供し、売上につなげています。

参考:ユニクロ│IQ あなた専用のお買いものアシスタント

◆ユニクロの事例③ 店頭からECサイトへアクセス

店頭で、欲しい商品のサイズがなかった場合、商品のバーコードをアプリで読み取ることで、ECサイトの商品ページへ遷移し、ECサイト上の在庫の確認ができます。また、商品レビューやコーディネートも確認でき、ユーザーは店舗にいながらも豊富な商品情報を得ることができるため、購入促進につながります。

早くからオムニチャネルマーケティングに取り組んできたユニクロでは、このように複数のオムニチャネル施策を行いながら、ユーザーがいつでもどのチャネルでも快適な買い物体験を得られることで売上を伸ばしています。

小売店が実施すべき7つのオムニチャネルマーケティング施策

それでは、小売店が実施すべき7つのオムニチャネルマーケティング施策を紹介します。

施策① アプリで店舗とECサイトの顧客情報を統合する
施策② ECサイトの商品の店舗受取を可能にする
施策③ 店舗スタッフがECサイト上でWeb接客を実施する
施策④ 店舗スタッフがタブレットでECサイトの商品を注文する
施策⑤ ECサイト限定商品を店舗で紹介する
施策⑥ SNSからECサイトや店舗へ誘導する
施策⑦ 店舗でECサイト購入商品の返品を受け付ける

施策① アプリで店舗とECサイトの顧客情報を統合する

自社の専用アプリを導入し、そこで顧客データを一元管理することで、統合された情報から個々のユーザーに最適なマーケティングが可能になります。

例えば、ユニクロアプリはそれ自体が会員証となり、以下のように店舗やECサイトでの購入履歴がアプリで確認でき、その履歴からパーソナライズされたおすすめ商品やお得情報がユーザーに提供されます。

参考:ユニクロ公式│アプリな理由
※画像は実際のアプリの画面を筆者が一部加工して作成

購入ポイントについても、店舗購入もEC購入もポイントを共通化することで、ユーザーは購入するチャネルを気にすることなく、いつでも気軽に利用できます。

施策② ECサイトの商品の店舗受取を可能にする

前項のユニクロの事例でも解説しましたが、ECサイトで購入した商品の店舗受取サービスは、アパレル業界をはじめ、多くの小売業界で導入されているオムニチャネルマーケティング施策です。

店舗受取にすることで、ユーザーは送料をかけずに商品を手に入れることができ、事業者側も配送コストを削減し、店舗でのクロスセルも促進されるなど、双方にメリットの多い施策です。

スーパーマーケットの店舗受取も、ユーザーメリットの大きいサービスです。イオンネットスーパーの店舗受取サービスは、ECで購入した商品を、店内サービスカウンターや店内ロッカー、あるいは駐車場で受け取ることが可能です。

混雑する時間帯でもレジに並ぶ必要がなく、店内を歩き回って商品を探す必要もないので、普段の買い物を時短で済ませることができます

参考:店舗・宅配ロッカー受取りサービス(イオンネットスーパー)

施策③ 店舗スタッフがECサイト上でWeb接客を実施する

Web接客(オンライン接客)は、実際に来店できないユーザーに対しても、ECサイト上で実店舗同様の買い物体験を提供する施策です。

アパレル業界では、Web接客が活発に実施されており、実際の店舗スタッフがECサイトやSNS上で商品説明やコーディネートの提案を行うなど、新たな販売チャネルを作り上げています。

大手アパレルセレクトショップのBEAMSでは、全国の販売スタッフがブログやECサイト上で自身のコーディネートを紹介するなど、個人の裁量で情報発信をしており、これによりサイトの回遊性が高まり、来店や売上の増加にもつながっています

このように、店舗スタッフをオムニチャネル化することにより、ユーザーのファン化や来店促進につながるとともに、スタッフのモチベーションの向上にもつながります。

参考:BEAMS(ビームス)公式サイトビームス販売員に聞く「オンラインで売上を上げるコツ」(DCSオンライン)

施策④ 店舗スタッフがタブレットでECサイトの商品を注文する

ユーザーが来店した際、店舗で欠品している商品を、スタッフがタブレットやスマートフォンを用いて、ユーザーに代わってECサイトなどで商品を注文し、後日ユーザーの自宅へ配送します。

自社の在庫が全てのチャネルで一元管理されているので、その店舗に商品がなくても、ECサイトをはじめ系列の他店舗や倉庫から在庫引当を行うことが可能になります。

筆者もよくアパレルショップに行きますが、このサービスは多くの店舗で導入されております。先日も、全国に店舗展開しているショップに欲しかったブーツを買いに行きましたが、その店舗では希望のサイズがありませんでした。

そこで販売スタッフの方はタブレットで他店舗の在庫をチェックし、すぐに配送の手続きをしてくれました。昔は、他店舗に電話をしてもらい「○○店なら在庫があるそうです」という情報を得て、わざわざその店舗に買いに行っていたので、このサービスの利便性を強く実感しました。

施策⑤ ECサイト限定商品を店舗で紹介する

ECサイト限定で販売している商品を店舗でも紹介し、ECサイトへ誘導します。ユニクロでは、商品数もサイズ展開も豊富なため、商品によってはXSやXXLなどのサイズや、カラーバリエーションの一部などは、キャパシティに限界のある店舗には在庫を置かずに、オンライン限定商品としてECサイトのみで展開しています。

そのため、来店したのに希望するサイズやカラーの在庫がなかったというユーザーのために、店舗でもオンライン限定商品を案内し、ECサイトへ送客することで機会損失を減らしています。

施策⑥ SNSからECサイトや店舗へ誘導する

オムニチャネルマーケティングにおいてSNSは重要なマーケティングツールです。TwitterやInstagram、あるいはSNSをうまく活用することで、ユーザーの購買意欲を高め、ECサイトや店舗へ誘導します。

◆SNSを利用したEC/店舗誘導施策の例

・入荷した商品をSNSで紹介してECサイトへ誘導する
・店舗で使えるクーポンをSNSで配布する
・店舗で撮影した商品をSNSに投稿することで特典がもらえるキャンペーンの実施

筆者も欲しい商品がある場合、InstagramやTwitterを利用して情報収集しますし、特に欲しい商品がない場合でも、たまたまInstagramで見かけた商品が欲しくなり、そのままECサイトで購入したり店舗に足を運んだ経験が何度もあります。

このように、SNS経由で商品購入に至るケースは多いため、店舗やECサイトにおいては、SNSをフォローしてもらうために、店舗ではPOPやショップカード、ECサイトではバナーやタイムラインの設置などによって、自社のSNSをしっかりと周知・誘導することが重要です。

施策⑦ 店舗でECサイト購入商品の返品を受け付ける

大手スポーツブランドのアディダスでは、ECサイトで購入した商品を最寄りの直営店で返品できるサービス「CLICK&COLLECT  return at  store」を展開しております。

参考:RETURN SHOPPING GUIDE(アディダスオンラインショップ)

ECサイトではサイズ感や実物の質感が分かりません。もし購入した商品のサイズが合わなかった場合、ユーザーにとっては手間となる返品の手続きが必要になります。そのため、特にアパレルではユーザーがECサイトでの購入をためらうケースが多くあります。

従って、オムニチャネルによるシームレスなUX(ユーザーエクスペリエンス)をユーザーに提供するためには、返品における利便性も高めることが重要になってきます。

オムニチャネルのシステム統合には費用と労力がかかる

本記事で紹介したようなオムニチャネルマーケティングを実施しようとするなら、ECサイトと、基幹システムや在庫管理システムなどのバックエンドのシステムと、システム統合を実施する必要があります。その費用は大手企業ならば1億円を超える投資となるはずです。

また、ECサイトのカスタマイズには1年半以上など長期の開発期間もかかるので、フェーズに分けてリリースすることが重要です。例えば、以下のような例です。

◆オムニチャネル実装までのフェーズ分けの例

フェーズ① ポイント情報の連携
フェーズ② 在庫情報の連携
フェーズ③ 顧客情報の連携

このように、連携できた情報(フェーズ)ごとにシステムを公開していくことで、大きなトラブルを回避することができますし、運営スタッフも少しずつ新しいオペレーションに慣れながら、システムを導入することができるのです。

自社のECサイトで購入する理由がなければユーザーはモールに流れてしまう

小売店にとってオムニチャネルマーケティングが必要な理由には、端的に言えば「Amazon」や「楽天市場」あるいは「ZOZOTOWN」のような巨大モールの存在があると筆者は考えます。

なぜなら巨大ショッピングモールでは欲しいものを何でも手に入れることができます。そのため小売店のECサイトで購入する特別な理由がないと、利便性の高いショッピングモールにユーザーが流れてしまいます

そうならないためにも、オムニチャネルマーケティングの実施により利便性とロイヤリティを高めることで、自社EC・店舗の利用を促進していく必要があるのです。

もし貴社がオムニチャネルマーケティングの実施を検討されているのであれば、インターファクトリーのクラウドコマースプラットフォーム「ebisumart」をおすすめします。柔軟なシステム連携が可能で、さまざまなチャネルをシームレスに連携するオムニチャネル施策にも対応できる、拡張性の高いECプラットフォームです。

公式サイトではオムニチャネルの導入事例を紹介しており、関連資料のダウンロードも可能ですので、以下のリンクよりぜひご覧ください。

ebisumart公式ホームページ:実店舗・アプリ連携、O2O・オムニチャネルを実現

セミナー情報

ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表。 株式会社インターファクトリーのWebマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」では、ECサイトの初心者向けに特に集客方法について解説。