ACOS(Advertising Cost of Sales)とは、広告費が広告経由売上の何%を占めているかを示す指標であり、以下の数式で算出される値です。
Amazon広告で広く知られる指標ですが、考え方自体はAmazonや楽天市場などのECモールに限ったものではなく、自社ECの広告運用でも活用できます。
ACOSの利点は、広告効率を単なる売上倍率ではなく、利益との関係で捉えやすい点にあります。ROAS(広告費用対効果)では見えにくい「この広告費率で利益が出るのか」「広告費をかけすぎていないか」といった判断を、より直感的に行いやすくなるためです。
また、EC全体の売上との関係まで広げて考えることで、広告投資をより戦略的に評価する視点にもつながります。
この記事では、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、ACOSの基本的な考え方から、ROASやTACOSとの違い、実務での見方や活用方法までを分かりやすく解説します。
まずは「ACOS(エーコス)」を算出してみよう
ACOSは、EC広告の効率を把握するうえで重要な指標です。本記事では、これからACOSについて詳しく解説していきますが、まずは下記の簡易フォームに広告費と広告経由売上を入力し、ACOSを算出してみてください。入力した数値に応じて、広告費が売上の何%を占めているのかをすぐに確認できます。
例えば、広告費が5万円、広告経由売上が20万円であれば、ACOSは25%です。これは、広告経由売上に対して25%の広告費を投下している状態を意味します。
なお、フォーム内では参考値としてROASもあわせて表示されます。ROASはACOSと密接に関係する指標であり、広告効率を別の角度から確認する際に役立ちます。
次項からは、ACOSの見方や考え方、ROASとの関係についても詳しく解説します。
ECの広告運用で「ACOS」という指標が必要になる理由
ACOSがなぜ必要なのかを理解するには、まず比較されやすい指標であるROASを押さえておく必要があります。
ROAS(Return On Advertising Spend:広告費用対効果)とは、広告費に対してどれだけの売上が立ったかを見る指標です。広告効率を把握しやすいため、多くの広告運用の現場で使われています。ROASは以下の計算式で算出されます。
◆ROASの計算式
例えば、広告費が5万円、広告経由売上が20万円だった場合、ROASは400%です。広告費1円あたり4円の売上を生み出した状態と考えると、効率は良さそうに見えます。
しかし、ROASだけでは判断しきれないこともあります。なぜなら、ROASはあくまで「広告費に対して売上が何倍になったか」を示す指標であり、その売上で十分な利益が出ているかまでは直感的に分かりにくいからです。
また、ROASが高い施策ばかりを優先すると、効率はよく見えても、売上の絶対額が伸びにくくなることがあります。確実に売れやすい層への配信に寄り、新規顧客の獲得や将来の売上拡大につながる投資を抑えてしまうためです。
そこで必要になるのが、売上に対して広告費が何%かかっているかという視点です。
「ACOS」なら利益への影響を直感的に把握しやすい
ACOSとは、広告費が広告経由売上の何%を占めているかを示す指標です。計算式は以下の通りです。
◆ACOSの計算式
ROASの計算式と比較して分かる通り、ROASとACOSは、計算式の分子と分母が入れ替わった関係にあります。これは数学的には同じ情報を扱っていますが、「分母」を何に置くかで、管理する側の意識が変わります。
ROASが「広告費に対してどれだけの売上が立ったか」を見るのに対して、ACOSは「売上のうち何%を広告費に使ったか」を見ます。つまり、同じ実績を別の角度から見ている形ですが、ACOSのほうが広告費率として把握できるため、利益率と照らし合わせやすいのが特長です。
以下の例をご覧ください。
◆同じ実績における「ROAS」と「ACOS」の見え方の違い
ROAS:400% => 「広告費1円あたり4円売れた」と見える
ACOS:25% => 「売上の25%を広告費に使った」と見える
このACOSの25%という割合が良い水準なのかどうかを判断するには、商品の利益率と照らし合わせる必要があります。
仮にこの商品の粗利率が30%だとすると、売上の25%を広告費に使った場合、粗利ベースで残る余地は最大でも5%程度になります。さらに手数料や配送費が加わればその分も削られます。
つまりACOSは、「広告費をかけすぎていないか」を利益率と直接比べられる点で、ROASより直感的に使いやすい場面があるのです。
※実際には手数料・配送費を差し引いた「限界利益率」とACOSを比較して判断することが重要です
EC広告ではROASを見るだけでなく、売上に対して広告費が何%かかっているかというACOSの視点も欠かせないのです。次項からは、ACOSを損益管理にどう活用するのか、またその先の指標であるTACOSについて解説します。
「ACOS」を損益管理に活用する方法
ACOSは広告効率を見る指標として使われますが、実務では「この水準で利益が出るか」を判断するうえでも重要です。その際に必要になるのが「限界利益率」という考え方です。
限界利益率とは、売上から原価や手数料、配送費など、販売に直接かかる変動費を差し引いた利益率のことで、広告費を投入する前に、どこまで広告費をかけられるかを考える基準になります。
限界利益率の考え方はチャネルによって異なりますが、カンタンに整理すると、以下のようになります。
◆チャネル別の限界利益率の考え方
| チャネル | 限界利益率の考え方 |
|---|---|
| ECモール(Amazon/楽天市場など) | 粗利率 − プラットフォーム手数料 − 配送費 |
| 自社EC | 粗利率 − 決済手数料 − 配送費 |
例えば、粗利率30%の商品をAmazonで販売し、手数料15%、配送費5%がかかる場合、限界利益率は10%になります。このとき、ACOSの損益分岐点は30%ではなく10%です。
ACOSが限界利益率を下回っていれば利益を確保しやすく、上回っていれば赤字化しやすくなります。この比較が、ACOSを損益管理に活用する際の基本的な考え方です。
ROASでは「400%だから良い」と判断してしまいやすいですが、ACOSであれば「限界利益率10%に対してACOSが25%なので厳しい」などと、より直感的に捉えやすくなります。
また、ACOSは常に同じ基準で管理すれば良いわけではありません。事業フェーズによって、あえて許容する水準を変える考え方もあります。
◆事業フェーズごとのACOSの考え方の違い
販売実績を積み上げるために、一時的にACOSが限界利益率を上回ることを許容する
・利益回収フェーズ(安定期)
ACOSを限界利益率以下に抑え、手元利益を確実に確保する
これは、どちらが正解というわけではなく、重要なのは、ACOSの数値だけを見て高い・低いを判断せず、自社の利益構造と事業フェーズを踏まえて、どこまでのACOSを許容するかを決めることです。
ただし、ACOSで分かるのは、あくまで「広告経由売上に対する広告費率」であり、広告によって自然流入や全体売上がどの程度押し上げられたかまでは見えません。
そこで次に重要になるのが、総売上に対する広告費率を見るTACOSです。
「ACOS」だけでは見えないEC全体の広告効果を「TACOS(タコス)」で把握する
EC運営において広告の役割は、広告経由売上を増やすことだけではありません。広告をきっかけに認知が広がり、自然検索からの流入やリピート購入が増えることで、EC全体の売上を押し上げることもあります。
そのため、広告を評価するのにACOSだけでは不十分になります。そこで重要になるのが、総売上に対する広告費率を見るTACOS(Total Advertising Cost of Sales)です。
TACOSとは、広告費が広告経由以外の売上も含めた総売上に対して何%を占めているかを見る指標です。広告経由売上だけでなく、自然流入やリピート購入を含めた総売上との関係で広告投資を評価できる点が特長で、この指標が低いほど、広告費が総売上に対して効率よく機能していると判断できます。
◆ACOSとTACOSの違い
| ACOS | TACOS |
| 広告経由売上に対して、広告費が何%かかったかを見る指標 | 総売上に対して、広告費が何%かかったかを見る指標 |
TACOSは以下の計算式で算出されます。
◆TACOSの計算式
例えば、広告費が10万円、広告経由売上が50万円、EC全体の総売上が100万円だったとします。
◆同じ実績における「ACOS」と「TACOS」の見え方の違い
ACOS:20% => 「広告経由売上の20%を広告費に使った」と見える
TACOS:10% => 「総売上の10%を広告費に使った」と見える
この違いが重要なのは、広告の効果が広告経由売上だけに表れるとは限らないためです。実際に、広告をきっかけに商品名やブランド名で検索され、自然検索や直接流入から購入につながることもありますし、広告で初回購入したユーザーが、その後にリピート購入する場合もあります。
このような売上は、ACOSだけを見ていると評価しきれません。TACOSを見ることで、広告費がEC全体の売上に対してどの程度の負担になっているかを把握しやすくなります。つまり、広告が事業全体に与えている影響を、ACOSよりも広い視点で捉えやすくなるのです。
◆TACOSが重要な理由
・ACOSだけでは見えづらい事業全体との関係を確認できる
・広告投資を全体最適で判断しやすくなる
例えば、ACOSがやや高めでも、TACOSが下がっている場合は、広告によって総売上が伸びている可能性があります。逆に、ACOSが低く見えていてもTACOSが改善しない場合は、広告がEC全体の成長に十分つながっていない可能性があります。
このように、ACOSだけを見ていては事業はスケールしません。売上全体に対する広告費の割合(TACOS)を見ることで、はじめて利益を残しながら売上を最大化する運用が可能になるのです。
「ACOS」と「TACOS」の組み合わせで分かる広告の4つの状態
ACOSとTACOSは、それぞれ単独でも有効な指標ですが、実務では組み合わせて見ることが非常に重要です。なぜなら、両者をあわせて見ることで、広告の状態をより立体的に把握しやすくなるためです。以下の図をご覧ください。
◆ACOSとTACOSの組み合わせによる広告の状態
出典:筆者作成
図の通り、ACOSとTACOSの組み合わせは、大きく4つの状態に分けて考えられます。以下に、それぞれの特徴について解説します。
① ACOS低 × TACOS低:理想に近い状態
この状態は、広告経由売上に対する効率も良く、EC全体の売上に対する広告費率も低く抑えられている状態です。広告単体で見ても、事業全体で見ても広告費の負担が過度に重くなっていません。
例えば、商品ページの訴求が強く、広告経由のコンバージョン率も高く、さらに自然流入やリピート購入も安定している場合は、この状態に近づきやすくなります。
一般的には、最も望ましい状態と言えますが、この状態が続いている場合でも、単に広告投資が小さすぎるだけで、売上拡大の余地を取りきれていない可能性もあるため、必ずしも最適な投資水準とは限らない点には注意が必要です。
② ACOS高 × TACOS低:全体成長に寄与
この状態は、広告単体で見ると効率が重く見える一方で、EC全体の総売上に対する広告費率は低く抑えられている状態です。
一見、ACOSが高いため悪く見えますが、広告が新規顧客獲得や認知拡大の起点となり、その後の自然流入やリピート購入につながっている場合には、十分に許容できます。
特に、立ち上げ期や拡大期のEC運営においては、広告経由売上だけで評価すると効率は低く見えても、総売上ベースでは広告費が過度な負担になっていないため、結果として事業成長に寄与している可能性があります。
この状態では、短期の広告効率だけで判断して広告を絞るのではなく、広告が総売上の拡大にどの程度つながっているかを見極めることが重要になります。
③ ACOS低 × TACOS高:広告だけ好調
この状態は、広告単体では効率が良く見えるものの、EC全体の総売上に対して見ると広告費率が重くなっている状態です。
広告運用だけを見ると好成績に見えても、実はEC全体では広告依存が強く、自然流入やリピートによる売上の広がりが弱い可能性があります。
例えば、確実に売れやすい指名検索や顕在層ばかりを広告で獲得している場合、この状態になりやすくなります。この状態では、広告運用だけを改善するのではなく、以下のような改善施策が必要になります。
◆改善施策の例
・SEOや自然流入施策の強化
・CRMやリピート導線の整備
・指名検索以外へのアプローチの拡大
このような形で、広告以外の売上基盤を強くする必要があります。
④ ACOS高 × TACOS高:要改善
この状態は、広告単体で見ても効率が重く、EC全体の総売上に対して見ても広告費率が高い状態です。4つのパターンの中では、もっとも見直しの必要性が高い状態です。考えられる原因としては、以下のようなものが挙げられます。
◆考えられる主な原因
・クリックは取れているが商品ページで離脱している
・CVRが低い
・客単価が低い
・広告費に対して自然流入やリピート購入が少ない
この状態では、広告設定だけを微調整しても改善しない場合があるため、入札やキーワード、訴求内容などの広告の見直しだけでなく、商品ページ、価格設定、レビュー、導線設計まで含めて、広い視点で改善ポイントを洗い出す必要があります。
このように、ACOSとTACOSは、どちらか一方だけでは広告の状態を十分に判断できません。ACOSだけを見ると、広告単体の効率は分かっても、EC全体への影響は見えません。逆にTACOSだけを見ると、事業全体への負担感は分かっても、広告運用そのものの良し悪しは見えにくくなります。
そのため実務では、以下の形で役割を分けて併用するのが基本となります。
◆広告運用におけるACOSとTACOSの役割分担
「TACOS」でEC全体に対する広告費率を確認する
なお、図の「高い」「低い」は一律の基準で決まるわけではなく、商材の利益率、販売チャネル、事業フェーズによって適正水準は変わります。そのため、絶対値だけで判断することではなく、自社の利益構造や成長段階に照らして自社の位置を把握することが重要です。
適正な「ACOS」の値とは?理想値を決める3つの要素
「ACOSの理想値はいくつなのか?」という疑問を持たれる方もいると思いますが、これについて一律の正解はありません。なぜなら、適正なACOSの数値は、以下の3つの要素によって変わるためです。
要素① 限界利益率によって変わる
ACOSの基本条件は「ACOS < 限界利益率」です。限界利益率が10%の商品であればACOSは10%未満、25%の商品であれば25%未満が損益分岐点になります。まずこの水準を基準として設定することが出発点になります。
要素② 事業フェーズによって変わる
同じ商品でも、事業の成長段階によって許容できるACOSの水準は変わります。例えば、立ち上げ期や拡大期は、販売件数の積み上げや認知拡大を優先するため、一時的にACOSが限界利益率を超えることを許容する判断もあり得ます。
一方、安定期や利益回収期には、限界利益率をしっかり下回る水準に抑えて、手元利益を確実に確保することが求められます。
要素③ 商品カテゴリや競合環境によって変わる
競合が多く入札単価が高いカテゴリでは、同じ商品・同じ予算でもACOSが高くなりやすくなります。自社の数値だけでなく、市場環境も踏まえた判断が必要です。
このように、ACOSは一律の「理想値」で考えるよりも、限界利益率を基準にしながら、事業フェーズや競争環境を踏まえて判断することが重要です。
まとめ
ACOSは、広告経由売上に対する広告費率を示す指標であり、EC広告の採算性を判断するうえで重要です。特に、ROASだけでは見えにくい「利益が出る水準かどうか」を把握しやすい点に意味があります。
ただし、広告の効果は広告経由売上だけでは測れません。EC全体への効果まで含めて評価するには、TACOSのように総売上ベースで広告を捉えることも必要です。
つまり、EC広告を適切に判断するには、ACOSやTACOSを単独で見るのではなく、利益構造や事業フェーズ、EC全体への影響を踏まえて組み合わせて判断することが重要です。
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