5つの種類別に解説する「ECサイト制作の依頼先」と注意点

ECサイトの制作を外部に依頼するにあたって、最初に悩むのが「どのような制作会社に依頼すればよいか」「どのプラットフォームを選ぶべきか」といった点です。

特に初めてECサイトを制作する場合、WEB制作会社やECパッケージベンダー、ASPサービスなど、選択肢が多く、何を基準に判断すればよいか分からないという声も少なくありません。

そこで本記事では、以下の代表的な5つのタイプのECサイトについて、それぞれに適した制作方法や依頼先の選び方を具体的に解説します。

① 個人事業主・小規模ECサイトの制作
② 単品ECサイト(DtoCサイト)の制作
③ 総合ECサイトの制作
④ 越境ECサイトの制作
⑤ BtoB向けECサイトの制作

ビジネスの規模や目的、ターゲットとする顧客層によって、必要な機能や運用体制は大きく異なります。それに応じて、選ぶべき制作会社やプラットフォームも変わってきます。

本日は、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、ECサイト制作の依頼先や、制作時の注意点について詳しく解説します。

5つのECサイト制作方法

ECサイトにはさまざまな種類や定義がありますが、この記事では、以下の5つの切り口で、それぞれのECサイトに必要な制作依頼先企業やプラットフォーム会社を解説します。

① 個人事業主・小規模ECサイトの制作
② 単品ECサイト(DtoCサイト)の制作
③ 総合ECサイトの制作
④ 越境ECサイトの制作
⑤ BtoB向けECサイトの制作

① 個人事業主・小規模ECサイトの制作

ポイント!制作を依頼せず、自分たちで無料のECプラットフォームを使って制作すること

まず、個人事業主や小規模事業者がECサイトを制作する場合は、以下のポイントが重要です。

・初期費用をかけない(なるべく自分たちで制作する)
・固定費をかけない
・まずは自分たちだけでやってみる

小規模事業者がECサイトを開設する時、広告費はかけられないケースがほとんどです。また、EC事業を継続しやすくするためにも、ECサイトの運営費を抑える形で実施する必要があります。そのため、制作を依頼せずに、以下の3つの無料のECプラットフォームを利用して自分たちでサイトを作るようにすべきです。

◆無料のECプラットフォーム

BASE
STORES
カラーミーショップ

いずれも、初期費用や固定費がかからず、決済手数料のみで利用することができます。気になるECサイトのデザインですが、これらの有名なプラットフォームには最初から数十以上の無料のテンプレートがあるので、それらを利用すれば以下のように誰でもカンタンに作成ができます。

◆無料のプラットフォームでECサイトを作成する基本的な流れ

① 基本情報の入力(ショップ名、メールアドレス、パスワード等)
② テンプレート選択
③ 商品データの入力
④ クレジットカード決済の審査申込
⑤ ECサイト公開

個人事業主や小規模事業者は、コストをかけずにECサイト運営を行うことが重要です。有料の本格的なECサイトの利用は、収益が出てからでも問題ありません。

② 単品ECサイト(DtoCサイト)の制作

ポイント!ECプラットフォームは単品専門ECカート、LPは単品経験のあるデザイン会社に依頼する

単品ECサイトは、昨今ではDtoC事業者によって注目度が高くなっております。単品ECサイトでは以下のような商品が扱われることが多いです。

◆単品ECサイト(DtoCサイト)で扱われる商材

✓食品(カニ、肉、米等)
✓サプリメント・健康食品
✓化粧品
✓プロテイン

これらの商品に共通することは、消耗品であり、繰り返し購入されることを前提としていることです。そのため、ECサイトの制作の要件には以下のようなものが必要となります。

◆単品ECサイト(DtoCサイト)に必要な要件

・定期購入機能
・後払い決済
・スペシャルLPの作成
・メルマガ
・顧客分析機能
・ユーザーレビュー機能

まず、単品ECサイトでは、初回購入の際に「サンプル」や「特別割引価格」を提供して、2回目以降の買い物につなげることが非常に大切です。そのためスペシャルLPを作成して、Facebook広告やリスティング広告で興味のあるユーザーに露出を行い初回購入を増やします。

そして、初回購入したユーザーに対して、メールを送り定期購入を訴求し、定期的に商品を購入してもらいます。顧客分析を徹底的に実施する必要があるため、顧客分析ができるツールと連携できると良いでしょう。

また、ユーザーが購入する際の決め手となる「ユーザーレビュー機能」が非常に重要なので、商品を購入したユーザーがレビューしやすい仕組みを作ることも、売上を左右する要素となります。

このようなことから、単品ECサイトは単品ECのノウハウが豊富である会社に制作を依頼することが重要です。その中でも商品の売上を左右するのはLPのデザインと施策なので、以下のような依頼先に制作を依頼してみましょう。

◆単品ECサイト(DtoCサイト)の制作依頼先

たまごリピート魂
ecforce
侍カート

◆LPデザインの制作依頼先

・単品ECで制作実績のある制作会社
・LPの制作経験のあるフリーランス

③ 総合ECサイトの制作

ポイント!年商1億円未満はASPを利用して、ASP専属のデザイン会社に依頼する

総合ECサイトとは、例えば以下のようなものです。

◆総合ECサイトの例

✓アパレル・アクセサリー
✓家具・インテリア
✓家電・PC販売
✓日用品

そして、これらのECサイトに共通するのは、Amazonや楽天市場、あるいはユニクロやビックカメラやニトリなどの大手ECサイトがライバルであることであり、それらの競合とどのように差別化を図るかが重要となります。

まず、ECサイトの制作先の選定ですが、ECサイトの規模感によって制作依頼先が変わります

ECサイトの規模 制作依頼先
年商1億円未満 ASP
年商1億円以上 パッケージやカスタマイズできるクラウドEC

年商1億円未満の総合ECサイトの制作依頼方法

ECサイトの年商が1億円未満である場合は、ECのプラットフォームとしてはASPを利用します。月額利用料は数千円~数万円のSaaS型のソフトウェアで、比較的手軽にECサイトを制作することができます。手軽といっても、デザインに徹底的にこだわることも可能です。

そのため、以下のような依頼先にECサイトの制作を依頼します。

◆年商1億円未満の総合ECサイトの制作依頼先

makeshop
ショップサーブ
フューチャーショップ
Shopify
EBISUMART Lite(エビスマート ライト)

そして、大切なのがプラットフォームで実装するデザインですが、これらの有名ECプラットフォームには必ず、専属のデザイン会社が存在するはずです。できるだけ、そのECプラットフォームに慣れているデザイナーにデザインしてもらう方が、商品を売ることを意識してくれるので、ECプラットフォームを決めたら、ECプラットフォーム会社の営業に「プラットフォーム側の専属のデザイン会社を紹介してください!」と聞いてみましょう。

◆サイトデザインの制作依頼先

・ECプラットフォーム会社専属のデザイン会社

筆者の経験上、デザイン費用は20~100万円になります。例えばトップページと主要カテゴリページだけを依頼するなどすれば費用が安く済みますので、予算に合わせて制作を依頼しましょう。

年商1億円以上の総合ECサイトの制作依頼方法

年商1億円以上の総合ECサイトを制作する場合は、すでにECサイトを運営しており、1日あたりの注文数も100件を超えるなど、ECサイトの規模が大きくなっている企業が対象でしょう。そうなると、最初に現状のECサイトを踏まえて要件定義を実施する必要があります。

それらの要件定義から開発、テストを一緒に実施してくれるベンダーを見つける必要があります。カスタマイズが前提となりますので、制作依頼する会社は以下の2つのECプラットフォーム会社となります。

◆年商1億円以上の総合ECサイトの制作依頼先

・パッケージベンダー
・カスタマイズ可能なクラウドEC

これらのECプラットフォームはすでにECサイトの基本機能があるパッケージ(あるいはクラウド)ECをベースにカスタマイズして、専用のECサイトを構築します。また、数千万円~数億円という大きな予算が必要になるため、単なる開発だけでなく長期的なEC運用も視野に入れる必要があります。

例えば、パッケージの場合は5年もたつとシステムが陳腐化するため、もう一度システムのリニューアルが必要となりますが、クラウドベースのECプラットフォームの場合は、常にシステムが最新化されるため乗り換える必要がなくなり、システムが陳腐化しません。

またこの年商規模になると、開発ベンダーがデザインも受注するケースが多いですが、デザインだけは自社のデザイナーや外部のデザイナーを使うこともできますので、事前にECプラットフォームのデザインのルールなどを打ち合わせて認識をすり合わせる必要があります。

④ 越境ECサイトの制作

ポイント!まずは「海外転送サービス」を利用して、テストマーケティングから始める

越境ECサイトを制作する場合に念頭に置かなくてはいけないことは、以下の3つです。

◆越境ECサイト制作で重要なこと

・翻訳
・決済
・配送

この3つをクリアしなければ、海外のユーザーに商品を販売することができません。まず、翻訳ですが、多くのデザイン会社では対応できないので、自社スタッフあるいは翻訳会社に依頼をする必要があります。外資系のデザイン会社の中には翻訳に対応している会社もあるので、そのような会社に依頼します。

海外向けの決済は、クレジットカード決済以外に以下の決済を用意しましょう。

・PayPal
・WeChatPay(微信支付)

最後に配送ですが、EMS(国際スピード郵便)を使うことになるので配送料が結構かかりますし、当然到着までは相当な時間がかかります。EMSといっても、その国に商品が到着して、お客様の手元までは現地のプロバイダーが担当するので、国によって配送クオリティもさまざまです。

参考:EMS(日本郵便株式会社)

越境ECサイトを作る場合は、まずテストマーケティングから始めるべきです。本格的な越境ECは構築費用もかなりかかるので、まずは海外転送サービスを利用してみましょう。これは、日本人向けのECサイトに海外転送サービスのタグを入れて、海外ユーザーがECサイトに訪問してきたら、専用のポップアップを表示するサービスです。

◆海外転送サービス

Buyee Connect
WorldShopping BIZ

この海外転送サービスはタグを追加するだけで、自社のECサイトで越境ECを実現できます。あとは注文から配送まで、全て代行してくれるので、運営スキームを変更することなくすぐに導入することができます

⑤ BtoB向けECサイトの制作

ポイント!独自の開発要素が多いため、BtoBの実績が豊富なECプラットフォームを選定する

BtoB向けのECサイトの制作は、カスタマイズやシステム連携など独自の開発要素が多いことから、もし、ASPを利用することができなければ、パッケージやカスタマイズ可能なクラウドECを使うこととなるため、開発費用は数百万円~数千万円かかることもあります。

まずは、BtoB向けのASPが提供しているので、自社のECサイトが対応できるかどうか検討しましょう。

◆BtoB向けECサイトの制作依頼先

Bカート
インフォマート
EBISUMART(エビスマート)

また、基幹システムと連携するようなケースや複雑なシステム連携を行う場合は、開発費用が1億円を超えるケースもあります。このようなことから、BtoB向けのECサイトを制作する会社は、BtoBの実績が豊富なECプラットフォームに限られます。

BtoB向けのECサイトのデザインについては、ECプラットフォーム会社が制作を実施することが多いでしょう。

ECサイトの制作依頼時に押さえておきたい5つの注意点

ECサイトの制作を外部に依頼する際、どのようなベンダーに、どのような形で依頼するかによって、サイトの完成度や運用効率が大きく変わってきます。ここでは、発注時に特に注意すべき5つのポイントを紹介します。

注意点① 依頼はECサイト制作の実績がある会社を選ぶ

Web制作の実績はあっても、ECサイト制作の経験がない制作会社は意外と多く存在します。筆者の知人のケースでは、ECに不慣れな制作会社にフルスクラッチで依頼したところ、「会員機能がないECサイト」が納品されたという事例がありました。

これは依頼者側の要件定義不足も一因ですが、制作会社にECの知見があれば、基本機能の漏れを防げた可能性が高いでしょうECサイトならではの業務設計やUI設計に理解のある制作会社を選ぶことが必須です。

注意点② SEOやマーケティングの視点を持つ制作会社かを見極める

見た目が美しく、機能が揃ったサイトでも、「集客できない」「検索に出てこない」では意味がありません。制作段階からSEOやCV(コンバージョン)設計に強い会社を選ぶことが重要です。

特に商品説明文やカテゴリ構成などは、後から変更すると大きな手間がかかるため、初期から検索エンジンやユーザー導線を意識した設計ができるパートナーを選びましょう

注意点③ 運営まで見据えたサポート体制の有無を確認する

ECサイトは「制作して終わり」ではありません。むしろ、運用フェーズに入ってからのトラブル対応や機能追加の相談が重要になります。サポートが手厚いベンダーと、納品後は関与しないベンダーとでは、運営上の負担が大きく異なります。

選定時には、「納品後のサポート内容」「障害時の対応スピード」「保守費用」などを事前に確認しておくことが、安心・安定運用につながります。

注意点④ ECサイトの売上規模に合ったプラットフォームを選ぶ

構築費が高額なECパッケージやフルスクラッチを選べば、当然ながらコストがかかります。年商が数百万円〜数千万円のフェーズで、数千万円規模のシステムを導入するのは投資対効果が見合わないケースがほとんどです

このような場合には、月額課金型のASP(SaaS)など、小規模向けのプラットフォームでまずは立ち上げるのが賢明です。ビジネス成長に応じて、段階的にアップグレードするという考え方が、長期的には効率的です。

注意点⑤ 完璧を求めずスピード重視で始める

ECサイトに限らず、WEBサービスは「作って終わり」ではなく、運営しながら改善していくことが基本です。そのため、開発に半年〜1年をかけて完璧を目指すよりも、まずは最小限の機能で早期リリースし、運営を通じて学びながら改善する方が実践的です。

例えば、「まずは1商品だけ販売してみる」「カートと決済だけ用意しておく」といったMVP(Minimum Viable Product)思考でのスタートが効果的です。

まとめ

ECサイトを制作する際は、作ろうとするECサイトの性質や目的によって、利用すべきプラットフォームや制作依頼先が変わってきます

そのため、制作するサイトとプラットフォームや依頼先がかみ合っていない場合、よけいなコストがかかってしまったり、コストに見合わないサイト、実績の出にくいサイトになってしまう可能性が高いので注意が必要です。

もし現在、ECサイトのプラットフォームを検討している事業者様がいれば、インターファクトリーが提供するクラウドECのプラットフォーム「EBISUMART(エビスマート)」も、ぜひご検討ください。

クラウドECのプラットフォーム:EBISUMART(エビスマート)

また同社では、EC支援サービス「EBISU GROWTH」にて、EC事業を支援しています。ECサイトの運営や集客についてコンサルを受けたい方は、ぜひ以下から資料をダウンロードしてご検討ください。

EBISU GROWTH「EC戦略PM支援サービス」

セミナー情報

ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表。 株式会社インターファクトリーのWebマーケティングシニアアドバイザーとして、EBISUMARTやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」では、ECサイトの初心者向けに特に集客方法について解説。