ギフティングとは、インスタグラマーやユーチューバーなどSNSで有名なインフルエンサーに自社商品を無償で提供し、提供を受けたインフルエンサーに商品をSNSで紹介してもらうことであり、SNSマーケティングの手法の一つです。
ギフティングは、手間はかかりますが低コストで実施できる施策であるため、特に新規事業やD2C事業を始めたばかりの企業が、ギフティングを成功させることでUGCやファンを増やし、指名検索を増やして広告費を下げることが期待できる施策です。
市場における商品の認知度を上げるために効果的なマーケティング施策と言えるでしょう。しかし、自社に合ったインフルエンサーを探して管理するのは大変ですし、ステマにならないように配慮が必要となります。
本日は、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、ギフティングについて詳しく解説します。
ギフティングと有償タイアップの違い
まず、以下をご覧ください。ギフティングと有償タイアップの違いを解説します。
◆ギフティングと有償タイアップの比較
メリット | デメリット | |
ギフティング (中長期的施策) |
・有償タイアップより費用が安い
・Instagramでは、フォロワー数が少ないインフルエンサーでもエンゲージメント率が高ければ、リーチが広げやすい |
・必ず紹介してくれる保証はない ・工数がかかる ・多くのインフルエンサーに商品を提供するため管理が大変 |
有償タイアップ (短期的施策) |
・必ず商品を紹介してもらえる
・インフルエンサーと相性が良ければ商品が一気に認知される可能性がある |
・ギフティングより費用がかかる |
ギフティングは、有償タイアップと比べると必ず商品が紹介される保証はありませんが、ギフティングにかかるコストは商品代金と担当者の稼働だけですので、低コストで実施することができ、継続的に取り組むことができるのです。
それに対して、有償タイアップは費用はかかりますが、インフルエンサーに確実に商品を宣伝してもらうことができるのです。ただし、自社商品の世界観とインフルエンサーの世界観の相性が良くないと思うように拡散しなかったり、CVが増えません。
では、次にギフティングにかかる費用感について詳しく解説します。
ギフティングの費用感は「商品代金」+「担当者の稼働」
ギフティングの最大のメリットは、マーケティング費用がかからないことです。具体的にかかる費用は以下の通りです。
◆ギフティングの費用感
ですから、商品の原価が2,000円(送料を含む)であった場合、50個をギフティングで利用すると、以下のようにたった10万円で施策を実施できます。
そのため、マーケティング費用をあまり確保できない事業者でも、自社商品があれば実施することができるのです。
InstagramやYouTube、X(旧Twitter)などのフォロワー数が500人以上のインフルエンサーがギフティングの対象となるので、送付するアカウントは無数にありますが、筆者の経験上、返信がくるのは5~10%程度となります。
そのため、まずはギフティングを送る対象を広く考えておきましょう。
ギフティングを実施すべき5つの理由
筆者は企業のマーケティングにおいてギフティングを行う理由は5つあると考えます。一つずつ解説します。
理由① ブランド力がない場合にUGCを生むため
UGCとは、簡単に説明するとWeb上の自社商品やブランドに関する口コミのことです。まず、新事業や新商品である場合、市場に商品が認知されておらずUGCがほとんどありません。
そこで、UGCを促すためにギフティングを行い、自社商品のファンを作ります。ギフティングでは500人以上のナノインフルエンサーも対象とするため、少しずつですがUGCが生まれ、ギフティングがきっかけとなってファンになり、認知のなかった市場にファンを作る施策として有効なのです。
そのためギフティングは、すでにブランド力がある事業者よりも、まだブランド力のない新規事業者向けの施策と言えます。
理由② 使用感のある投稿をしてもらうため
企業やブランド側がLPや公式サイトで商品を訴求しても、第三者視点で実際の使用感があるコンテンツは生まれにくいので、ユーザーに響きにくい場合があります。
しかし、ギフティングによって実際に使用してから投稿をしてもらうことで、企業側が演出することのできない使用感のあるリアルな投稿が生まれます。
このような使用感のある投稿は、企業側やブランド側が行っても宣伝としてユーザーから敬遠されてしまう可能性が高いため、利害関係のないインフルエンサーやUGCの方が向いているのです。
理由③ リーチを広げるため
Instagramは2022年にアルゴリズムが変わり、総エンゲージメント数ではなく、エンゲージメント率が重要となりました。
つまり、重要なのはフォロワー数ではなくエンゲージメント率なので、フォロワー数が少ないインフルエンサーであっても、エンゲージメント率が高いアカウントであれば、発見タブに掲載され、よりリーチを稼ぐことができるようになります。
そのため、Instagramで500人しかフォロワーのいないナノインフルエンサーであっても、エンゲージメント率が高ければ発見タブ(※)に表示されやすくなるのです。
一方でフォロワーが多いインフルエンサーでもエンゲージメント率が低ければ、発見タブに表示される可能性は低くなります。
目安は、直近の投稿がフォロワーの4分の1のエンゲージメント率(いいね等の数)の場合は、エンゲージメント率が低いと考えましょう。
※発見タブ…ユーザーの興味のあるコンテンツが自動表示されるInstagramのレコメンド機能。ここに表示されることでブランドや商品の認知、さらにはファンの獲得につながりやすくなります。
理由④ 相性の良いインフルエンサーを探すきっかけになるため
化粧品やアパレル商材の場合は、インフルエンサー施策は欠かせません。しかし、急にインフルエンサー施策を実施しようとしても、インフルエンサーと関係値を築いていない場合はインフルエンサーを探すところから始めないといけません。
しかし、ギフティングを実施することで、相性の良いインフルエンサーとつながるきっかけを作る、あるいはそのようなインフルエンサーをリストアップをすることができ、有償タイアップの際の準備にもつながるのです。
人気インフルエンサーには、日々多くのタイアップ依頼やギフティングがありますが、インフルエンサーとの関係値を築いておくことで、今後も優先的に協力してもらえる可能性が高くなります。
理由⑤ 指名検索を増やすため
デジタルマーケティング費用のCPAは高騰を続けており、広告効果は年々下がってきております。しかし、指名検索(商品名)でGoogle検索されるようになれば広告費は下がります。
このために、ギフティングを行い商品名の認知を高めてUGCを促す工夫が必要となるのです。広告全体の戦略から考えても、UGCを生むためのギフティング施策は非常に重要となるのです。
ギフティングで留意しておくべきポイント
前項で述べたようにギフティングには多くのメリットがありますが、実施にあたっては下記の点にも注意しておくべきです。
◆ギフティングで留意すべき点
・希望通りの投稿内容になるとは限らない
ギフティングを行っても承諾してくれるインフルエンサーは少なく、一般的に10%程度とされています。紹介するにも、動画を作成したりする労力は発生するため、無償である分後回しにされたり、紹介されなかったりということもあるのです。
また、ギフティングでは投稿の内容を指定するなどのコントロールはできないため、場合によっては悪い感想を投稿されることもあります。
また、インフルエンサー側の商品理解が足りず、誤った内容を投稿される可能性もあります。そのため、商品をただ送るだけでなく、事前にしっかりと商品についての説明をしておく必要があります。
では次に、具体的なギフティングの実施方法について解説します。
ギフティングの実施方法
ギフティングの実施方法は以下のとおりです。
◆ギフティングの実施方法
② DMのテンプレートを作成
③ 個別にDM送付
④ 返信があったアカウントと個別に連絡
⑤ 商品の送付
⑥ 送付したインフルエンサーが商品を紹介した投稿をチェック
⑦ 効果測定
つまりは、インフルエンサーのリストを作成し、一件ずつDMでオファーを出していく工程となります。しかし、一件ずつアプローチをするのは大変です。
そこで、ギフティングを実施するための3つのポイントを解説します。
ポイント① キャスティングツールを利用する
一番難しいのは、ギフティングの実施方法①のインフルエンサーのリスト作成です。各SNSで手動で検索する方法もありますが、以下のようなインフルエンサーを抽出するツールを活用するのが効率的です。こちらは無料プランもあるので上手く利用しましょう。
参考(キャスティングツール):「インフルエンサーマーケティングデータベース iCON Suite」
このようなツールでは、各種SNSのインフルエンサーを、年齢や性別、フォロワー数や属性などで条件を絞って抽出できるので、効率的にインフルエンサーを探すことが可能になります。
他にも、このようにインフルエンサーを集めるツールは多く出ているので、一度情報収集してみてください。なお、インフルエンサーを探すにあたっては、先に述べたようにフォロワー数だけでなくエンゲージメント率にも注目することが重要です。
ポイント② ギフティングのDM依頼文
リストが出来たら個別にDMを送付しますが、このDMは非常に重要です。以下にテンプレート文を用意したので、参考にしてみてください。
○○様
いつもお世話になっております。
○○株式会社の○○と申します。この度、○○様が日ごろコスメに関して投稿されている内容を拝見し、その~~に深く感銘を受け、ご連絡を差し上げました。
現在弊社では、新製品△△の発売を控えております。
そこで、発売に先駆けて、コスメに対する質の高い投稿を続けておられる○○様に
ぜひとも新製品△△をお試しいただきたく存じます。
この新製品は~~という新しい成分を採用しており、多くの方におすすめできる商品です。詳しくは以下のURLからご確認いただけます。
商品URL: https:/・・・・もしよろしければ、本商品を無償でお送りさせていただきたいと思いますので、
率直なご感想などを○○様のアカウントよりご紹介いただければ幸いです。
(今回は、タイアップの依頼ではなく商品の無償提供となります)ご了承いただけるようでしたら商品を送付させていただきますので、よろしくお願いいたします。
本件に関するご質問やご要望がございましたら、遠慮なくお申し付けください。
このようなDMを送付しても、筆者の経験上、返信がくるのは5~10%程度ですので、リストアップは多めにすることが重要です。
ポイント③ ギフティングの成果を確認する
ギフティングするだけでは意味がありません。どれくらいのインフルエンサーが投稿をしてくれたのかを確認します。
リストに基づき、各インフルエンサーの投稿を手動で確認する方法もありますが、有料のツールを導入すれば、自社の投稿をしてくれたのかどうかを簡単に確認することができます。
まずは、キャスティングを実施した対象インフルエンサーの投稿を、一定期間チェックしてみましょう。
ギフティングであっても「PR投稿」しないとステマになる
ギフティングは無償で商品を提供するので、インフルエンサーとの契約は発生しません。そして、インフルエンサーも商品を紹介する義務はありません。
しかし、インフルエンサーが商品を紹介する際は、必ずハッシュタグによる「#PR」、あるいはキャプションに「広告」という表記が必要になります。それだけでなく「この商品は株式会社○○様より提供いただきました」という文言も必要となります。
これは2023年10月に施行された景品表示法の改正により、インフルエンサーは投稿した商品の企業との関係を明記する必要があるためです。
また、PR表記は以下のように一番上に記載することが望ましいとされています。
◆アフィリエイトプログラムを利用した広告を行う事業者の表示であることの明示に関する望ましい表示位置
引用(画像):消費者庁「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」より筆者が一部加工
このことを知らないインフルエンサーも多いので、商品を送付するインフルエンサーには、ステマ規制によるPR表記を徹底させる必要があります。
【重要】Instagramでは、インフルエンサーをビジネスパートナーとして登録する必要あり!
2022年にInstagramで、大きな変更点があります。それまではギフティングの際は、PRタグを適切に付けるだけでよかったのですが、規約変更により、タイアップやギフティングの際は、ブランドアカウント側で、インフルエンサーをビジネスパートナーとして承認した上で、タイアップ投稿をしてもらう必要があります。
もし、これを実行しなければ、Instagram側でブランドアカウントがシャドウバンされる可能性もあるので、Instagramでギフティング実行する場合は、インフルエンサーもブランドアカウントでビジネスアカウントとして登録する必要があります。
詳しいやり方は、以下の記事の「ビジネスアカウントへの切り替え方法」について詳しく記載されているので、Instagramでギフティングを行う際は、必ず試してみてください。
参考:株式会社inglow「【2023年最新】Instagramのタイアップ投稿について徹底解説!」
つまり、ギフティングをInstagramで実行する場合は、手間が増えてきているのです。
ギフティングは手間がかかるが、継続しやすい施策
ギフティングは手間がかかりますが、予算があまりかからないため継続しやすい施策と言えます。また、まだブランド力のない企業がUGCを生むために、相性の良いインフルエンサーを探して実施すべき施策です。
インフルエンサーはユーザーにとって親近感のある存在ですので、ギフティングが成功すれば多くのファンを獲得でき、必ず売上向上につながります。
新製品の開発やD2C事業を始めたばかりの企業であれば、マーケティング施策の一つとしてギフティングを試してみてはいかがでしょうか。
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