これからネットで稼ぐ企業が選ぶべき7つのECシステムとは?

「新規事業でECを立ち上げる!ECのシステムはどうするか?」
「ECのプラットフォームって何がいいの?」

企業が、実店舗のビジネスからEC事業を行うことを決定した場合、まずECシステムを決定しなくてはいけません。自社ECサイトから、楽天やAmazonなどのモールへの出店も含め、企業が選ぶべきECシステムは7つあります。

ECのシステムの選び方は、想定年間売上や、ECで実現したいことを基準に決めるべきです。なぜなら売上によって注文数が想定でき、注文数や実現したいことよって、システム連携が必要なのかがわかるからです。

本日はインターファクトリーで、シニアアドバイザーを担当している筆者が、ECシステムについて詳しく解説いたします。

7つのECシステムの売上・費用別のチャート

まずは、下記の図をご覧ください。ECシステムを売上と費用の観点でプロットしたチャートになります。

 

ECサイトで基準となる年間売上は「1億円」を超えると、注文件数の処理のために多くの人員を割いたり、ミスが目立ち始めるため、システム連携を行い業務を効率化していく必要があります。ECの売上が「50億円」を超えると、実店舗とECのデータ統合をして、オムニチャネルを実現したり、さらなるECの売上を目指すために独自チューニングが必要になります。

それでは各ECシステムについて解説いたします。

①予算に余裕のない個人事業者が最初に始めるべきは「無料のASP」

個人事業主が「独自の商品を持っている!」あるいは「地方の名産物を販売している!」という場合、商圏を全国に広げることができるためECサイトがあれば、ビジネスチャンスになります。

しかし、初めてのECのビジネスで売れる保証はありません。小規模事業者がECサイトのノウハウがない場合に、いきなり費用の発生するECシステムを使うより、最初は無料のASPを使いましょう。

有名な無料のASPには、下記の2つのシステムが有名です。

(1)BASE

(2)STORE.jp

どちらも機能に大差はありませんが、1万円以上の商品を扱うことが多い場合は、決済手数料が①BASEの方が若干ですが安くなります。

ECサイトの見た目も、いろいろデザインテンプレートが用意されており、その中から、気に入ったものを選ぶだけです。下記は、2018年8月にSNSやTVで話題になった「高知の財布」ですが、このサイトもBASEで作られています。

◆BASEを使ったECサイト「高知」

 

画像は高知のサイトより==>https://kochi.fashionstore.jp/

このECシステムを維持するためにかかる費用は、商品が注文された時の、決済手数料だけです。決済手数料の目安は3~4%程度です。

デメリットは、やはり独自のデザインにしたかったり、高級感を演出するには、無料のASPでは限界があります。では次に有料のASPを紹介いたします。

②小規模のEC運営や新規事業は月1万円くらいの「有料のASP」で始める!

「よし!オンライン事業部を立ち上げるぞ!」となった場合に、検討するべきECのシステムは、有料のASPです。なぜなら、企業がECサイトを始めるのですから、ある程度以上のデザイン性が求められます。そうなると無料のASPでは、デザインの自由度がありません。

しかし、月額1万程度(初期費用は10万円程度)のASPを選べば、デザインはある程度自由になりますから、大企業が使っても、違和感のないECサイトを作ることができます。

もちろん自社や外注のデザイナーを入れて、HTML・CSSで自由にデザインをすることができます。ただし、デザインできないページもあります。それは通称「カート周り」と呼ばれる、ECサイトのカートに関する部分です。ASPではここのデザインの改修はできません。

また、ECサイトが成長して、月間の問い合わせが100件を超えると、人的ミスが増え業務効率が下がります。業務を効率化するために社内システムとの連携を検討しなくてはいけませんが、これがASPでは不可能です。

③予算がある小規模企業は、集客力のある楽天やAmazonの「モール」に出店・出品!

ECサイトを作ることは難しいことではありません。それよりもECサイトに見込み客を集める「集客」が大変なのです。有名企業であれば、開設したばかりのECサイトでも集客を行うことは可能ですが、そうではない小規模企業は、集客が困難で、売上も伸びません。

その点、楽天やAmazonへの「モール」へ参加は、いきなり集客力があるプラットフォームで商品を売ることができますから、売上を伸ばすことができます。とはいえ、モール内には同業が多く、その中での競争がありますから、価格競争に陥りやすいデメリットがあります。

また、モールへの出店には費用がかかります、例えば楽天の1番安いプランでも「固定費19500円+販売手数料」がかかります。Amazonの小口向けのコースも「1注文あたり100円+販売手数料」です。一方でYahooショッピングのように、固定費がかからない「モール」もあります。※Tポイント原資やアフィリエイト原資が別途発生します。

モールのもう一つのデメリットは、企業ブランディングがなかなか出来ないことです。楽天のとある「スポーツ店A社」で、サッカーボールを買っても、ユーザーからは「楽天で買った!」という意識が強いからです。これが「出品型」のAmazonだと、その意識はさらに強くなり、ほぼ企業色を出すことができません。

モールで、1億円以上を売り上げるShopも多くあり、そういった店舗は、楽天であれば「楽天SEO」と呼ばれる、楽天内のSEOの最適化を図ったり、年に13回あるセールを上手く利用して、工夫に工夫を重ねています。

また「モール」で上手くいっている企業は、Amazonと楽天の両方に出店したり、平行して自社ECサイトをかまえるなど、マルチチャネル化して、見込み客へのリーチを広げています。

④ライセンス費用が0円のオープンソースを使ってECサイトを作る!

ASPやパッケージ、クラウドECを使うと、システム利用料が発生します。モールに出店・出品しても固定費が発生ます。しかし、ライセンス費用0円のオープンソースを使って、ECサイトを作ることができれば、費用はサーバー代だけの最低限に抑えることができるシステムです。

また、カスタマイズが可能なシステムですから、技術力があれば、システム連携や複雑なカスタマイズも行うことができます。

オープンソースの注意点は、セキュリティーです。オープンソースはプログラムコードが開示されていることと、世界中の事業者や個人が使っていることから、ハッキングの対象になりやすいデメリットがあります。

それを防ぐためには、最新モジュールを手に入れて、すぐにインストールし、システムを最新に保たなくてはいけません。しかし、カスタマイズを入れると、システムを最新に保つことはできません。ここにオープンソースの弱点があります。

また、オープンソースをベースにして、新しいパッケージとして販売するベンダー企業がいますが、大きな障害があった場合、オープンソース提供元とカスタマイズしたベンダー側のどちらに問題があるのか、サイト運営者には見分けがつきません。

仮にオープンソース側に障害の原因があった場合「我々、ベンダー側のバグではありません」というケースが実際あります。こういう結果にならないように、契約書を事前に確認しましょう。

⑤年商1億円以上の中・大規模のECシステムにはカスタマイズが必須!「ECパッケージ」

年商が1億円を超えるようになると、ECシステムはECパッケージかクラウドECを検討するステージに入ります。月の注文数が100件を超えると、業務効率化されたシステムを使わないと、仕事が回りません。そのためには、基幹システムや物流システムとECサイトをシステム連携を行う必要があるのです。

ECパッケージとは、もともとECとして必要な機能が実装されているパッケージをベースに、個別にカスタマイズを行って、システムをローンチします。そのため、初期費用が1000万円~からが相場となりますが、カスタマイズを行わない場合は300万円程度でのリリースも可能です。

月次費用は10万円からが基準で、オプションやサイト規模により費用が上下します。

中・大規模のECサイトの主流はECパッケージです。フルスクラッチに比べると、開発期間が短く、費用も安いので、メリットが大きいです。そのため昨今はフルスクラッチでECを作るのは、超大手企業ばかりになりました。

ECパッケージの弱点は、システムが古くなることです。システムをローンチした頃には、最新のセキュリティー要件を備えていても、3年もたつと時流から遅れます。それを防ぐために、カスタマイズをさらに追加で行うと、余計な処理が増え、システムのパフォーマンスが落ちます。

このため、ECパッケージを導入する企業は、3~5年で、システムをリニューアルする必要が発生します。そのため、この市場は、最近はシステムをリニューアルしなくて済む、クラウドECに勢いがあります。

⑥ASPとパッケージの良いとこどり!システムが古くならない「クラウドEC」

中・大規模のECプラットフォーム市場では、最も勢いのあるのが、クラウドECです。クラウドECとは、ASPとパッケージの良いとこどりをしたECシステムで、ASPのようにシステムが常に最新にアップデートされ、かつパッケージのようにカスタマイズも可能です。

ですから、毎週システムが更新されるため、システムが陳腐化することがなく、二度とシステムリニューアルをする必要がありません。費用感はECパッケージと同程度ですが、システムが自動更新され、リニューアルが必要ないため、中・長期的にみればクラウドECの費用対効果は高いです。

しかし、クラウドECのデメリットはシステムがブラックボックスであることです。システムを自社で全て把握したい企業や、オンプレミスが必須である企業には全く向いていません。

⑦超大手企業が使うECプラットフォームの「フルスクラッチ」

ECシステムで、最も自由度が高く、その分費用が高くなる方式はゼロからECを作るフルスクラッチです。10数年前でしたら、ECサイトを作る方式は、この方式しかありませんでした。

しかし、今はECサイトを作る方法は多数あり、中・大規模のECシステムの主流は、パッケージやクラウドECです。なぜなら費用がはるかに安く、開発期間も半分程度で済むからです。クオリティもフルスクラッチと遜色がありません。

では、フルスクラッチをECシステムとして選ぶ意味はあるのでしょうか?それは大手企業が、ECサイトの売上を極限まで高めるために、自社の開発チームでECシステムを内製する場合に力を発揮します。

パッケージベンダーや、クラウドECなど外注先にカスタマイズの開発を依頼すると、どうしても要件を合わせたり時間がかかります。しかし、開発チームが自社にいる場合、どんどんカスタマイズを重ねることが可能です。

つまり、内製でWEBマーケティングの最大化を図るために、フルスクラッチはPDCAを高速で回すには最も優れたプラットフォームなのです。

また、ECの要件とは異なる、オークションや予約システム、あるいは自社のCMSと連動させるような複雑な要件の場合は、パッケージやクラウドECよりも、フルスクラッチの方式の方が拡張性があり、対応させやすいメリットがあります。要件があまりに複雑な場合はフルスクラッチでECサイトを作ることになるでしょう。

ただし、フルスクラッチの弱点もシステムが古くなることです。カスタマイズを重ねると不要な処理がどうしても増えてしまいますから、3~5年でシステムのリニューアルを検討しなくてはなりません。

ECシステムのまとめ

ECシステムは、年間売上で決めると、どのプラットフォームを使うべきかが、わかります。1億円未満であれば、ASPかモールになりますし、1億円を超えると、パッケージやクラウドECが基準になります。

ただ、いずれの手法も予算があれば、ECサイトを作ることは難しくありません。ECで困難なのは集客です。その点は、最初から集客が可能なモールは魅力的ですが、モール内の競争も激しくカンタンではありません。

一番大切なのはECのノウハウのある社員を採用と育成です。社内でECのノウハウを溜めるコツは、いろんな施策を積極的に行い、失敗と成功の体験を重ねることです。保守的な担当はEC担当には向いていません。好奇心が強いメンバーを集めましょう。

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