TikTok Shopとは、TikTokアプリ内で商品を直接販売できるEC機能です。ユーザーは動画やライブ配信を見ながら、そのまま商品ページへ移動して購入できるため、エンタメと買い物がシームレスにつながっています。販売者は自社商品を出品し、動画やライブで紹介することで視聴者を購買へと誘導できます。従来のSNS広告とは異なり、TikTok内ですべてが完結する点が特徴です。
2025年6月には、日本でもTikTok Shopのサービスが正式に開始される予定です。これにより、日本のユーザーもTikTokアプリ内で商品を購入できるようになります。また、販売者はTikTokを通じて商品を販売しやすくなり、新たなビジネスチャンスが広がることが期待されています。
この記事は、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、国内上陸予定の「TikTok Shop」について詳しく解説します。
TikTok Shopでどのように商品を販売するのか?4つの方法を解説!
TikTok Shopでは、商品を販売する方法が4つ用意されておりますので、以下の表にまとめてみました。
◆TikTok Shopで商品を販売する4つの方法
方法 | 商品販売場所 | 概要 |
方法① LIVE shopping | ライブ画面 | ライブ配信中に商品をリアルタイムで紹介・販売する形式。視聴者はその場で購入可能。 |
方法② Shoppable videos | 動画内の商品タグ | 投稿した動画に商品リンクを埋め込み、視聴者は気になったタイミングで商品ページへ移動し購入できる。 |
方法③ Shop Page | プロフィールページ | 出店者のプロフィールに設置されたショップページから、取り扱い商品一覧を閲覧・購入できる。 |
方法④ Shop Tab | TikTok専用マーケットプレイス | TikTokアプリ内の「Shop」タブから、ジャンルや人気商品を一覧で探して購入できる場。 |
TikTok Shopでは、商品登録はTikTok Shopの中で行うため、自社ECサイトにページが遷移しません。そのためユーザーから見ると、他のアプリやページに遷移せずに購入まで進めるので、離脱が生まれにくいことが特徴です。
それでは、販売方法について一つずつ解説します。
方法① LIVE shopping

出典:TikTok Shop
ライブ配信を活用して商品を販売する方法です。配信者はその場で商品の魅力を紹介しながら、視聴者とリアルタイムでコミュニケーションを取ることができます。視聴者は気に入った商品を見つけた瞬間に、画面上のリンクからすぐに購入へ進めるため、「衝動買い」が期待できます。
特に化粧品やアパレルなど、使い方や質感をライブで伝えられる商材と相性が良く、もともとECサイトは実店舗のように商品の良さを伝えにくいデメリットがありますが、TikTok Shopのライブではそれを補完できます。
方法② Shoppable videos

出典:TikTok Shop
TikTok上に投稿したショート動画の中に、商品リンク(タグ)を埋め込んでおく方法です。
ユーザーが動画を見て「欲しい」と思ったタイミングで、タグをタップすることで簡単に商品ページへ移動できます。自然な流れの中で購買意欲を喚起できるため、広告っぽさを感じさせずに商品の魅力を伝えることが可能です。日常使いの商品やストーリー性のある商材に向いています。
方法③ Shop Page

出典:TikTok Shop
出店者のプロフィール画面内に「ショップページ」を設ける方法です。
ここでは取り扱い商品を一覧で掲載でき、ECサイトのように整然とした構成で買い物が可能になります。動画やライブで商品を紹介した後、「詳しくはプロフィールから」という導線を使うことで、ユーザーを自然にショップページへ誘導できます。リピーター獲得やブランドイメージの構築にも効果的です。
方法④ Shop Tab

出典:TikTok Shop
TikTokアプリ内に用意されている「Shopタブ」は、ユーザーが能動的に商品を探すマーケットプレイスです。
ジャンル別や人気順に商品が表示されるため、新規顧客との接点を広げやすくなります。Instagramの「ショップ機能」に近い感覚で、TikTok上での検索行動から直接購買へつなげられる場として期待されています。しっかりとした商品ページ設計と競争力のある価格設定が重要です。
TikTok Shopの特徴は、TikTok Shop内に商品を登録するためページ遷移が発生しないこと
TikTok Shop最大の特徴は、商品登録から購入までの一連の流れがすべてTikTokアプリ内で完結する点にあります。従来のSNSであれば、ユーザーが商品に興味を持っても、一度別のECサイトに飛ばされる「ページ遷移」が必要でした。このひと手間がユーザーの離脱を招く大きな原因となっていたのです。
しかし、TikTok Shopでは動画を見ながらその場で商品をタップし、購入手続きまで完了できる設計になっているため、ユーザー体験が非常にスムーズです。まさにシームレスな購買体験を実現しており、衝動買いを誘発しやすい設計と言えます。
また、アプリ内に留まったまま決済まで完了するという流れは、広告的な導線というよりも「コンテンツの延長線上にある買い物」という新しい消費行動を生み出しています。エンタメとECが融合したTikTokならではの強みと言えるのではないでしょうか。
TikTok ShopはECの平均購入単価の5,000円以下の商品と相性が良い!その理由とは?
TikTok Shopでは、ECの平均購入単価(※)でもある価格帯が5,000円以下の商品が売れやすいのではないか?と筆者は考えます。
※出典:ネットショップ担当者フォーラム「購入最多は『日用品』、購入金額は7割が5000円未満。男女別の利用傾向や利用頻度などをまとめたEC利用調査」(2023年6月28日)
その最大の理由は「衝動買い」との相性の良さにあります。TikTokは、ユーザーが気軽にエンタメ感覚で動画を視聴するプラットフォームであり、日常の中でなんとなく見ていたという文脈から、思わず「買っちゃった!」につながりやすいのです。
さらに、TikTokは「もともと知らなかった情報と出会う場所」として使われているのもポイントです。つまり、「それ知らなかった!」と思わせるような意外性のある情報や商品にこそ、ユーザーは強く反応します。そのため、見た瞬間に気になってしまうようなアイデア商品や、便利グッズ、プチギフト的な雑貨など、手頃な価格帯の商品は特にエンゲージメントを得やすくなっています。
また、TikTok Shopでは動画を見ながらその場で購入まで完結できるため、購入までの導線が非常にスムーズです。わざわざ外部サイトに移動して検討するという手間もなく、ユーザーはそのままの勢いで購入に至ることができます。
このように、TikTok特有の「偶然の出会い」と「その場で買える導線設計」、そして「価格的な心理的ハードルの低さ」を掛け合わせることで、5,000円以下の安価な商品が高い成果を出しやすくなっているのです。
TikTok Shopが向いている4つのジャンル
TikTok Shopは、すべての業種にとって万能な販売チャネルではありませんが、特に成果が出やすいのは「視覚的な魅力があり、思わず試してみたくなるような商品」を扱う企業です。
具体的に向いているのは、以下のような4つのジャンルです。
ジャンル① アパレル系(特にレディースファッションや韓国系ファッション)
動画やライブ配信で着用シーンを見せることで、コーディネートのイメージが伝わりやすく、視聴者の「欲しい!」を直感的に刺激できます。トレンドに敏感な若年層との相性も抜群です。特に3,000円以下のプチプラアイテムは、衝動買いされやすい傾向があります。
ジャンル② コスメ・スキンケア
使用感やビフォー・アフターを映像で伝えることで、短時間で商品の効果を訴求できます。TikTokユーザーは「知らなかったけど、試してみたい」という気持ちで購入することが多く、韓国コスメやバズり系アイテムなど、話題性のある商品と非常に相性が良いです。
ジャンル③ 日用品・生活雑貨メーカー
「こんな便利なモノあったんだ!」と思わせるアイデア商品や収納グッズ、キッチン用品などは、TikTokの発見性とぴったりマッチします。実際に使っているシーンを見せるだけで、視聴者の共感を呼び、購入へとつながります。
ジャンル④ お菓子・スイーツ系ブランド
「食べてみた」系動画は反応が良く、パッケージの可愛さやユニークさも伝わりやすいです。またスイーツ・お菓子は価格が5,000円未満の商品も多いため「私も食べてみたい!」と思わせることで、売上を上げやすいジャンルと言えます。
TikTok Shopのリスクはアルゴリズムの変更で売上に大きな差が出ること!
TikTok Shopは、エンタメ性と購買体験が一体化した画期的な販売チャネルですが、その一方で大きなリスクも抱えています。それが「アルゴリズムへの過度な依存」です。
TikTokでは、どの投稿が誰に表示されるかをアルゴリズムが決定しています。つまり、商品の露出や売上の多くが、TikTokの表示ルールに左右されるのです。特にTikTok Shopにおいては、商品動画やライブ配信がどれだけ「おすすめ欄(For You)」に載るかが売上に直結します。
海外の分析記事(※)によれば、TikTok Shopのアルゴリズムは定期的に調整されており、ある日を境に商品表示回数が急減し、売上が激減するケースも報告されています。実際、Reddit上でも「アルゴリズム変更があったわけでもないのに、売上が一気に落ちた」という出品者の声が見受けられます。
※海外のTikTok Shop分析記事:EVA.guru「Navigating TikTok Shop’s Algorithm: Tips for Boosting Visibility」
このように、TikTok Shopで成果を出していたとしても、アルゴリズムの変更ひとつでパフォーマンスが崩れるリスクがあるということは、常に意識しておく必要があります。
リスクを最小限に抑えるためには、動画の種類を多様化したり、エンゲージメントを意識した投稿設計にしたりと、常に変化に柔軟な運用が求められます。また、自社ECやAmazonなど他のチャネルと併用し、TikTokに依存しない体制を構築することも重要です。
TikTok ShopのKPIについて
では、TikTok ShopのKPIにはどのようなものがあるのでしょうか。海外の分析サイトを参考に、以下の表にしてみました。
◆TikTok ShopのKPI(海外のサイトを参考に作成)
KPI名 | 定義 | 重要性 | 目安(目標値) |
---|---|---|---|
売上数 & 収益 | 特定期間に販売された商品数と得られた売上合計 | 財務的な成果と事業の成長度を把握 | 月次・四半期で安定成長を目指す |
コンバージョン率(CVR) | 商品閲覧後、実際に購入に至ったユーザーの割合 | 商品や動画の訴求力を評価 | 小規模:2〜4% 中〜大規模:4〜6% |
クリック率(CTR) | コンテンツ閲覧後、商品リンクがクリックされた割合 | 動画や投稿の誘導力を評価 | 1〜3% |
CTOR(Click to Order) | 商品リンクをクリック後、実際に購入された割合 | 販売ファネルの効率性を確認 | 3〜5% |
総取引額(GMV) | 一定期間内に売れた商品の総販売額 | 売上のインパクトと規模を把握 | 特になし(事業規模に応じて) |
Watch GPM | 視聴1回あたりのGMV(収益) | 動画コンテンツの収益性を評価 | 数値改善を定期的にチェック |
参考にした海外のサイト:TikTok Shop Success Metrics: What to Track (and Why it Matters)
TikTok Shopを効果的に運用するためには、感覚ではなく数字で成果を把握することが重要です。TikTok Shopは単なる販促ツールではなく、データに基づく改善が必須のECプラットフォームです。KPIを正しく理解し、定期的に見直すことで、短期的な売上だけでなく、中長期のブランド価値も高めることが可能になります。
まとめ
TikTok Shopが日本でリリースされれば、国内のEC業界やSNSマーケティングに大きなインパクトを与えることは間違いありません。
特に、アパレル・コスメ・日用品などの低価格かつ視覚的な訴求力のある商品を扱う企業にとっては、新たな販売チャネルとして大きな可能性を秘めています。
重要なのは、「TikTokで売る」ことを目的にするのではなく、「TikTokで見つけてもらい、共感を得て買ってもらう」という視点を持つことです。バズや一時的な成果に頼るのではなく、KPIを適切に追いながら、コンテンツ・商品・販売導線を最適化し続ける姿勢が求められます。
今後、日本版TikTok Shopがどう展開されていくのか、そしてどのように活用していくのか。事前準備を進めておくことで、リリース初期から先行者利益を狙うことも十分に可能です。今からしっかりと理解を深め、戦略を練っておきましょう。
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