テレビ業界を目指す方が知っておくべき市場概況や平均年収など

かつて就職先の人気企業には、必ずテレビ局が入っておりました。しかし、昨今はインターネットやスマートフォンの普及により、テレビの視聴率は下がり、若者のテレビ離れが加速しております。

リアルタイムでテレビを見る需要が下がり、視聴率が落ちる中、在京民放キー局は事業の多角化を進めておりますが、大手キー局は依然としてテレビ事業の売上貢献度が40〜70%程度と高く、そして資本の少ない地方局には、在京民放キー局のように事業の多角化は困難であり、業界として厳しい局面と言わざるを得ません。

しかし、そんな中でも給与所得は高く、新卒就職先としては高い人気があります。

本日はインターファクトリーで、シニアアドバイザーを担当している筆者がテレビ業界について詳しく解説いたします。

放送業界の市場規模は3.5兆円

データ引用元:総務省|令和5年 情報通信に関する現状報告の概要

まずは、放送業界の市場規模の推移について見てみましょう。

◆放送産業の市場規模推移(売上高集計)

放送産業の市場規模の推移(2008-2021)

放送業界の市場規模推移は、多少の上下に触れながらも横ばいで推移してきましたが、2020年度は新型コロナウイルス流行の影響を受け、大手各社の業績が軒並み悪化しました。コロナ禍でスポンサーの売上が落ち、広告宣伝予算が大きく削減された結果、CM収入が大幅に減少したことが一番の原因と見られております。

◆放送産業の市場規模の内訳

放送産業の市場規模内訳(2013-2021)単位:億円

テレビ業界は、NetflixやAmazon Prime、Disney+等の見放題定額サービスのネット配信業者への対策が必須となってきており、2015年10月より、在京民放キー局5社と在阪民放5社および広告代理店4社が共同出資した株式会社TVerが、民放公式の見逃しテレビ番組サービス「TVer」を開始し、2019年にはNHKも参加するなど、好きな時間にスマホでテレビを見るサービスを展開しております。

好調のTver、月間ユーザー数は3,500万MUB超え

サービス開始依頼Tverの成長は著しく、Z世代を取り込んで売上を高めており、2024年1月の月間動画再生数は4億回を超え、月間ユーザー数も3,500万MUBを突破し、過去最高記録を更新しております。

◆TverのMUB(月間ユニークブラウザ数)の推移

TverのMUB推移

グラフ・データ引用元:TVer、2024年1月の月間ユーザー数3500万MUBを達成!月間再生数は4億回と過去最高記録を更新(Tver+)

筆者もTverアプリを利用して視聴していますが、ドラマ、バラエティ、スポーツや特番など自分の好きなジャンルの番組を、特に会員登録などもなくサクッと視聴できるため、タイパ・コスパを重視する現代の若者の嗜好性に非常に合致したコンテンツだと感じます。

【ベスト29社】テレビ業界 売上高ランキング(2022-2023年)

ランキング表は、下記のデータを参照し作成いたしました。下記のリンク先もあわせてご覧ください。

データ引用先:テレビ業界の動向・現状・ランキング等を研究-業界動向サーチ

順位 企業 売上
1 フジ・メディア・HD 5,356億
2 日本テレビHD 4,139億
3 TBSHD 3,681億
4 テレビ朝日HD 3,045億
5 テレビ東京HD 1,509億
6 スカパーJSAT HD 1,211億
7 サイバーエージェント 1,025億
8 朝日放送グループHD 870億
9 WOWOW 771億
10 TOKAIホールディングス 345億
11 中部日本放送 327億
12 新潟放送 231億
13 RKB毎日HD 227億
14 テレビ西日本 183億
15 KBCグループHD 168億
16 スペースシャワーネットワーク 153億
17 ブロードメディア 130億
18 日本BS放送 122億
19 長崎放送 84億
20 RSKホールディングス 80億
21 信越放送 68億
22 東北放送 67億
23 四国放送 52億
24 北日本放送 52億
25 山口放送 52億
26 青森放送 48億
27 秋田放送 40億
28 北陸放送 38億
29 アイビーシー岩手放送 37億

1位のフジ・メディア・HDは、フジテレビの視聴率の低下が話題になるなか、予想外に思われた方もいるかもしれませんが、子会社のサンケイビルが都市開発や観光事業で売上に貢献しているなど、在京民放キー局は事業の多角化に乗り出しているのです。

4位のテレビ朝日は、サイバーエージェントの「AbemaTV」にコンテンツを提供するなど、インターネット時代でテレビの在り方を模索しております。

6位のスカパーJSTA HDは、虎の子のコンテンツのJリーグ放映権を、イギリスのスポーツ中継サービスの「DAZN(ダゾーン)」に奪われ、現在はJリーグ以外のサッカー中継に力を入れているものの、影響は避けられず、今後の動向に注目が集まっています。

やはり在京キー局の上位4社が突出しており、今後もしばらくは不動と考えられますが、テレビ東京HD含む5位以下においては、サーバーエージェントなど快調に売り上げを伸ばしている点を見ても、次回ランキングでの入れ替わりもありそうです。

テレビ業界の平均年収は1,000万円くらい?

テレビ業界の年収は高く、1,000万円程度と思われます。中でも、TBS、朝日、フジは平均年収が1,400万円を超えるなど、年収がかなり高い業界ですが、一方で地方局や、制作会社の平均年収は決して高くはありません。

下記の記事によると、テレビ局の社員が給料が高い理由は、東京ディズニーランドの構造と似ており、東京ディズニーランドを運営する9割のスタッフがアルバイトであるため社員の給料を高くすることができます。

なぜテレビ局は利益率が低くても、社員の給料が1300万円超なのか?

つまり、テレビ局が高収入なのも、同じ構造であり、テレビのコンテンツを作る大部分の方は、下請けの制作会社であり、テレビ局の社員は全体の比率では少なく、高収入を得られる構造になっているのです。

とはいえ、テレビ業界がデジタルテクノロジーを上手く取り入れて、ビジネスモデルを転換させていかないと社員の年収もこのまま高い水準を維持できるかはわかりません。

テレビ業界の将来性や課題

ブロードバンドの普及により高速回線によるインターネットが一般化したことと、さらにスマートフォンが普及したことで、10代や20代を中心にテレビ離れが加速しています。

本来はブロードバンドやスマートフォンの普及は、いつでもどこでもユーザーがテレビを視聴できるデバイスや環境が整うことから、テレビ業界としてもチャンスだったのですが、上手くビジネスモデルを転換することができておりません。

テレビ業界の収益の柱の広告収入が落ちているのに売上がそこまで落ちていないのは、不動産事業や都市開発事業などの収益の多角化に取り組んでおり、放送収益の悪化をカバーしているからです。

テレビ業界には、多くの魅力的なコンテンツがあり、これはネット業界にはない大きな強みですが、それを活かすためのプラットフォームの普及が課題になります。TVerという民法局が連合して作ったアプリも、コンテンツの配信期限があったり、番組視聴の制限があったりとユーザー目線で作られておりません。

今後は、番組提供のプラットフォームの普及させることが課題になるでしょう。

他業種からのテレビ業界への転職は可能か?

テレビ業界は、全産業の中でも花形の業界ですが、在京民放キー局ではなく、制作会社であれば、未経験者の採用も通年で行われています。

また、今後はテレビ業界も、さらにネット配信に力を入れていくことが予想できるため、インターネット業界のノウハウを持っている人にはチャンスが大きいでしょう。

また、インターネット業界に限らず、他業種展開を行っておりチャンスは大きくなってきております。

まとめ!こんな方がテレビ業界に向いている!

テレビ離れが進んでいるとはいえ、日本では圧倒的なメディアであることには変わりはなく、その傾向は今後もしばらく続くでしょうから、やりがいがある業界です。その反面、労働環境は良いとは言えず、多忙な業界であることも間違いありません。

そんな中で、テレビ業界に向いている人は、オフィスでもくもくと仕事をするよりは、フットワークが軽く、コミュニケーション能力が高く、いろんな人と話すのが大好きだ!という方に向いている職業です。大変な仕事ですが、やりがいもあり、在京民放キー局に就職できれば、高い年収も見込めます。

ただし、超人気職業でもありますから、入社するのは容易ではありません。テレビ業界にこだわりがある方は、制作会社も視野に入れてみましょう。また、繰り返しですが、昨今はインターネット業界も、テレビ業界に食い込んでおり、インターネット業界で、動画コンテンツに力をいれる企業も視野にいれると良いでしょう。

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