受発注担当者が知っておくべき「EDI」の基礎知識と4つの課題

EDIとはElectronic Data Interchange(電子データ交換)の略で、取引先同士が共通のデータ形式を用いてシステム間をつなぎ、注文書や請求書、出荷通知書などのビジネス文書を電子的にやり取りする仕組みです。

卸売業者やメーカーでは、取引先企業との間で多くの受発注処理が発生するため、従来は紙や電話、FAXで行っていた業務をEDIによって効率化してきました。

しかし、現在のEDI運用には見直すべき課題もあります。例えば、従来のレガシーEDIは固定回線や専用機器を前提としてきましたが、INSネットのディジタル通信モードは2024年1月から地域ごとに段階的に終了しており、補完策も2028年12月31日で終了予定です。

これを踏まえたEDIの主な課題は、以下の4つが挙げられます。

① レガシーEDIの見直しが必要(2024年問題)
② 規格が統一されていない
③ Web-EDI導入の場合も取引先が多いと効率が悪くなる
④ 担当者依存による属人化のリスク

そのため、単にEDIを導入するかどうかではなく、レガシーEDIからの移行をどう進めるか、流通BMSやWeb-EDIをどう使い分けるか、そして属人化を防ぎながら継続的に運用できる仕組みをどう整えるかが今後は重要になっています。

本日は、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、EDIについて詳しく解説します。

EDIとは企業間での受発注の仕組みを自動化したシステム

それでは、具体的にEDIの仕組みを解説します。下図をご覧ください。

◆電話やFAXによる受発注処理

従来の受発注処理

出典(画像):筆者作成

卸売業者やメーカーから商品を仕入れる場合、頻繁に受発注処理が行われますが、人手を介すために、大量の受発注処理を行う場合はヒューマンエラーが発生しやすくなってしまいます。また、人手であるため営業時間中しか受発注処理を行うことができません

もう20年以上前の筆者の話になりますが、ある会社で書類作成のアルバイトをしていたことがあります。当時、書類のやりとりはFAXが中心でした。ある時、社員が別の取引先にFAXしなければならない請求書を誤送信してしまった際に、同一商品でも取引先ごとに単価が異なる商品の請求書だったため、誤送信された取引先を怒らせてしまい、大問題になったことがありました。

まさに筆者が体験した例のように、書類も取引先によって詳細が異なり、手作業で処理することになるとミスが発生しやすくなるのです。

◆EDIによる受発注処理

EDIの受発注処理

出典(画像):筆者作成

しかし、取引先同士に同じ規格のEDIが導入されていれば、受発注処理を自動で行うことができます。また、EDIが自社の基幹システムと連携していれば、業務効率が極めて高くなるのです。

EDIを知るにはEDIの歴史を知る

EDIが生まれたのは1970年代です。下表をご覧ください。

◆EDIの歴史

EDIの歴史について

出典(表):筆者作成

当初は、EOSから生まれたEDIですが、処理できる情報量も増え、小売業の多くで利用されるようになりました。しかし、その多くが古いEDIの規格であるためインターネット回線を前提に構築されておらず、画像のやり取りができないなど、情報量に制限があります。

それでは次にEDIの規格について詳しく解説します。

EDIの規格:レガシーEDIと流通BMSの違い

EDIで用いられる代表的な方式として、以下のような規格が存在します。

・レガシー手順
・流通BMS

レガシー手順とは、電話回線やISDN回線を前提に運用されてきた従来型EDIの通信手順です。代表例であるJCA手順は1982年に制定され、その後も長く利用されてきましたが、モデムなどの専用機器や通信制御用ソフトが必要で、回線や機器の維持にも負担がかかります。

さらに、INSネットのディジタル通信モードは2024年1月から地域ごとに段階的に終了しており、補完策も2028年12月31日で終了予定のため、従来型EDIを前提とした運用は見直しが必要になっています。

それに対して、流通BMSインターネット回線を前提に利用する流通EDI標準です。

GS1 Japanでは、流通BMSを「消費財流通業界で唯一の標準となることを目標に策定している、メッセージと通信プロトコル/セキュリティに関するEDI標準仕様」と位置づけています。単に新しい規格というだけではなく、現在の流通EDIにおける標準として捉えるのが適切です。

ただし、導入コストが高いこともあり、すべての企業がすぐに流通BMSへ移行できるとは限りません。実際には、取引先や自社のシステム事情によって、Web-EDIが利用されているケースも多くあります。

流通BMS協議会でも、Web-EDIは流通BMSの導入が困難な企業にEDIを普及させるための手段であり、流通BMSのS-S型やC-S型を補完する位置づけとしています。

Web-EDIは、ブラウザの画面を通じてデータを入力したり、必要なファイルをアップロード・ダウンロードしたりする形で利用される方式です。規格に準拠はしておらず、決まった企業間取引に使われるインターネットを利用したEDIです。インターネットが利用できるPCとブラウザがあれば専門機器が不要で、コストを抑えて導入できるメリットがあります。

EDIの4つの課題

EDIの4つの大きな課題を順に解説します。

課題① レガシーEDIの見直しが必要(2024年問題)

従来のEOSやEDIで使われてきたレガシー手順は、現在見直しが必要な段階に入っています。背景にあるのは、NTT東日本・西日本によるINSネットのサービス終了です。

業務用端末で利用されてきた「ディジタル通信モード」は2024年1月から地域ごとに段階的に終了しており、INSネット自体も2028年12月31日で提供終了予定となっています。そのため、従来型の回線や機器を前提としたEDI運用を続けることは、今後ますます難しくなっていきます。

そのため、早急にEDIを以下のどちらかのインターネット網に対応した規格(あるいはサービス)に乗り換える必要があります。

・流通BMSに準拠したEDI
・Web-EDI

大手小売業であれば、すでに多くの会社が流通BMSに準拠したEDIに対応しております。しかし導入費用がかかるため、中小企業や小規模企業は導入費用の安いWeb-EDIを導入する企業が多い傾向にあります。

課題② 規格が統一されていない

以下は、流通BMS協議会(流通システム標準普及推進協議会) のパンフレットからの引用です。

EDIのようなインフラは標準化するものであって、差別化や競争優位性を競うものではありません。流通業界の多くの企業が標準EDIを採用することによって取引コストを下げるとともにスムーズな情報連携を実現し、生活者に対して付加価値の高いサービスを提供する「全体最適」の関係を築くことができます。

引用:流通BMS協議会「受発注の標準EDI 流通BMS®」(2018年2月版)

つまり、EDIの規格とは競合優位性を競うものではなく、業界全体が同じ規格を利用することで、一つの規格に対応するだけで全ての取引先とデータをやり取りできるようにするものなのです。しかし、以下のようにさまざまな規格があるため、業界全体で考えると非効率的です。

◆規格

・全銀手順
・JCM手順
・Web-EDI

2024年1月以降は、レガシー手順がなくなるため、流通BMSかWeb-EDIの2択となりますが、業界の標準規格である流通BMS導入には費用がかかるため、Web-EDIを利用する企業も少なくありません。

課題③ Web-EDI導入の場合も取引先が多いと効率が悪くなる

Web-EDIはインターネット環境のPCがあれば手軽に導入できるというメリットがありますが、Web-EDIから必要なデータをダウンロードして、基幹システムにデータ入力する際は手作業が発生します。1~3社程度であれば30分ほどで終わるような作業ですが、取引先ごとにWeb-EDIが増えると、各Web-EDIの使い方も異なります。

そして、取引先や取引量が増えるとヒューマンエラーが発生しやすくなります。EDIは受発注にかかわる処理のため、受発注ミスをすると取引先を巻き込んで大きな迷惑をかけることになり、Web-EDIで多くの取引先を持つ場合は業務効率が悪くなります

そのため、Web-EDIを使う場合は、特定の取引先で、かつ取引量が少ない場合は、コストがかからず有効な手法なのですが、Web-EDIを使う取引先が増える場合は、RPAを使って業務を自動化するなど、受発注処理のミスを防ぐようにしなくてはなりません。

課題④ 担当者依存による属人化のリスク

EDIの運用には、システム設定やファイル形式、業界特有の運用ルールなど、取引先ごとの細かなノウハウが必要となる場面が少なくありません。特に、古いレガシーEDIや独自仕様のWeb-EDIを利用している企業では、特定の担当者しか手順を把握していない「属人化」の状態になりやすい傾向があります。

属人化が進むと、担当者の退職や異動時に引き継ぎが困難になり、EDI運用に支障をきたす恐れがあります。また、業務全体を可視化しにくくなるため、将来的な自動化や基幹システム連携の妨げにもなります。

そのため、EDI運用は業務マニュアルの整備や手順の標準化を行い、複数の担当者で対応可能な体制を整えておくことが重要です。業務の属人化を防ぐことは、EDIの安定運用において見落とされがちな、しかし極めて本質的な課題のひとつです。

今後のEDIは「流通BMS」か「Web-EDI」が中心

今後のEDI運用では、国内の消費財流通領域においては、「流通BMS」への対応、もしくは取引先が指定する「Web-EDI」への対応が中心になります。

流通BMSは、消費財流通業界における標準EDIとして整備・普及が進められてきた仕様であり、GS1 Japanの調査では、導入企業数は2025年6月1日時点で推計21,600社以上とされています。大手小売企業や大手卸売企業との取引では、流通BMSを前提にした対応が基本になるケースが多いといえるでしょう。

引用:GS1 Japan「第28回 卸・メーカーの流通BMS導入企業数推計調査結果まとまる」(2025年7月1日発表)

一方で、すべての取引先が流通BMSに対応しているとは限らないため、実務ではWeb-EDIの利用を求められることも少なくありません。

そのような場合は、Web-EDIを個別の仕組みとして場当たり的に運用するのではなく、できるだけ流通BMSの項目体系に沿って設計することが重要です。

Web-EDIで独自のデータ項目や独自ルールを増やしてしまうと、取引先が増えるほど運用が複雑になりやすくなります。そのため、取引先の都合でWeb-EDIを利用する場合でも、可能な限り流通BMSの枠組みに合わせておくことで、将来的な標準化や運用負荷の軽減につなげやすくなります。

EDI以外の選択肢としてBtoB-ECを検討する

EDIは、企業間の受発注データを正確かつ効率的にやり取りするための仕組みとして有効です。一方で、役割の中心はあくまで受発注業務の標準化・効率化にあり、ECサイトのように画面上で新製品やキャンペーンを訴求したり、取引先との接点を広げたりするための仕組みは基本的に備えていません。

このような点を踏まえると、受発注の仕組みを見直す際には、EDIだけでなくBtoB-ECも選択肢として検討する価値があります

BtoB向けのECサイトは、単なる受注窓口ではなく、営業・販促にも活用できる点がEDIとの大きな違いです。例えば、取引先ごとの管理画面やトップページに、新製品情報やキャンペーン、お知らせなどを掲載できます。

◆BtoB-ECで実現できること

・新製品やキャンペーンの告知
・バナーや特集ページによる販促
・売上分析や顧客分析
・メルマガや外部ツールとの連携施策
・見積機能や受発注関連書類の自動生成
・取引先管理や与信管理
・電話、FAX注文の代理入力
・商品の一括発注

このようにBtoB-ECは、マーケティング施策を行いながら、BtoB取引に必要な受発注機能もあわせて備えやすい仕組みです。そのため、今後の受発注基盤を検討する際は、EDIを前提に考えるだけでなく、BtoB-ECを代替手段のひとつとして検討する価値があります。

特に、取引先との継続的な接点づくりや、新規顧客の獲得、営業活動の効率化まで視野に入れるのであれば、BtoB-ECはEDIの有力な代替手段、あるいはそれ以上の選択肢になり得ます。

ただし、取引先からEDIや流通BMSへの対応を求められるケースもあるため、実際にはBtoB-ECへの置き換えだけでなく、EDIとの併用も含めて判断するのが現実的です。

まとめ

従来のレガシーEDIは、固定回線や専用機器を前提とした仕組みであり、現在は見直しが必要な段階に入っています。

2026年現在、企業間の受発注基盤としては、流通BMSへの対応、もしくは取引先が指定するWeb-EDIへの対応が中心です。今後は、単に従来の仕組みを維持するのではなく、自社の取引先や業務フローに合わせて、どの方式で受発注業務を継続していくかを整理することが重要です。

また、受発注の効率化だけでなく、取引先への情報発信や販促、分析まで視野に入れるのであれば、BtoB-ECも有力な選択肢になります。

株式会社インターファクトリーが提供する「EBISUMART(エビスマート)」は、SaaSのECサイト構築システムです。BtoB向けのECサイトを展開するための機能や拡張性があり、さまざまな業種での利用が可能です。

レガシーEDIからの見直しや、Web-EDIではカバーしきれない受発注・販促課題を感じている企業は、EBISUMARTのようなBtoB-ECプラットフォームも含めて検討してみてください。

SaaSのECサイト構築システム:EBISUMART(エビスマート)

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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表。 株式会社インターファクトリーのWebマーケティングシニアアドバイザーとして、EBISUMARTやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」では、ECサイトの初心者向けに特に集客方法について解説。