大手企業が実践、ECサイトとリアル店舗の連携事例5選

ECサイトとリアル店舗をどのように連携させれば効果があるのか。2012年頃からO2Oやオムニチャネルというキーワードが注目され始め、その後オンラインもオフラインもどちらも展開する企業も多くなってきていると思います。

しかし、ECの売上が思うように伸びなかったり、せっかくそれぞれにメリットがあるのに最大限に活用できていなかったりと、今後の運営についてご検討されている方も多いのではないでしょうか。そんなこれからECとリアル店舗連携を検討されている方にも、今回解説するECとリアル店舗の連携事例はきっと役に立つはずです。

なぜなら今回ご紹介する事例は、国内の各業界で最も有名な企業の事例だからです。さらに、今回はアパレル・食品・家電など、業界の異なる企業を比較することでそれぞれ業界の特徴も読み取ることができました。

今回は、そんな業界も異なる大手5社のO2Oやオムニチャネル事例を徹底分析します。デジタル戦略を積極的に取り入れている大手企業ばかりなので、ECとリアル店舗の連携方法に必ず参考になるはずです。

目次

事例①「セブン&アイ」24時間いつでも受け取り可能で、顧客満足度が向上

事例②「無印良品」店頭レジで10人中3人が提示する会員アプリ『MUJI PASSPORT』

事例③「スターバックス」売上を毎年約8.5%伸ばし続けるためのデジタル戦略とは

事例④「ビックカメラ」基本ポイント還元率10%、他社との違いが顧客満足度を上げる

事例⑤「ユニクロ」2位との差は1.8倍、圧倒的に売上を伸ばすユニクロの戦略とは

事例①「セブン&アイ」24時間いつでも受け取り可能で、顧客満足度が向上

※下記に解説する「オムニセブン」は、2023年2月をもって閉鎖予定となっており、今後はセブン&アイグループ各社それぞれの通販サイトとしてリニューアルオープンする予定です。

2015年11月に開始したセブン&アイ・HDが運営するネット通販サービスの「オムニセブン」。

このサービスの特徴は、注文した商品を全国21,000店以上のセブンイレブンで24時間配送料無料で商品を受取ることが可能です。一人暮らしで遅くまで仕事があり家にいる時間が少ない方や、遠くまで買い物に行くのが大変な年配の方でも安心して利用できるため、幅広い年齢層をターゲットにした事例といえます。

また、セブン&アイ・HDの商品も受取サービスの対象となり、例えば食品を扱うイトーヨーカドーではスーパーへ通うのが困難な年配の方でも利用しやすく、日常的にも利便性の高いサービスといえるでしょう。

ただし、セブンイレブンで受け取る場合梱包の関係で、通常は梱包専用のオムニ箱(専用のダンボール箱)にて受け取りますが、これに入らない大きさや重さなどによっては店舗で受け取りができない場合があります。これはオムニセブンのサービスに限らず、Amazonのコンビニ受け取りでも、大きいものや重いものは受け取ることができないなど、同じことが言えます。

このような状況であればAmazonのサービスと大きく差はなく、24時間受け取ることが可能だとしても、逆にセブン&アイグループの商品のみしか購入できないという点は、ユーザーにとっては不便な点であると考えられます。

コンビニ業界 売上高ランキング (2021-2022年)から引用すると、セブン&アイ・HDはコンビニ業界の売上ランキング1位です。

順位 企業名 売上高(億円)
1 セブン&アイ・HD 60,632
2 ローソン 6,983
3 ファミリーマート 4,514
4 ミニストップ 1,836
5 JR東日本クロスステーション 1,356

そんなコンビニ業界売上トップを誇る「セブン&アイ・HD」ですら、オムニ戦略に苦戦し、閉鎖を余儀なくされている現状なのです。

ブランドより値段を意識する現在のユーザーの動向からも、あえてセブン&アイ・HDのオンラインショップで購入しなくても、なんでも揃うAmazonや楽天には及ばなかったのではないかと考えます。

事例②「無印良品」店頭レジで10人中3人が提示する会員アプリ『MUJI PASSPORT』

2013年5月に良品計画がリリースを開始した無印良品会員アプリ『MUJI PASSPORT(ムジ・パスポート)』。2021年8月時点で日本国内の累計アプリダウンロード件数は2,451万件を獲得しています。アプリの展開は日本国内にとどまらず、中国や台湾、韓国など海外へも拡大しています。

このアプリを店頭レジで提示することで、「MUJIマイル(※1円につき1マイル)」がたまり、例えば「MUJIマイル」を2万ポイント貯めると「MUJIショッピングポイント」200ポイントに交換することができます。

「MUJIショッピングポイント」に交換すると1ポイント=1円で、店頭やネットストアでショッピングをする際に割引として使用することができます。

MUJIマイルサービスについて

引用:無印良品公式HP

結果、少し前の記事ですが、下記の記事によると店頭レジでは10人中3人がアプリの提示をするほど利用率が拡大し、また会員の客単価は非会員の1.6倍という結果が出ています。

参考記事:無印良品で購買行動の前後を可視化するアプリ「MUJI PASSPORT」が活躍(良品計画)

さらに言うと、このアプリの特徴はポイント利用のためだけを目的に開発されたものではなく、『MUJI PASSPORT』へのチェックイン(※1日50回まで)で「MUJIマイル」が貯まり、良品計画が運営するオンラインコミュニティ『IDEA PARK』では「良いね」や「コメント投稿」によっても「MUJIマイル」を付与されるなど、様々なシーンで貯まるように設計されているのです。

このように、アプリの利用頻度によってマイルが付与される仕組みは、ユーザーにとっても使えば使うほどお得で、企業にとっても顧客の動線を可視化することができるため、両者にメリットのある機能でありオムニチャネル戦略の良い例といえるでしょう。

事例③「スターバックス」売上を毎年約8.5%伸ばし続けたデジタル戦略とは

スターバックス公式HP(会社案内)から引用すると、「一杯のコーヒーを通じて目の前にいるお客様と誠実に向き合い、言葉と心を交わしてきました。(中略)お客様一人ひとりの暮らしに溶け込んだ、心あたたまるひとときをお届けすると共に、コミュニティ(地域社会)へポジティブな影響を与え、人間らしさを大切にしながら更なる挑戦を続けてまいります。」

こういった理念のもと、テレビCMや広告チラシにほとんど費用をかけないという話は有名な話で聞いたことがある方も多いと思います。

しかし下記記事スターバックスコーヒージャパンの売上高と店舗数によると、広告を打たないにも関わらず2001年からその後12年間スターバックスは年間平均8.5%も売上を伸ばしたそうです。

ではなぜ、売上を伸ばし続けることができたのでしょうか。その理由はアプリやスマホ決済の導入など率先して行い、時代に合わせたデジタル戦略を取り入れてきたからです。

例えば、1日に2回利用する人にとってお得なワンモアコーヒー(2杯目のおかわりが165円(ドリップコーヒー)になるサービス)は会員登録でさらに55円お得にコーヒーを飲むことができ、アプリでクレジットカードを連携していれば、さらにポイント還元率も上がる仕組みを取り入れています。

また、スターバックス公式HPによると

“お客様一人ひとりの暮らしに溶け込んだ、心あたたまるひとときをお届けすると共に、コミュニティ(地域社会)へポジティブな影響を与え、人間らしさを大切にしながら更なる挑戦を続けてまいります。”

https://www.starbucks.co.jp/company/

というメッセージにもあるように、スターバックスのデジタル戦略を調べてみた結果、店頭での体験をよりよくするためのデジタル戦略が多いと感じました。既存顧客の満足度を上げるために、毎日来てくれる方にポイント付与を可能にしたり、並ぶ時間を短縮するためにスマホ決済を導入したりすることでリピーターが増え、結果的にお客様が増えるという考え方です。

さらに下記の記事によると、アプリによる事前注文の導入により店舗での待ち時間なく商品を受け取れるようになりました。

参考記事:アプリで事前に注文&決済! スタバの「モバイルオーダー&ペイ」、都内56店舗で開始(BCN+R)

また、2019年上半期には「LINE」と連携し、モバイル決済を導入。今や、連絡手段の一つとして切っても切れない存在である「LINE」との連携により、さらに今後スターバックスのデジタル化が促進されそうです。

事例④「ビックカメラ」基本ポイント還元率10%、他社との違いが顧客満足度を上げる

家電量販店の場合、商品単価が比較的高いからこそ、ポイントの付与について関心の高い顧客も多いです。数多くの家電量販店がありますが、実際のところ商品の値段はそれほど大きく変わらないため、企業側はポイント獲得率の高さやアプリの使いやすさなど他社との違いを明確にすることが重要となります。

ビックカメラは、家電量販店業界売上高ランキングで2位の実績ですが、今回は競合で業界1位のヤマダ電機と比較しながら解説していきます。

まず一つ目の比較は、ポイントの有効期限についてです。ヤマダ電機は獲得したポイントが最終購入日から1年間の有効期限ですが、ビックカメラの場合は最終利用日から2年間の有効期限となり、また貯まっているポイントも含めて2年延長されるので、定期的にビックカメラを利用しない人にとってもメリットです。

二つ目の比較対象は、貯めたポイントの利用方法についてです。ヤマダ電機の場合、ヤマダ電機のオンラインショップや実店舗、またはヤマダ電機が運営しているショップのみが共有ポイントとして利用できます。ただし、ポイント利用分にはポイントが付かないので、特価品などのもともとポイントがつかない商品の購入で利用するのが良いようです。

参考記事:ヤマダ電機のヤマダポイントをお得に使う方法を調査!ヤマダポイントはそのまま店頭で使うと、損するポイント制度です。

対して、ビックカメラは同じビックグループであるコジマやソフマップでもポイント交換レートの変動なしでポイントを利用することが可能です。なお、逆にコジマやソフマップのポイントもビックカメラ全店で利用可能となっております。

さらにいうとビックカメラでは「ビックカメラSuicaカード」の利用で現金の支払いと同様に還元率10%となるため、現金のみ10%のポイント還元となるヤマダ電機と比べても大きな違いとなるでしょう。またSuicaとしても利用できるため、JR東日本をよく利用する人とっても、かなりメリットとなるでしょう。

こういったユーザー側のメリットが、明確で操作が単純であるほどポイント機能の利用率が上がると考えられます。また、ビックカメラの場合は利用者の多いSuicaと組み合わせたカードにしたことで、ポイントの利用率やビックカメラへの送客率も上げたのです。

事例⑤「ユニクロ」2位との差は2倍以上!圧倒的に売上を伸ばすユニクロの戦略とは


下記の記事 ネット経済研究所が販売する「ファッションEC売上高ランキングTOP120(2021年版)」を引用すると、ファッションECの売上ランキング1位はユニクロでした。ここ数年はユニクロがダントツの1位をキープしており、今後も余程のことがない限りは1位の座を独占し続けるでしょう。それほどに2位との差は圧倒的です。

順位 会社名 2020年度売上高(百万円)
1 ユニクロ 126,900
2 ベイクルーズ 54,500
3 アダストリア 53,800
4 オンワードホールディングス 41,584
5 TSIホールディングス 40,681

ECサイトと実店舗のどちらも売上を伸ばす理由とはなぜか、ユニクロのオムニチャネル戦略を徹底分析します。

そもそもECサイトと実店舗、両方の売上が良い理由は業界トップクラスのユニクロだから、という理由は当然あると思います。しかし、今回様々なECサイトを比較してみた結果、確実にユニクロと他社との違いを感じた部分があります。

それは、サービスの使いやすさです。最も初歩的で当たり前なことかもしれませんが、他社のアプリと比較してもあきらかに動作が速く、機能も単純、さらにアプリの初回起動時にはわかりやすい操作手順付き、サービスの使いやすさはユーザーの利用頻度に大きく影響します。

例えば、ECから店舗への送客率を上げるために、アプリの会員証をお会計時にレジで提示すると次回店舗の買い物で使えるクーポンがもらえ、購入履歴が残ります。

この機能の特徴はユーザーにとってはアプリの提示で実店舗で使えるクーポンがもらえ、企業にとってもアプリの利用率や実店舗の売上向上にもつながります。また購入履歴をユーザー自身で確認ができるため、また同じものを購入したい場合、一から商品を探す必要がなくスムーズにショッピングが可能となります。

逆に、店頭からオンラインストアへ送客する場合は、店頭商品のバーコードをスキャンするだけで、オンラインストアや各店舗の在庫状況や商品のレビューのチェックが可能になります。また、気になる商品はアプリ内でお気に入りに登録しておけば、その日に店舗で購入に至らなかった場合でも後々プッシュ通知でお知らせができ、購買促進をはかることも可能です。

またオンラインの購入時には、通常なら5,000円未満の買い物の場合、送料がかかってしまいますが「ユニクロ店舗受取り」だと送料無料となるため、例えば店舗は家に近いのにオンラインにしか在庫がないという状況の場合ユーザーにとってメリットとなるサービスです。

これはもちろん店舗側にとってもメリットがあり、受け取り目的で来店したユーザーの「ついで買い」が期待でき、購入機会を増やすことができます。

このようにユニクロのオムニチャネル戦略は、かなり細かくユーザーが利用するシチュエーションが考えられており、常にECと実店舗をユーザーが行ったり来たりするような仕組みでアプリを開発されています。

ECとリアル店舗を結びつけるための3つの施策!

①アプリで簡単ポイント管理

ECサイトと店舗を連携させるためには、まずはポイント管理をアプリで連携させることが重要でしょう。

例えば、店舗で「ポイントカードをお作りしますか」と言われると名前やメールアドレス、住所を書き込むのは面倒くさいと思い、それだけでユーザーが離れてしまう場合もあります。

しかし、「アプリインストールで今日からポイントが付けられます」と言われたら、インストールするだけなら、とユーザーがインストールしてくれる可能性が高まります。

またアプリの導入で、関心度の高いユーザーに向けてプッシュ通知ができたり、商品の紹介やキャンペーン情報の通知を可能にしたりと、一人当たりの単価を上げることにもつながります。

②O2OでECとリアル店舗を連携

下記の記事よりO2O とは 、

ネット上(オンライン)から、ネット外の実地(オフライン)での行動へと促す施策のことや、オンラインでの情報接触行動をもってオフラインでの購買行動に影響を与えるような施策のことを指します。

引用:O2O とは 意味/解説/説明

例えば、大手コンビニエンスストアのTwitter公式アカウントでは、フォローまたはツイートをリツイートすると「割引クーポン」がもらえるというキャンペーンを実施し、そのクーポンをリアル店舗で利用し来店率を上げることにつながります。

このようにリアル店舗の売上を上げるためには、ネット上のユーザー行動は切っても切り離せない存在です。なぜなら、近年はネット社会だからこそ、ユーザーに情報が届くのはリアル店舗から直接届くものではなく、確実にネットからの情報の方が量が多くスピードも速いからです。

③システム連携で顧客行動の可視化

ユーザーにせっかくアプリを利用してもらうなら、ポイント利用のためだけが目的ではもったいないです。なぜなら、もしシステム連携をしていればユーザーに会員登録を促すことにより、お得な情報をプッシュ通知したり割引クーポンを配布したり、企業側は顧客情報をもとに顧客分析をすることができる、というメリットがあります。

例えば、アプリ内でメディアを運営し、商品ページや特集ページなどを掲載した場合、ユーザーがどのようなメディアに興味があり、どのような顧客動線があるのかを分析することに役立ちます。

これを実現するために必要なのが、ECプラットフォームなのです。ECプラットフォームの大きなメリットは、拡張性にあり機能をセルフカスタマイズしたり、機能やデザインをオーダーカスタマイズできたりとビジネスに合わせたカスタマイズを実現できます

O2O・オムニチャネルを取り入れるならクラウド型EC

O2Oやオムニチャネルを実現させるには、システム投資が必要になります。なぜなら上記3つの施策を実現するためには、会員情報の連携や、ポイントシステム、アプリ等、様々なデータ連携やシステム連携が必要となりECとリアル店舗のデータを一元化しなくてはならないからです。

自社ECでO2Oやオムニチャネルを導入する場合に選ぶべきECシステムはクラウド型ECが最も費用対効果が高いといえます。

なぜなら、パッケージECでもオムニチャネルの実現は可能ですが、3年~5年でシステムが陳腐化してしまうため、オムニチャネルのシステム投資を回収する前に、次のECシステムのリニューアルをするためのコストが発生してしまいます。

しかし、クラウドECの場合日々システムが更新されるのでECシステムのリニューアルが不要です。そのため施策の実施や事業の状況に合わせて継続的にカスタマイズが可能な拡張性の高いクラウドECプラットフォームが最適です。

弊社株式会社インターファクトリーが提供するクラウド型ECプラットフォーム「ebisumart」はO2Oやオムニチャネルには欠かせない機能や多くの外部連携の実績があります。

また、今回は大手5社のオムニチャネルについてご紹介しましたが、さらに詳しく知りたい方はこちらの資料『オムニチャネルの導入方法と構築費用』をダウンロードください。

「ebisumart」お問合せ:https://www.ebisumart.com/input_ebisumart.html

 

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ABOUT US
首藤 沙央里
2019年9月、株式会社インターファクトリーに入社。 マーケティングチームにてオウンドメディア運用を担当し、年間40本以上の記事を掲載。 社内広報、採用広報に加え、EC業界やクラウドコマースプラットフォーム「ebisumart」についての情報発信も行う。