自社ECサイトに7つの施策で行う「CVR改善」のプロの解説

ECサイトのCVRを改善して、売上をグッと上げたいと考えているのではないでしょうか。そう思って取り組むのは、数字分析だと思いますが、実はそれだけではあまり効果が出ません。なぜならユーザー行動の仮説を立てにくいからです。

この記事では、実際にECのコンサルをしている筆者がユーザー行動観察の経験で効果のあった施策を中心に、CVR改善の7つの施策を解説します。

◆ECサイトのCVRを改善する7つの施策

施策① トップページで商品や値段を見せる
施策② 目玉商品の設置
施策③ 商品名の改善
施策④ 商品写真の登録
施策⑤ 商品説明にユーザーニーズを入れる
施策⑥ ユーザーレビューを集める
施策⑦ Z世代向けや、高額商品向けに「Paidy」を利用する

この記事では、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、ECサイトのCVRを高めるための7つの施策を解説するので、最後までご覧ください。

ECサイトのCVRを改善する7つの施策

それでは、ECサイトのCVRを改善する7つの施策を紹介します。

施策① トップページで商品や値段を見せる

まず、SEOや広告を通じて貴社ECサイトの存在を知ったユーザーは、クリックしてサイトを訪問します。当然、購入意欲の高いユーザーであれば、「これからECサイトにアクセスして商品を探そう」という意識を持ったうえでアクセスしてきているはずです。

しかし、もし訪問先が次のようなECサイトであった場合はどうなるでしょうか。以下のECサイトは、筆者が実際に運営しているECサイトです。

◆筆者が運営しているECサイトのトップページ

NGのTOPページ

引用(画像):forUSERS オンラインストア

このECサイトには、以下のような問題点が見受けられます。

◆筆者が運営しているECサイトの問題点

・一見して何を販売しているECサイトなのかが分からない
・一見して商品が売られている印象がない
・メインビジュアルが英語表記で、分かりにくい

つまり、何を販売しているサイトなのかがパッと見で分からないという致命的な課題を抱えているのです。その結果、新規ユーザーがサイトを離脱しやすくなり、売上にもつながりにくいECサイトになってしまいます。(※この筆者のECサイトはYouTubeチャンネル登録者や特定のお客様向けであり、SEOや広告からのユーザーが来ることは少ないため、このようなデザインになっています)

それでは、それに対して次のECサイトはどうでしょうか。

◆ビックカメラのECサイトのトップページ

ビックカメラのTOPページ

引用(画像):ビックカメラ.com

ビックカメラのECサイトでは、一見しただけで次のことが分かります。

◆ビックカメラのECサイトの特徴

・エアコンやイヤホンなどの商品が並んでおり、家電を販売していると分かる
・値段が表示されていて、ECサイトであることが明確である
・「ビックカメラ」というブランド名が表記されている

つまり、ビックカメラのECサイトは「家電量販店のECサイト」であることが一目で分かるデザインになっています。仮にビックカメラを知らない人がこのサイトを訪れたとしても、一目で「家電を扱うECサイト」と認識できるでしょう。

このように、ECサイトのCVR改善において最初に取り組むべきは、トップページの工夫です。具体的には、次のポイントを意識する必要があります。

◆CVRを向上させるためにトップページで工夫すべきこと

・何を販売しているか分かる
・英語表記を極力避ける
・ファーストビューで商品が表示されている
・ファーストビューで値段が表示されている

一方で、売上が伸び悩む小規模ECサイトでは、これらのポイントを考慮せず、「ビジョンメッセージ」をトップページに大きく掲げてしまっているケースが見受けられます。

抽象的なメッセージは、商品を販売するためのECサイトには適していません。まずは、何を販売しているのかが一目で伝わるトップページ設計を心掛けることが、CVR改善の第一歩となるのです。

施策② 目玉商品の設置

ECサイトにおいて最も重要なのは、「初回購入」です。初回購入が重要な理由は明確です。たまたま訪れたユーザーが、商品を購入し、無事に商品が届けば、それは一つの成功体験となります。この成功体験を通じて、「また今度買ってもいいな」と思うユーザーが生まれ、やがてリピーターへと育っていきます。

しかし、もしその偶然訪れたユーザーが、商品を購入しなかった場合はどうでしょうか。初回購入が成立しない限り、リピーターにもなり得ず、売上にも一切貢献しないことになります。

ECサイトの売上を安定させるためにはリピーターの存在が不可欠ですが、その最初の一歩は、初回購入の成功にかかっています。そのためには、ユーザーに初回購入を促す「目玉商品」を用意し、CVRを高める必要があります。

◆目玉商品の例

・商品価格が市場より圧倒的に安い商品
・他では手に入らない商品
・有名人・インフルエンサーとのコラボ商品
・季節限定/期間限定で販売される商品
・レビュー評価が非常に高くリピーターも多い商品

このような目玉商品を設置することで、初めて訪れたユーザーの購買意欲を高め、商品を購入してもらうことができます。可能であれば、目玉商品を競合よりも低価格で設置し、その赤字分をマーケティング費用と位置付けて、初回購入を促進する戦略をとるべきです。

初回購入が成功すれば、その後のリピート施策によってリピーターを育成し、ECサイトの売上を安定させることができるので、この初回購入施策がCVR施策にもつながるのです。

施策③ 商品名の改善

例えば、家具のECサイトを運営している場合、商品名を型番や簡単な説明だけで登録していませんか? 具体的には、次のような例が挙げられます。

◆テーブルの商品名の例

・T-●●●
・ダイニングテーブルW120
・折りたたみ式テーブル(小)

このような商品名では、メーカーに詳しいリピーターなどでなければ興味を引くことができません。一般の新規ユーザーにも興味を持ってもらうためには、次のような工夫を凝らした商品名で登録する必要があります。

◆工夫されているテーブルの商品名の例

・カフェ風インテリアに合うナチュラルテーブル
・在宅ワークにぴったり!幅120cmのコンパクトテーブル
・2人用の北欧風ダイニングテーブルセット

このような商品名であれば、家具に詳しくないユーザーでも利用シーンがイメージしやすくなり、検討対象に入りやすくなります。つまり、単に商品を説明するだけでなく、ユーザーのニーズや利用シーンに寄り添った商品名を付けることが重要です。こうした工夫をすることで、CVRの向上が確実に期待できるでしょう。

施策④ 商品写真の登録

カンタンに言えば、商品写真の登録数が多ければ多いほど、CVRは改善します。現在では、スマートフォンで商品を検討することが主流となっています。商品ページに多くの商品写真が登録されていれば、ユーザーは以下のようにスマートフォン上でスワイプしながら、気になる商品をじっくりとチェックできるため、購入意欲を高めることができるのです。

◆スワイプしている様子

スワイプしている画像

出典(画像):筆者がChatGPTで作成

例えば、Tシャツを販売する場合には、ジーンズやハーフパンツとのコーディネート提案を行ったり、洗濯後に縮まないといった機能性をアピールすることで、購入を検討するユーザーの興味を引くことができます。また、多くの写真を掲載することも、購買意欲を高める大きな要素となります。

そのため、多少手間はかかりますが、商品登録(いわゆる「ささげ作業」)の際には、さまざまな利用シーンや組み合わせを想定しながら情報を充実させることが重要です。大手のZOZOTOWNでは、専用スタジオを用意し、1商品ごとに複数の写真を掲載しています。これにより、商品の魅力がより伝わりやすくなり、結果としてCVRも高くなるのです。

◆ZOZOTOWNは一つの商品ページにこれだけ登録されている!

ZOZOTOWNの登録写真数は多い

引用(画像):ZOZOTOWN

ユーザーによって、同じ商品でもニーズが異なるので、さまざまなニーズやシチュエーションに合った商品写真を登録してみましょう。

施策⑤ 商品説明にユーザーニーズを入れる

商品説明文についても、メーカーや卸から提供された文面をそのまま使うのではなく、ユーザーのニーズに沿った説明を書き加えることが重要です。そのために活用できる最適な無料ツールが「ラッコキーワード」です。

参考:ラッコキーワード

たとえば「USB扇風機」を販売する場合、ユーザーがどのような情報を求めているのかを把握するため、「USB扇風機」とラッコキーワードに入力すると、以下のような検索ニーズが見えてきます。

◆ラッコキーワードでUSB扇風機で出力した一覧(一部です)

usb扇風機 おすすめ
usb扇風機 おしゃれ
usb扇風機 大風量
usb扇風機 オフィス
usb扇風機 風量
usb扇風機 風量 改造
usb扇風機 火災 <==例えばコレ
usb扇風機 価格
usb扇風機 会社
usb扇風機 壁掛け

この中の「USB扇風機 火災」といったキーワードは、購入前にユーザーが感じている不安・懸念とも言えます。こうしたニーズを踏まえて、以下のような商品説明文を追加すると効果的です。

◆商品説明文の追加例

「当商品はPSE認証済みで、安全性にも配慮されたUSB扇風機です。内部に過熱防止機能を搭載しており、長時間の使用でも火災のリスクは限りなく低く、安全にご利用いただけます。」

このように、ユーザーニーズに基づいた情報を商品ページに追加することで、ユーザーの不安を払拭し、CVRを高めることができます。このテクニックはどのEC事業者でもすぐに取り入れられるため、商品説明が魅力に欠ける、あるいは情報が不足していると感じる場合は、すぐに実施してみましょう。

施策⑥ ユーザーレビューを集める

ユーザーが商品購入を検討する際、最も参考にする要素の一つが「商品レビュー」です。しかし、多くの小規模ECサイトでは、ユーザーレビューがほとんど集まっていないのが現状です。まずは、商品を購入してくれたユーザーに、次のようなレビュー依頼文を送ってみましょう。

◆レビュー依頼の文例

いつもご利用ありがとうございます!
ご購入いただいた商品はいかがでしたでしょうか?
お客様のご感想をぜひお聞かせください。
レビューを投稿いただくことで、これからご購入を検討されるお客様の参考になります。
ご協力のほど、よろしくお願いいたします!

このような依頼を通じて商品レビューが集まれば、新規ユーザーにとっても商品検討がしやすくなり、CVRの向上が期待できます。

なお、商品レビュー依頼にインセンティブ(特典)を付与する場合は、「PR表記」が必要となります。景品表示法を遵守する必要があるため、施策を実施する前に、必ず以下のガイドラインを確認してください。

参考:消費者庁「景品表示法とステルスマーケティング(PDF)

施策⑦ Z世代向けや、高額商品向けに「Paidy」を利用する

決済方法を多様化することは、CVR向上に大きく貢献します。おすすめしたいのが「Paidy(ペイディ)」の導入です。Paidyを決済手段として追加することで、次のようなメリットがあります。

◆ペイディのメリット

・クレジットカードを持たないZ世代に支持されている
・分割払いが可能
・分割払いの金利手数料が無料

クレジットカードを所持していない若年層や、高額商品を購入したい顧客に対して分割払いを提供できるようになります。結果として、新しい顧客層からのコンバージョンが増え、CVR改善につながることが期待できます。
Paidyについては、下記の記事でも詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

関連記事:EBISUMART Media「事業者が『分割払い』をECサイトや店舗で導入する理由と方法

ここまでは、CVRを改善するための7つの施策について解説しました。最後に、CVR改善を進める上で注意すべき、よくある落とし穴についてご紹介します。

CVR改善の注意点① 数字ばかりに捉われていないか?

ツールで算出される数字を眺めるだけでは、具体的な改善案は生まれません。例えば、以下の数値だけを見て、何か明確な改善策が思い浮かぶでしょうか

◆以下の数字だけで改善点は浮かばない

商品ページAのCVRは0.37%

どれだけ優れたマーケターでも、この数字だけでは具体的な改善ポイントを導き出すことは困難です。ここで必要となるのは、ユーザー視点に立った仮説構築です。たとえば、次のようなアプローチを考えます。

◆CVRを向上させるための仮説を立てる

このお菓子の商品ページはアクセス数が多いわりには、CVRが低く商品があまり売れていない。
ユーザー目線で見てみると、非常においしそうだが「カロリーを気にしている人が多い」のではないか?
この商品は甘さ控えめでカロリーは高くないのだが、そういった訴求はしていない。
では「甘すぎない」などの訴求も合わせて行えば、CVRが伸びるのではないか?

このように、ユーザー視点で仮説を立て、施策を実行することでCVR改善が進められます。この感覚を養うためには、EC担当者自身が日常的にECサイトで買い物を行い、自分がなぜその商品を選んだのか、なぜ選ばなかったのかを都度メモする習慣を持つことが重要です。それによって、自社ECサイトの商品ページ改善にも生かす力が身についていきます。

マーケティングで数字やKPIは非常に重要ですが、このような「仮説」を立てることができないと、改善に結び付けることはできません。

CVR改善の注意点② ノウハウ豊富な外部業者に依頼できているか?

企業においてマーケティング分野が苦手な場合、外部業者の力を借りる選択肢は一般的です。筆者もかつてEC担当者を務めていた際には、外部業者の支援を受けていました。しかし実際には、外部業者の担当者によってはECサイトに関する知見が不十分なケースもあります。

こうした担当者の特徴は、自社ツールや自社サービス範囲内であれば一定の知識を有しているものの、それ以外の領域になるとノウハウが不足している点です。たとえば、以下のような質問を投げかけてみると良いでしょう。

◆質問例

ECサイトにおいて、一番重要なことは何ですか?

このような基本的な質問にすぐに答えられない担当者の場合、CVR改善も限定的な支援にとどまる可能性が高いため、ノウハウや実績の豊富な外部業者への見直しも検討しましょう。

まとめ

本日は、CVRを高めるための7つの施策を紹介しました。これら7つの施策で実現できるものを取り入れてみてください。全ては無理でも必ず1~3つはすぐに実践できるはずです。

もし、自社のECサイトのマーケティングの知見が少ない場合は、インターファクトリーのECコンサルティングサービス「EBISU GROWTH(エビス グロース)」もご検討ください。ECサイトのCVRを高めてきた実績のあるコンサルタントが豊富に在籍しております。

以下のEBISU GROWTHの公式ホームページでは、資料請求もできるので他社とともにあわせてご検討ください。

EBISU GROWTH(エビス グロース)公式サイト

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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表。 株式会社インターファクトリーのWebマーケティングシニアアドバイザーとして、EBISUMARTやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」では、ECサイトの初心者向けに特に集客方法について解説。