「食品業界は安定してそうだ!」
「有名な企業が多い!挑戦してみたい!」
という方は多いと思います。食品業界は人々の食を提供している仕事であるため「急激に需要がなくなることがない」という安定しているイメージがもたれています。
しかし、日本市場は少子高齢化のためどんどん縮小し、今後は海外市場に参入していくことが業界各社の課題になっております。
本日はインターファクトリーで、シニアアドバイザーを担当している筆者が食品業界について詳しく解説いたします。
食品産業の国内生産額は91兆円!(2021年)
まずは下記のグラフをご覧ください。農林水産省が公開している食品業界の国内生産額をグラフにしたものです。概算96兆円を超える巨大な産業であり、赤い折れ線グラフは食品業界の国内生産額が、全産業に占める割合を表しております。
◆食品産業の国内生産額推移
引用データ:農林水産省 食品産業に関する統計
2015年(平成27年)以降、国内生産額が伸びていますが、2020年のコロナ禍により外食産業が大打撃を受けました。飲食店は時短や休業に追い込まれ、仕入れ量が大きく減少したことによる影響が、上記グラフに如実に表れています。
そして2024年現在、原材料の多くを海外に頼っている日本は、円安による輸入製品や輸入原材料などの値段は上がり、食品業界各社は続々と食品の値上げに踏み切っています。
下記は、直近2年間の値上げ品目数の推移を示したグラフですが、特に2023年は累計で3万2,396品目と食料品の値上げが著しい年でした。
比べて2024年は、一旦は小康状態を保っていると見えますが、人件費や燃料費の動向、あるいは依然高騰が続く物流コストを鑑みると、状況が変化する可能性は高いと見られています。
◆月別値上げ品目数推移
また、日本国内の人口減のため、国内市場にとどまるわけには行かず、食品業界ではM&Aによる海外市場への参入が活発になっております。人手不足からの人件費や物流費の高騰を抑えるため、IT投資や、店舗の無人化などに注力できない、中堅以下の会社は業界再編に取り込まれていくことが予想されます。
食品業界のEC市場は右肩上がり
次に、食品業界のBtoC-EC(ネット通販)市場を見てみると、2022年のEC市場規模は2兆7,505億円、EC化率は4.16%でした。市場は年々右肩上がりに成長し続けており、コロナ禍では大打撃を受けた外食産業とは一転して大きく市場規模を拡大しております。
不要普及の外出自粛や休業要請により実店舗の利用が急激に減少した分、消費者がECによる消費活動にシフトしたことがよくわかります。
◆食品・飲料・酒類のEC市場規模とEC化率の推移
出典:経済産業省「電子商取引実態調査」、「令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」より筆者作成
しかしながら、国内の物販系BtoC-EC全体のEC化率が9.13%であることから考えると、まだまだEC利用率が極めて低い業界であることは否めません。
これからの食品業界全体にとっては、このEC市場の成長が必要不可欠とされており、大きな課題のひとつとなっております。
【ベスト50社】食品業界 売上高ランキング(2021-2022年)
まずは下記の表をご覧ください。下記の表は以下のリンク先のデータより作りました。良い記事なので、そちらもあわせてご覧ください。
データ引用先:食品業界の売上高ランキング一覧(業界動向サーチ)
順位 | 企業 | 売上 |
---|---|---|
1位 | 日本ハム | 11,743億 |
2位 | 味の素 | 11,493億 |
3位 | 山崎製パン | 10,529億 |
4位 | 明治HD | 10,130億 |
5位 | マルハニチロ | 8,667億 |
6位 | 伊藤ハム米久HD | 8,543億 |
7位 | 日本水産 | 6,936億 |
8位 | 日清製粉グループ本社 | 6,797億 |
9位 | ニチレイ | 6,026億 |
10位 | 日清食品HD | 5,697億 |
11位 | 雪印メグミルク | 5,584億 |
12位 | キッコーマン | 5,164億 |
13位 | 森永乳業 | 5,033億 |
14位 | 不二製油グループ本社 | 4,338億 |
15位 | 日清オイリオグループ | 4,327億 |
16位 | プリマハム | 4,195億 |
17位 | ヤクルト本社 | 4,151億 |
18位 | キユーピー | 4,070億 |
19位 | スターゼン | 3,814億 |
20位 | 大塚HD | 3,766億 |
21位 | 東洋水産 | 3,614億 |
22位 | エスフーズ | 3,588億 |
23位 | 江崎グリコ | 3,385億 |
24位 | ニップン | 3,213億 |
25位 | 昭和産業 | 2,876億 |
26位 | フジパングループ本社 | 2,689億 |
27位 | 極洋 | 2,535億 |
28位 | ハウス食品グループ本社 | 2,533億 |
29位 | カルビー | 2,454億 |
30位 | ロッテ | 2,395億 |
31位 | ミツカングループ | 2,355億 |
32位 | 丸大食品 | 2,186億 |
33位 | J-オイルミルズ | 2,015億 |
34位 | わらべや日洋HD | 1,923億 |
35位 | カゴメ | 1,896億 |
36位 | 森永製菓 | 1,812億 |
37位 | ダイドーグループHD | 1,626億 |
38位 | 敷島製パン | 1,543億 |
39位 | DM三井製糖HD | 1,478億 |
40位 | 日本たばこ産業 | 1,472億 |
41位 | サンヨー食品 | 1,379億 |
42位 | アサヒグループHD | 1,250億 |
43位 | 中央魚類 | 1,218億 |
44位 | エスビー食品 | 1,180億 |
45位 | 不二家 | 1,047億 |
46位 | 正栄食品工業 | 996億 |
47位 | 永谷園HD | 954億 |
48位 | ブルボン | 944億 |
49位 | 亀田製菓家 | 851億 |
50位 | 横浜冷凍 | 824億 |
1位の日本ハムは、高度成長期に合わせ、日本人の食生活が洋風化してきたことと、牛肉の自由化の動きにあわせ、ソーセージやハムの需要が増え、成長してきた会社です。さらに日本の少子高齢化を踏まえ、30年前よりM&Aによる海外事業への参入に熱心に取り組んでいる企業です。
2位の味の素は、うま味調味料の「味の素」戦後から輸出をはじめおり、現在では売上の60%が海外売上であり、海外比率を高めている。
このように、安定している食品業界も、少子高齢化で縮小する日本市場に備え、M&Aや海外参入を早めているのが現状です。
食品業界の平均年収は564万円!
安定している食品業界の平均年収はそこまで高くはなく、564万円です。しかし、あくまで平均であり、大手企業の平均給与は600~1000万円と高水準になっております。さらに食品業界は、住宅手当など福利厚生が充実しているケースが多いのも非常に魅力です。
食品業界の将来性や課題
すでに触れたとおり、国内市場はすでにピークを過ぎており、国内の市場はどんどん縮小していきます。ですから海外市場への参入が生き残りの鍵を握っており、M&Aにより海外企業の買収を進めるなど、対応を迫られております。
また、日本国内においては、食の多様化が進んでおり、画一的なラインナップから、どのように多様化に対応していくかが、課題となります。
他業種からの食品業界への転職は可能か?
他業種からの転職はカンタンではありません。第一に人材の入れ替わりが少ない業界であるうえ、中途採用には、実務経験が求められることが多いため、他の業界のように他業界から食品業界への転職に関しては、敷居が高い印象です。
まとめ!こんな方が食品業界に向いている!
急激に売上が上がったり、逆に下がったりが少ない業界ですから、腰を据えて商品開発を行いたい方に向いております。逆に、変化を求める方には、物足りない業界かもしれません。
また、食品業界は、食品の産地偽装などの事件で信用を落とすと、会社の存亡にかかわりますから、今は誠実な人が業界に求められているのも特徴です。
また、今後は海外へ参入する企業が多くなり、英語などの外国語に長けた方は、チャンスが広がるでしょう。