売れるネット広告社の調査によると、2025年度のD2Cの市場規模は3兆円に達すると報告されております。2023年度のBtoC物販の市場規模は約14兆円であることを鑑みると、BtoCの物販において、20〜25%程度がD2C(DtoC)事業になるのではないかと予想されます。
D2Cがここまで普及した理由については、筆者は以下の5つの理由があると考えます。
② 誰でもカンタンに独自の商品を企画・生産することができるようになった
③ D2Cが広がり始めた背景として、ECプラットフォームの選択肢が増えた
④ EC運営をサポートするツールやサービスが増えた
⑤ SNSによって良い商品を個人でも広めやすくなった
本日は、forUSERSでマーケティングを担当している筆者が、D2Cの市場規模について解説します。
D2Cの市場規模は2025年度に3兆円規模
まず、下記をご覧ください。
引用(表):売れるネット広告社「デジタルD2C」の市場動向調査(PDF)※現在はページ削除
このデータは、売れるネット広告社が2020年に行った調査結果ですが、これによると2025年度にはD2Cの市場規模は3兆円規模になると予測されております。それでは、BtoC-ECの物販全体の市場規模はどのくらいなのでしょうか。
経済産業省から発表された資料によると、BtoC-EC市場規模は2023年度で14.6兆円となりました。
◆BtoC-ECの物販全体の市場規模
引用(グラフ):経済産業省「令和5年度電子商取引に関する市場調査報告書」(2024年9月発表)
このデータ推移から予測すると2025年、あるいは2024年のBtoC-ECの物販全体の市場規模は、15兆円を超えるのではないでしょうか。
そこから考えるとD2Cの市場規模はBtoC-ECの物販の中で25%にも達しますので、D2Cは単なるバズワードではなく、確実にEC業界の中で大きな影響を与えていることが分かります。
では、なぜ、ここまでD2Cが普及したのかについて5つの理由を解説します。
D2Cが普及する5つの理由
それでは5つの理由を一つずつ解説します。
理由① コロナ禍によって、事業者のネット販売に対する意識が確実に変わった
理由② 誰でもカンタンに独自の商品を企画・生産することができるようになった
理由③ D2Cが広がり始めた背景として、ECプラットフォームの選択肢が増えた
理由④ EC運営をサポートするツールやサービスが増えた
理由⑤ SNSによって良い商品を個人でも広めやすくなった
理由① コロナ禍によって、事業者のネット販売に対する意識が確実に変わった
2019年末より始まったコロナ禍の影響により、実店舗ビジネスは大きな影響を受けました。そのため事業規模に関わらず、多くの企業がオンライン販売を展開するようになりました。以下の経済産業省のデータをご覧ください。明らかに本格的なコロナ禍に入った2020年にEC化率が大きく伸びていることが分かります。
◆コロナ禍にEC化率と市場規模が大きく伸長(赤枠)
引用(グラフ):経済産業省「令和5年度電子商取引に関する市場調査報告書」(2024年9月発表)より筆者が一部加工
もちろん、この数字の伸びはEC利用者が増えたということもありますが、当時の緊急事態宣言や外出自粛により実店舗の売上が急激に落ち込んだことで、事業者もECの利用に積極的にならざるを得なかったことも大きいでしょう。BtoC-ECの物販の中で20%以上の割合のあるD2C事業も、コロナ禍を背景に利用率が一気に増えたことが考えられます。
米国の事例ではありますが、世界最大規模のデジタルマーケティング調査会社である「eMarketer」が2021年2月に発表したデータによると、米国におけるD2Cの市場規模は、2019年の766億ドルから、2020年には前年比45.6%増の1,115億ドルへ拡大したとされています。
引用:日本貿易振興機構(ジェトロ)「新型コロナ禍でD2C消費が進展(米国)」(2022年3月22日)
理由② 誰でもカンタンに独自の商品を企画・生産することができるようになった
D2Cブランドを開設するためには、商品を企画・生産しなくてはなりません。20年前であれば、優れたアイデアがあっても、自社が製造工場を持っていたり、資本がないと実行に移すこともできませんでした。
しかし、今は個人事業主であっても中国の工場などに商品の生産を委託して、カンタンに商品を作ることができます。それがOEM生産です。
OEM生産は、主に国内企業か中国企業に生産を依頼する方法がありますが、中国企業には小ロットからでも対応している企業があり、しかも価格も国内企業に比べて安く生産することができます。ただし、工場によっては品質に差があるので、事前の情報収集をしっかり行う必要があります。
例えば、新しい化粧品のアイデアがあれば、自分で化粧品の成分を決めて、それをメーカーに依頼することもカンタンです。筆者のクライアントにサプリメーカーがおりますが、自社で生産することのできないサプリについてOEM生産を実施し、その商品を楽天市場で販売したところ、部門1位になったこともあります。小ロットからの販売でしたので、100万円ほどで商品を生産することができました。
そして、個人でもこのようにOEM生産を実施している方は非常に多く、誰でもD2Cブランドの商品を作ることができるようになりました。
理由③ D2Cが広がり始めた背景として、ECプラットフォームの選択肢が増えた
D2Cを実施する際に、ECサイトのプラットフォームを用意する必要がありますが、以下のように固定費が無料(決済手数料は別途発生)のECプラットフォームも数多くあります。
◆固定費が無料のECプラットフォーム
・STORES
・カラーミーショップ
しかも、これらのツールの使い方は非常にカンタンで、SNSのプロフィールを登録する程度のITリテラシーがあれば、誰でも利用することができるほどです。また、D2Cでよく利用される「定期販売」も可能なECプラットフォームも数多くあります。
◆定期販売向けのECプラットフォーム
・侍カート
・ecforce
これらは有料で、月々数万円の費用がかかりますが、企業がECプラットフォームを運営するならさほど大きい費用はかかりません。
また、これらのECプラットフォームはシステム連携や独自カスタマイズが苦手というデメリットがありますが、そういった大企業向けの要望にも応えるプラットフォームもあります。それがインターファクトリーのEBISUMARTです。
クラウドコマースプラットフォーム:EBISUMART(エビスマート)
このように、個人から大企業向けまでさまざまなECプラットフォームがクラウドで構築することができる時代となり、ECサイトの構築がカンタンになったこともD2Cの普及が広まった理由の一つなのです。
理由④ EC運営をサポートするツールやサービスが増えた
ECサイトの運営をサポートするサービスが増えたのも、D2Cが普及した理由の一つと言えるでしょう。例えば以下のようなサービスです。
◆1個の商品から預かってくれるクラウド倉庫サービス
◆多店舗展開しているECサイトの在庫を管理するサービス
・ネクストエンジン
・eシェルパモール2.0
・キャムマックス
・TEMPOSTAR
・GoQSystem
◆商品仕入れを分割払いできるサービス
このように、マーケティング以外にもECサイトの運営をサポートする数多くのツールやサービスが提供されており、しかもカンタンに導入することができます。これにより、資金がないことによる制限や数多くの手間をかけずとも、ECサイトを運営することができるようになりました。
D2Cブランドで成功している会社には数人のメンバーで運営している会社も数多くあり、このようなサービスを上手く利用しているのです。
理由⑤ SNSによって良い商品を個人でも広めやすくなった
良い商品やサービスが非常に広まりやすい時代となりました。それは多くの人がSNSを利用するようになったことで、誰でも自社商品を宣伝することが可能となったからです。下記をご覧ください。
◆2023年の主要SNS利用率(全年代・年代別)
引用:総務省「令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(2024年6月)
SNSと言えば、若い人だけが利用するイメージでしたが、いまや幅広い世代が利用するようになりました。SNSの種類も、LINE、Facebook、Instagram、X(旧Twitter)、YouTube、TikTokなど多岐にわたり、それぞれ自分に合ったSNSを利用しています。
その結果、商品購入を検討する際に、Webの検索結果よりもSNSを参考にするという方も多くなりました。
◆SNS利用目的(個人)
引用:総務省「令和5年通信利用動向調査の結果」より筆者が一部加工
また、以下のようなニュースもあります。マンションという一生に一度の高額な買い物においても、SNSが最も利用されているという実態です。
参考:Web担当者フォーラム「新築マンションの情報収集、最も参考になったのは「YouTube」。SNSが購入の決め手に?【スタイルポート調べ】」(2023年5月11日)
10年も前ですと、商品やサービスの購入を検討する際に利用するものは「検索結果」でしたが、現在は、SNSが利用されるようになりました。そのため個人であっても、自らSNSを駆使したり、あるいはインフルエンサーに商品の広告をお願いすることで、D2Cマーケティングを実施しやすくなりました。
D2Cを起業するのはカンタンだけど、D2Cで成功するのは難しい
D2Cの起業はカンタンな時代となりました。しかし、D2Cで成功するためには、多くの見込み客に自社商品を宣伝する必要があります。また、Web広告やSEOにおいては、どんなジャンルもすでにレッドオーシャンと化しており、広告やSEO対策でマーケティングを実施するとなると、予算と労力がかかります。
InstagramなどのSNSは、もはや新しくないとはいえ、一定のマーケティング手法が確立されているマーケティング分野ではありませんので、利用者ではなく事業者から見ると、まだまだこれからのSNSと言えます。
そのため、SNSで試行錯誤しマーケティングを実施して、競合に先んじてノウハウを構築していけば、小規模D2C企業でも大手に匹敵する売上を得ることも可能となるはずです。
まとめ
もし、突出した商品やサービスをD2Cで販売することができれば、そのような商品・サービスは勝手にSNSで拡散されるようになるでしょう。つまり、D2Cで成功するには、まずは商品力次第となります。
D2Cの市場規模は2025年には3兆円に達する見込みです。現在はD2Cで成功するための環境が整っております。そして、D2Cの具体的なノウハウはYouTubeなどでも数多く提供されておりますので、まずは情報収集から始めてみてはいかがでしょうか?