【EC担当者必見】ライブコマースが注目されている理由

EC担当者であれば、「ライブコマース」という単語を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

ライブコマースが注目されている理由とは、ECサイトとライブ配信を組み合わせることで、ユーザーに実店舗と似た購入体験をしてもらうことができるからです。

ECサイトの弱点は、接客ができないという点であるため、この弱点を補えるライブコマースは、EC担当者にとって気になるところでしょう。

また、ライブコマースは中国ではすでに盛んに導入されています。中国でのライブコマースの2021年の流通額は2兆3615.1億元(約48.7兆円)、2022年も50%近い成長が見込まれる非常に大きな市場となっており、日本でも導入している企業が増えつつあります。

本日はインターファクトリーでマーケティングを担当する筆者が、ライブコマースの成功事例を紹介するとともに、ライブコマースを実施する上で知っておきたい4つのポイントを詳しく解説いたします。

ライブコマースを取り入れた3つのEC成功事例

日本でも、すでにライブコマースを取り入れて成功している企業があります。

まずは、そちらのEC成功事例から見ていきましょう。今回は、「アパレル」「食品」「化粧品・コスメ」の業界から、3つの事例を紹介いたします。

事例①:平均4,500名以上からの視聴(ベイクルーズ)

「JOURNAL STANDARD」などのアパレルブランドで有名なベイクルーズは、2020年5月からライブコマースを導入しました。

2020年4月に新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が発令されたことで、店舗が閉業になりスタッフも出勤ができない状況に陥ったことから、なんとか商品の良さを伝えられる機会を作ろうということがきっかけで始めたようです。

ベイクルーズのライブコマース視聴数は多いときで、6,000~9,000名、平均だと4,500~5,000名います。またライブコマース経由の売れ行きとしても、配信から1週間の期間で平均90万円ほど、商品数としては平均60点ほど売れているようです(2021年4月時点)。


出典:BAYCREW’S STORE LIVE STYLING

ベイクルーズのライブコマースでは、出演しているスタッフの身長を記載しており、視聴者が服のサイズ感を把握できるように配慮されているのが特長です。

またライブ配信画面から、商品購入ページにすぐ遷移できる仕様となっており、視聴者が商品を購入しやすい工夫がされています。

参考記事:ベイクルーズのライブコマース運営とは 最大9000人の視聴者を集める集客力ECのミカタ

事例②:過去最高のEC売上高を記録(三越伊勢丹)

ECサイト上で食品からアパレル、コスメなど幅広く扱っている三越伊勢丹は、2019年11月にお歳暮の販売で初めてライブコマースを実施し、過去最高のEC売上高を記録したと発表しています。

この回では、ECサイト「三越伊勢丹オンラインストア」で商品を見ながら、スタイリスト(販売員)とリアルタイムで質問や会話をしながら購買できる仕組みを構築し、視聴者から多くのコメントや質問が入るライブ配信となったようです。


出典:三越伊勢丹がお歳暮商材のライブコマースで過去最高のEC売上ネットショップ担当者フォーラム

また2020年5月と6月には、お中元のライブコマースを3回に分けて実施し、ライブコマース経由の売上は過去最高を更新しました。2回までの配信で、すでに視聴者数は3万人を超え、お中元オンラインストアの売り上げはすでに前年の2倍になりました。

今後も催事の時期に合わせてライブコマースの開催を予定していくとしています。

参考記事:
三越伊勢丹がお歳暮商材のライブコマースで過去最高のEC売上ネットショップ担当者フォーラム
三越伊勢丹お中元ライブコマース好調!視聴者数は3万人を越え、ライブコ マース経由の売上は過去最高を更新しました。本日午後7時からはお酒のライブコマースを開催。PR TIMES

事例③:中国ライブコマース市場で好調(資生堂)

国内大手である化粧品メーカーである資生堂も、消費者の購買意識変化を捉え、ライブコマースを国内で本格的にスタートしました。

資生堂が展開しているブランド「SHISEIDO」において、国内第一弾として、三越伊勢丹ホールディングスの化粧品オンラインストア「meeco」で、2020年7月にライブコマースを実施しました。


出典:資生堂が「ライブコマース」 オンライン接客を開始 ライブ配信で化粧品紹介ネットショップ担当者フォーラム

こちらの回は、ビューティーコンサルタントが化粧品や美容法をリアルタイムで紹介し、それを見た消費者がチャットを使用してビューティーコンサルタントとコミュニケーションをとりながら商品を「meeco」で購入できるという仕組みになっていました。
「SHISEIDO」は、すでに中国市場でライブコマースを実施しており、ECの売り上げは好調で、国内でも定期的にライブコマースを実施しています。

参考記事:資生堂が「ライブコマース」 オンライン接客を開始 ライブ配信で化粧品紹介ネットショップ担当者フォーラム

ここまでは、すでに国内でライブコマースを取り入れて、成功した事例を見てきました。
では次に、ライブコマースを実施する上で知っておきたいポイントについて紹介いたします。

ライブコマースを実施する上で知っておきたい4つのポイント

実際にライブコマースを実施する上で知っておきたいポイントを4つ紹介いたします。

ポイント① 商品について気になったことをその場で質問できる!
ポイント② 日本はまだ発展途上中!ライブコマースの利用実態とは
ポイント③ ライブコマースを実施する方法は2つに分かれる
ポイント④ ライブコマースを始めるためには?

ポイント① 商品について気になったことをその場で質問できる!

ここまで事例を見てきましたが、ライブコマースはどのような点にメリットがあるのでしょうか?

ライブコマースのメリットとは、配信者と視聴者の双方向のコミュニケーションがリアルタイムで取れることです。従来、ECサイトやSNSでは、お店側が消費者に一方通行で情報を発信することしかできず、消費者が商品に疑問や不安に思ったことを、購入前に解決することは難しいことでした。

しかし、ライブコマースでは、視聴者側からも発信できるため、その場で商品に対する疑問や不安などが解決できることが大きなメリットです。配信者との会話や自分以外の視聴者の質問を通し、商品について細かく理解できるので、まるで実店舗で店員さんに接客してもらうような体験ができます。

実際に今回事例に挙げた企業のライブコマースを筆者も拝見してみたのですが、配信者の紹介に対して、リアルタイムでコメントや質問ができるので、実店舗で買い物をするのと変わらない体験ができました。

また、思いのほかコメントや質問が多くされており、非常に臨場感があったことから、消費者を楽しませるコンテンツの1つとしても成り立っているのではないかと思いました。

下記は、事例でも紹介したベイクルーズのライブコマース「BAYCREW’S STORE LIVE STYLING」の配信ですが、このように視聴者による質問などのコメントで賑わっている様子が伺えます。

◆ライブコマースのチャットコミュニケーション

ライブコマースのチャットコミュニケーション

ポイント② 日本はまだ発展途上中!ライブコマースの利用実態とは

記事の冒頭で述べた通り、中国でのライブコマースの市場規模として、2021年の流通額は約48.7兆円にのぼり、2022年もさらに50%近い成長をすると見込まれており、非常に大きな市場になっています。

2017-2022 中国ライブコマースの流通総額と成長率推移

中国におけるライブコマースの流通総額と成長率グラフ引用:ライブコマースが日本で流行らない裏事情、なぜ中国だけで「50兆円市場」に化けたのかビジネス+IT

日本ライブコマースの市場規模については、残念ながらまだ公表されている統計データは存在しません。

ただ、2023年2月にインターネットアンケートサービス「NTTコム リサーチ」が発表した調査結果によると、国内におけるライブコマースについての認知は31.9%、また視聴経験があるのは3.9%、そして視聴経験者の商品購入経験率は54.8%と半数を超えており、今後大きく成長する期待値は高いと見込まれています。

引用:注目のライブコマースとは? 世界のトレンドや注目の背景、市場規模を解説ECのミカタ

筆者自身も、ライブコマースの需要は今後もますます高まっていくのではないかと考えています。なぜなら、EC利用率は年々上昇しており、2022年における日本国内のBtoC(物販系)のEC化率は、9.13%と過去最高の数値となっており、今後ますますEC需要が高まることが予想されているためです。

◆物販系分野のBtoC-EC市場規模及びEC化率の推移

物販系分野のBtoC-EC市場規模及びEC化率の経年推移
出典:令和4年度 電子商取引に関する市場調査報告書経済産業省

今後も、EC市場の成長に合わせてライブコマース市場も成長していくと考えられます。

ポイント③ ライブコマースを実施する方法は2つに分かれる

ライブコマースといえば、多くの方がInstagramやYouTubeでのライブ配信を連想するのではないでしょうか?

しかし、InstagramやYoutubeのようないわゆる「SNS型」といわれる方法のほかに、「SaaS型」というECサイト上に埋め込んでライブコマースを実施するという方法があります。ライブコマースを実施する方法は、いま紹介した、「SNS型」と「SaaS型」の2つに分けることができます。この2つにはどんな違いがあるのでしょうか?

まずは下の表をご覧ください。

「SNS型」と「SaaS型」のメリット・デメリット

以上が、「SNS型」と「SaaS型」の簡単な違いです。

実はさらに細かく分けると、そのほかにも「ECモール型」が存在します。「ECモール型」は、出店しているECモール内でライブコマースが実施できる仕様となっていますが、楽天市場やYahoo!ショッピングのような大手ECモールがすでにライブコマース事業から撤退しており、有名なECモールでは実施できません。

わざわざ楽天市場やYahoo!ショッピング以外のECモールに出店してライブコマースを実施するという事業者は少ないと思いますので、現在は、「SNS型」と「SaaS型」の2つがライブコマースを実施する代表的な方法です。

誰でも手軽にライブコマースができる!「SNS型」

「SNS型」は、InstagramやYouTubeなどのライブ配信機能を使って、スマートフォンさえあれば、誰でも手軽にライブコマースを実施できることが最大の特長です。

またSNSであれば、集客→ライブ配信を同アプリ上で行えるため、フォロワー数の多い企業であれば、集客も比較的行いやすくなるでしょう。

しかし、視聴者がライブ配信中に商品を欲しいと思った際に、InstagramやYouTubeのアプリから一度離れ、ECサイトにアクセスする必要がある、売上やユーザーの行動データが見れないというデメリットがあります。

「SNS型」は、とりあえずライブコマースを実施してみたい、コストを抑えたいという
個人や小規模事業者にはおすすめの方法です。

【ツール例】
・Instagram
・YouTube

商品購入までをスムーズに行える!「SaaS型」

「SaaS型」は、自社ECサイトやアプリ内でライブコマース機能のタグを埋め込むことで、ライブ配信を実施することができるようになる方法で、視聴者と自社ECサイトやアプリ上で直接接点が持てることが最大の特長です。

また、売上や顧客の行動データを蓄積できるので、PDCAサイクルを回しながらライブコマースを実施することができるのもメリットの一つです。

しかし、視聴者に自社ECサイトやアプリにアクセスをしてもらう必要があるため集客に力を入れる必要があります。

すでにブランドが確立しており、今後ライブコマースに力を入れていきたい
中・大規模事業者
にはおすすめの方法です。

【ツール例】
TAGsAPI
Live kit

ポイント④ ライブコマースを始めるためには?

ここまで、ライブコマースについて解説してきました。しかし実際に何から始めれば良いのか分からないという方も多いのではないでしょうか?

ライブコマースの始め方については、下記の記事が非常に分かりやすくまとめられているので、当記事とあわせてご一読するのをおすすめします。

参考記事:【完全保存版】失敗しないライブコマースの始め方TAGsAPI

ライブコマースを始めるためのステップは、大きく分けて7つあります。

ステップ① ライブコマースを実施する「目的」を決める
ステップ② 配信する環境を整備する
ステップ③ ライブ配信の「コンテンツ」を決める
ステップ④ 集客
ステップ⑤ リハーサル配信
ステップ⑥ 本番配信
ステップ⑦ 配信後のアフターフォロー

ステップ① ライブコマースを実施する「目的」を決める

まずは、「何のために配信をするのか」を明確にしましょう。

ライブコマースを実施する「目的」は何で、どうなったら「成功」といえるのかを決める必要があります。ライブコマースは長期的視点で見ていく必要がありますので、「自社ブランドの認知」や「ECの売り上げUP」などの「目的」を明確に決めて、その際、「CV数」や「サイト流入数」などのどういった数値に注目するのかを決めましょう。

ステップ② 配信する環境を整備する

先ほどライブコマースを実施するためのツールはすでに多く提供されています、と紹介いたしました。配信を行うためには、どの配信方法・ツールを使用するのかをまず決めましょう。

自社の予算や集客力、ライブコマースを実施する最終的な目的、を考慮して選択しましょう。

ステップ③ ライブ配信の「コンテンツ」を決める

ここでは、「商品」・「出演者」を決めます。

「商品」:紹介する商品を決定し、予定配信時間内でどのくらい数量を紹介できるか見積もっておきましょう。

参考として、アパレルのような1アイテムあたりの説明が短い商品は1時間で10〜15点ほど、コスメやギフト商品のような豊富な説明が必要とされる商品は1時間で6〜12点ほどで配信されることが多いようです。
また、紹介する商品は、だいたいの配信予定日をもとに当日在庫切れしないかという点も考慮する必要があります。

商品が決まれば、おのずとターゲットも決まるので、配信する日時も決めやすくなります(社会人をターゲットにするのであれば平日の夜に配信する、主婦をターゲットにするのであれば平日の昼間に配信する、というイメージ)。

「出演者」:出演者は、「インフルエンサー」か「自社スタッフ」にするのかを決めましょう。

「インフルエンサー」であれば、集客が見込める・新たな顧客層の獲得につながりやすいというメリットがありますが、誰にするのかの選定が難しい・コストがかかるというデメリットがあります。
反対に、「自社スタッフ」であれば、商品の魅力を詳しく伝えられる・社内での調整がしやすいというメリットがありますが、集客が難しい・企画を練る必要があるというデメリットがあります。

自社の強みや弱みを考慮し、どちらにするのかを決めてください。

ステップ④ 集客

配信するコンテンツが決まれば、集客も行いましょう。

一般的な方法としては、InstagramやLINE、TwitterのようなSNSでの集客やメールマガジンでの集客です。自社ECサイトでライブコマースを実施する場合は、トップページやニュース欄の目立つ箇所で集客を行うのも効果的です。
インフルエンサーに出演してもらう場合は、インフルエンサーにもSNS上などで集客してもらうのも良いでしょう。

また集客は、配信前日などではなく、あらかじめ余裕を持って数回行いましょう。
その際は、「何日の」「何時から」「どこで」「どういう内容を」「誰が」配信するかを明確に伝えてください。
さらに、配信内容だけでなく、クーポンなどの情報も一緒に掲載することで、ユーザーの興味を引くことができます。集客の内容に、当日の接続方法について記載しておくと、当日のトラブルを回避できる部分もありますので、効果的でしょう。

ステップ⑤ リハーサル配信

事前にリハーサルを行います。できるだけ本番と同じ状況で、通しでのリハーサルを行いましょう。機材が準備できていない場合は持ち合わせているもので対応するなど、できる範囲で行いましょう。

リハーサルを行うことで、準備段階では気付かなかった修正点などが分かり、本番時にスムーズな配信ができるでしょう。

ステップ⑥ 本番配信

いよいよ配信です。

当日にトラブルが起こる可能性もあるので、スタッフを多めに配置するなど、何かあった時に対応できる体制を整えておきましょう。

ステップ⑦ 配信後のアフターフォロー

配信終了後は、効果測定を実施しましょう。

「どの商品がどれくらい売れたか?」「配信内容はどうだったか?」「ユーザーからの反応はどうだったか?」というのを振り返ってください。
また、商品を購入してくれたユーザーが、リピーターになってくれるようなメルマガ施策やクーポン施策などのアフターフォローも忘れないようにしましょう。

繰り返しになりますが、ライブコマースは長期的な視点で運用する必要がありますので、こういった配信後のアフターフォローが、次回の配信の成功につながります。

まとめ

EC市場の拡大に合わせ、ライブコマースの注目度も上がってきております。個人から大規模事業者まで活用できるライブコマースは、今後ますます市場が拡大していくと考えます。

しかし、ただはやっているからといった、明確な目的もなく導入したのでは、ライブコマースを実施してもうまくいかないでしょう。これは、どんなマーケティング施策にも言えることですが、施策を行う「目的は何か?」を明確にした上で、実施しましょう。ライブコマースは長期的な施策となりますので、長期的な目標をもとに、短期的な目標も立て、それを達成していくのも1つの手でしょう。

ライブコマースを実施するためのツールはたくさん用意されているので、まずは自社に最適なツールを選ぶところから始めてみましょう。

また弊社では、EC支援サービス「ebisu growth」にて、ECサイトを知り尽くしたコンサルタントが、ECサイト運営を支援するサービスも提供していますので、もしお悩み事がありましたら、お気軽にご相談ください。

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ABOUT US
首藤 沙央里
2019年9月、株式会社インターファクトリーに入社。 マーケティングチームにてオウンドメディア運用を担当し、年間40本以上の記事を掲載。 社内広報、採用広報に加え、EC業界やクラウドコマースプラットフォーム「ebisumart」についての情報発信も行う。