もし、新しく入社した会社や配属先で「ECサイト担当者」に任命された場合、どのようにしてECサイトを運営すれば良いか、未経験者には想像もつかないかもしれません。しかし、会社や業界ごとの違いがあるかもしれませんが、ECサイトの運営は以下の9つが主要な業務となります。
② 商品登録業務
③ 受発注業務
④ 配送業務
⑤ カスタマーサポート
⑥ マーケティング業務
⑦ SNS運用
⑧ 売上分析・販売戦略
⑨ 商品企画
事前にこの9つの業務を把握しておけば、新しい会社や部門のMTGにも追い付くことができるはずです。そして不安になる必要はありません。ECの仕事は、仕入れからマーケティングまで、さまざまなことを経験できるので、まさに商売の基本が詰まっていると言えるでしょう。
本日は、forUSERS株式会社で、マーケティングを担当している筆者が、ECサイトの9つの運営業務について解説します。
ECサイトの9つの運営業務
ECサイトには、以下の9つの運営業務が存在します。
◆ECサイトの9つの運営業務
① ECサイト管理業務
② 商品登録業務
③ 受発注業務
④ 配送業務
⑤ カスタマーサポート
⑥ マーケティング業務
⑦ SNS運用
⑧ 売上分析・販売戦略
⑨ 商品企画
それでは、1つずつ業務を解説します。
① ECサイト管理業務
例えば、ECサイトでキャンペーンを実施する場合は、トップページのメインビジュアルやバナーをキャンペーン用に差し替えるほか、特集ページの作成、対象商品の価格調整、クーポンの発行設定などを行います。また、「お知らせ」「ニュース」「プレスリリース」などのテキスト情報をタイムリーに更新するのもこの業務に含まれます。
さらに、定期的なメンテナンスやセキュリティ対策(脆弱性対応・SSL証明書の更新など)も重要な役割のひとつです。アクセス負荷が高まるセール時期などには、ページ表示速度やサーバーの安定性にも気を配る必要があります。
つまり、ECサイト全体の見た目(フロント)と仕組み(バックエンド)を管理画面を通じて制御する業務のことです。管理画面の仕様や操作方法は、ASPやクラウドECなど、導入しているECシステムによって異なりますが、一般的にはWebブラウザから専用のURLにアクセスし、ログインして操作します。
なお、商品画像や説明文の登録・修正といった「商品登録業務」も、広義にはこの管理業務の一部とされていますが、本記事では業務ボリュームが大きいため、別項目として詳しく解説しています。
② 商品登録業務
ECサイトに商品を登録する業務のことです。ECサイトに商品を登録するには、以下のような項目を登録する必要があります。そのため「ささげ業務」と言われる商品の「撮影・採寸・原稿」の作業をする必要があります。
◆商品登録に必要な情報
② 商品サイズ
③ 商品在庫数
④ 商品カテゴリ
⑤ 商品説明文
このような情報を登録して、以下のような商品詳細ページを作ることが目的です。
◆ユニクロの商品詳細ページ


引用(画像):ユニクロ公式オンラインストア
このページは、売上と密接に関係します。例えば、白のSサイズのTシャツのみより、カラーバリエーションが豊富であったり、サイズもSからXLまでそろっている方が、より多くのユーザーが商品の購入を検討するでしょう。
あるいは、家電であれば、自分が求めているスペックについて商品説明欄に記載があるかどうかは重要です。筆者は最近、仕事で使用するオンライン配信用マイクを探している際に、長時間の配信を予定していたため、商品説明欄やスペック表でバッテリーの持続時間を注意深く見て比較検討しました。
このように、商品説明文はユーザーがそのECサイトで購入するための後押しとなるので、ターゲットユーザーがどのような情報を求めているのかを考えながら作る必要があります。
③ 受発注業務
受発注業務とは、ECサイトで商品が購入された際の受注処理と、在庫補充のための発注業務の総称です。日々の業務の中でも、売上と直接結びつくため非常に重要なポジションにある業務です。
◆受注と発注
発注 <== ECサイトに登録する商品を注文すること
受注が発生すると、ECシステムから購入者への自動確認メールが送信されると同時に、社内のEC担当者にも受注通知が届きます。その後、担当者は以下のフローで業務を進めます。
①注文内容・在庫状況の確認
②出荷指示書の作成または倉庫連携
③配送伝票や納品書の発行
④配送業者への引き渡し
⑤発送完了通知メールの送信
一連のフローを正確かつ迅速に行うことで、ユーザー満足度の高い購入体験を提供することができます。
在庫が減少し、一定の閾値を下回った場合には、あらかじめ設定された条件に基づき、商品をメーカーや卸先に再発注します。特に自社在庫型のECサイトでは、在庫切れ=販売機会の喪失につながるため、適正在庫の維持が重要です。
一方で、在庫を持ちすぎると保管コストや廃棄リスクが増大するため、商品の回転率や季節要因も考慮しながら、バランスのとれた発注管理を行う必要があります。
◆受発注業務のポイント
・需要予測や売上分析との連携
・在庫連動システムによる自動化や効率化
これが受発注業務です。つまりこの業務の重要な点は在庫管理です。在庫が多すぎると倉庫の費用がかかりますが、在庫が少なすぎると、ECサイトがすぐに品切れとなり販売機会を逃すことになります。
受発注業務は単なる作業ではなく、販売・在庫・顧客満足すべてに関わる「ECサイトの心臓部」ともいえる存在です。
④ 配送業務
受注が入り、在庫確認が終わると配送業務になります。配送業務は以下の通りです。
◆配送業務の内容
・配送(配送業者に商品配送を依頼)
・ユーザーにメールを送信
梱包作業においては、同梱物としてパンフレットや冊子などと一緒に梱包します。
同梱物はユーザー満足度を高めたり、あるいはリピート購入を促すために非常に重要なものです。とくに単品ECと言われる化粧品や健康食品、サプリメントなどは、消耗品であるためリピート購入を促すことが非常に重要なのです。
◆単品ECでリピート購入につながりやすい同梱物の例
・実際のユーザーの声(レビュー)を集めた小冊子
・初回購入者向けの「次回割引クーポン」
・ブランドの想いや開発ストーリーを伝える挨拶状
これらは、単なる「おまけ」ではなく、ユーザーとの接点を深めるコミュニケーションツールとして機能します。
なお、配送業務は物理的な作業が多く、人的・時間的コストがかかる業務でもあります。出荷量が増えるにつれて、社内対応に限界が生じることもあるため、物流倉庫(3PL:サードパーティー・ロジスティクス)への委託や出荷自動化システムの導入なども検討対象になります。
⑤ カスタマーサポート
ユーザーからの以下のような問い合わせを受ける業務です。
◆ユーザーからの問い合わせ内容
・返品
・欠品
・破損
・商品についての質問
・その他クレーム
通常のEC担当者は、メールやチャットでユーザーとコミュニケーションをとります。上記のような問い合わせ内容ばかりだと、EC担当者は大変だと思うかもしれませんが、逆に問い合わせをチャンスととらえることもできます。
なぜなら、直接ユーザーと接することができないECサイトは、店舗と比べてユーザーとの接点が薄いことが弱点だからです。そのためこのような問い合わせを受けることを顧客接点を設けるチャンスと考えれば、問い合わせしたユーザーをリピート購入につなげることもできるのです。
⑥ マーケティング業務
ECサイトのマーケティング業務とは、以下の2つの観点で実施されます。
◆主なECサイト担当者のマーケーティング業務
・リピート購入促進
いずれの施策も、ECサイト運営には必要なマーケティング業務ですが、新規顧客獲得はアパレルECのような多くの商品を取り扱う「総合EC」で重視され、リピート購入促進についてはサプリメントや健康食品を扱う「単品EC」で重視されます。
なぜなら、総合ECは、リピート購入されづらいため新規購入が優先され、また単品ECは、繰り返し購入されることで採算がとれるようにビジネスモデルが設計されていることが多いからです。
新規顧客獲得のための主なマーケティング施策は以下の通りです。
◆新規顧客獲得のための施策
・Googleショッピング広告
・SEO対策
・SNS運用
ECサイトにおいては、効果の高いリスティング広告やGoogleショッピング広告をメインに実施します。SEO対策やSNS運用の場合は、ノウハウがあれば予算をかけずに自社で実施することができますが、コンテンツを作成したり、SNS投稿するための労力がかかります。
それでは、次にリピート購入のためのマーケティング施策を解説します。
◆リピート購入促進のための施策
・メルマガやLINEによるCRM施策
単品ECサイトで扱う商材は消耗材が多く、リピート購入が前提となっているケースが多いため、定期販売にどのようにつなげるかを苦心してマーケティング活動を行います。その際、解約率やF2転換率と呼ばれる指標が重要視され、解約率を下げ、F2転換率を上げるためのCRM施策に取り組みます。
定期販売およびCRM施策については、それぞれ下記記事で詳しく解説しておりますので、こちらも併せてご覧ください。
関連記事:
・ECでこれから定期販売を始める事業者が押さえるべき5つのポイント(EBISUMART Media)
・ECサイトで成果を出すためのCRMに必要な機能と手順の解説(EBISUMART Media)
⑦ SNS運用
SNS運用はマーケティング業務の中にも入りますが、ユーザーとコミュニケーションを取ったり、認知を広げたり、あるいは直接ユーザーと接しないECサイトにおいて「人間味」を演出したりするためにも非常に重要です。
ECサイト運営で利用されるSNSには、以下のようなものがあります。
◆ECサイト運営で利用されるSNSの種類
アパレルやアクセサリー、雑貨など、写真映えのするものはInstagramで自社ECサイトの世界観をアピールすることができます。Twitterはユーザーとコミュニケーションが取りやすいSNSです。SNS運用は、全ての種類を網羅するよりは、ターゲット層と相性の良いSNSを選んでみましょう。
SNS運用は、たとえ新規の売上に直結しなくても、既存客とつながるためのツールともなり、ECサイト運営者であれば実施すべきでしょう。
⑧ 売上分析・販売戦略
ECサイトの売上を分析して、どのような商品が、どのようにして売れるのかを理解し、マーケティング活動につなげます。総合ECよりも、単品ECの方がこの売上分析は労力がかかります。なぜなら単品ECの場合、商品を知ってもらうために、初回は赤字になったとしても半額やお試し価格で商品提供を行い、リピート購入により黒字を目指すからです。
このような単品ECにおける売上分析では、以下のような観点が求められます。
・離脱率が高いのは何回目か(例:3回目で大きく減るなど)
・リピートの有無によって、販促施策の効果を検証する
・売上のピークや落ち込みを広告出稿やキャンペーンと照らし合わせて分析
このようなデータをもとに、定期販売の設計や広告費の最適配分、CRM施策(ステップメールや同梱チラシなど)を調整していきます。
こうした高度な分析を行うには、売上分析ツールやマーケティング支援システムとの連携が不可欠です。多くの定期販売向けECカートでは、あらかじめLTV(顧客生涯価値)や離脱率などの可視化機能が実装されていたり、外部BIツールと接続できる設計になっているのが一般的です。
⑨ 商品企画
自社ブランドを展開するECサイトにとって、商品企画は売上を左右する最重要業務のひとつです。単に売れる商品をつくるだけでなく、ブランドの世界観やターゲットユーザーのニーズに合った商品を企画することが求められます。
過去に、筆者がコンサルティングを行っていたあるサプリメント企業では、社内で商品コンセプトと成分設計を行い、製造は外部のOEMメーカーに委託しています。その後、自社ブランドとしてパッケージを施し、自社ECサイトで販売を行う形です。
このように、必ずしも自社工場で生産を行う必要はなく、資金と企画力があれば、外部パートナーを活用して商品を開発・販売することが可能です。特に近年では、小ロットから受託生産できるOEMメーカーも増えており、EC事業者にとって商品企画に専念しやすい環境が整いつつあります。
ただし、自社で生産をしない場合は、製造コストや中間マージンの発生により利幅が限定されるため、販売価格や利益率の設計には注意が必要です。また、在庫リスクを避けるために、事前の需要予測やテストマーケティングも重要です。
また、商品企画で成功したとしても、同様のコンセプトで競合が参入してくる可能性は常にあります。市場での模倣や価格競争に巻き込まれることもあるため、継続的に新商品を企画したり、ブランドとしての差別化を図る努力が不可欠です。
EC市場は年々競争が激しくなっているため、「作る」だけではなく「売り続ける」視点での商品企画が、EC事業者の成長にとって不可欠な戦略となります。
ECサイト運営に向いている方とは?
年商1億円未満のECサイトの運営では、1~3人体制で、本日紹介したような多くの業務を実施する必要があります。そういったことを前提に考えると、小規模なECサイトの運営に向いている方とは、以下のような素養を持つ方でしょう。
◆EC担当者の性格や素養
・主体的に動くことができる
・すぐに行動ができる
なぜなら、ECサイトは小さな文言の違いや写真1枚でも売上に大きな差が出ることもありますし、また、気が付いたらどんどん変更していかなければ、上手くいかないことも多いからです。
ですから、逆に考えすぎたり、上司の指示による仕事をしたいという方には、あまり向いていないかもしれません。
まとめ
本日は、ECサイトの9つの運営業務について解説しました。もし、これからEC業界へチャレンジしたり、ネット販売の部署に転属になるという方は、是非前向きにEC業界にチャレンジしてみてください。
また、社内の体制が整っていなかったり、ECの売上を向上に興味がある方は、株式会社インターファクトリーが提供する、EC支援サービス「EBISU GROWTH」までお問い合わせください。経験豊富なコンサルタントが、下記サービスを通じて貴社のECサイトを成功に導きます。
◆EC支援サービス「EBISU GROWTH」の提供サービス
✓戦略立案
✓ECサイト構築
✓集客
✓CRM
✓アクセス解析・運用改善提案
✓運用代行・制作代行
まずは下記サイトをご覧いただき、お気軽に資料請求をしてみてください。